御相伴衆~Escorts 第一章 第八十五話 特別指令1
その日、教練の後、桐藤様に呼び出された。
「永依可、この後、俺の部屋に来い」
「はい、わかりました。皆に伝えます」
「いや、お前だけだ」
例の如く、親衛隊の連中が、皆、呼ばれるのだろうと思っていたので、驚いた。
俺だけか・・・、何の命令だろうか?そうは思いながらも、密かに、期待しながら、少し小さな、黒いマントの後ろ姿についていく。
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『吊り気味の金色の瞳に、ブラウンブラックの髪。
気高い獣の風情だが、豹というには、まだ、少し幼く、
微笑んだ時に、黒い子猫のよう・・・
鋭い、その爪の感じすら、思わせる。
それは、残忍なぐらいのキツさを伴った、ご性格と相俟っていて
・・・むしろ、貴方は、何物にも変え難い、魅惑の存在で、
心が擽られてしまう』
⚔★
「なんだ、これは?」
部屋に通されて、見覚えのあるメモ書きを突きつけられた時には、心臓が凍る思いになった。
「詩人だな、・・・ノートの切れ端か」
「え、あ・・・これは・・・なんで・・・?」
ついぞ、走り書きをしていた。
・・・妄想が零れ落ちただけなのだが・・・
「座学の最中に、何をしていた?」
「いえ、これは・・・」
「顔が赤いぞ。永依可」
「も、申し訳ございません」
クスクスと笑って、桐藤様は、俺の軍服の胸に、その紙切れを押し付けるようにした。俺は、慌てて、それを受け取った。なんで、これが、桐藤様のお手許に・・・?
「大学では、翡翠の授業でもあるのか?」
「い、いえ、・・・申し訳ございません」
ふふん、と言った感じで、俺を見上げ乍ら、心では見下しているのだろう。
頭を下げて、床を見つめてみる。ついぞ、先の尖った黒い靴に目が行く。
・・・貴方は、俺より、まだ背が低い。ジュニアの2年だったか、14歳になられた所だった。
・・・駄目だ。
こんな時すら、俺の中はざわついて、背中に冷や汗が流れる。
・・・緊張と、不思議な快感が過る。
「・・・翡翠は、親衛隊では、お前だけか?」
「え?・・・それは・・・」
「まあ、常識か・・・ハイスクールでは、♂と♀の相手を確保するそうだな」
ああ、こういう言い方をするんだ。ご興味がお有りの頃か・・・
そうでしたよね。検査もお済の頃だよな・・・
妙な期待が走った。
「まあ、いい。そんなお前に任務を与える」
「はっ・・・?」
余裕で、意地の悪い微笑で、俺を見上げてきた。歩み寄り、至近距離に・・・。
「・・・はい」
「お前のターゲットは、こっちだ」
白いハンカチを渡された。それは、ティーツリーの香りがした。
~特別指令2に続く
御相伴衆~Escorts 第一章 第八十五話 特別指令1
お読み頂きまして、ありがとうございます。
今までのお話と違って、少し、短い構成になっています。
余談ですが、今回の扉絵、AIに作成をお願いしました。
これが、AIが作った、柚葉の個室のようです。面白いですね。
おまけのおまけですが、柚葉エピソードの一つです。
永依可が、普通に恋をする、翡翠(男色)の青年という感じも解ると思います。
続きをお楽しみになさってください。
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