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謡巫女に仕掛けられし呪詛 舞って紅 第二十一話
「宿、そなたには、大役が控えている。それまで、匿れておれ・・・」
あの時、そなたが、施した、その術、あの謡巫女に仕掛けられた呪詛、何か、解るか?
流れ巫女の所業は、その限りでない。
間違えを犯したら、その度、命は削れる。
七つの罪だ。これを犯せば、肺が潰れて終わる。
それが小刀で施した呪詛だ。
一つ目は、既に果たされた。過去に遡っても、それは数えられる。
犬畜生に劣らぬ、それだ。その父との同衾。
最後の罪は・・・まあ、そうだな、さしずめ・・・
「死の宣告をされているものは強い。最強の駒となる・・・ふふふ、宿、どうだ?・・・知らせてやるか?・・・その方が、面白いことになろうな・・・」
~つづく~
みとぎやの小説・連載中 舞って紅 第二十一話
「謡巫女に仕掛けられし呪詛」
以下、ランサム大学 畸神学部の研究資料から
東国の、時は中世、定子院帝の納める御世。大陸からの勢力である、亜素(薹=藤)から、国を護る為、組織された者たちこそ、先住民族である漂白の者たちであった。
古代三伽の時代より、亜素は、まずは、大陸一の大国である素国との敵対があり、その後、東国に逃れ、侵攻してきた民族である。太古より、東国の素である、日女族と言われる民族こそが、その亜素に追われ、各地の僻地に追いやられ、定住を許されず、漂白の民となった。彼らこそ、真実の東国の成り立ちである歴史「畸神伝説」を継承する者たちである。
これまでの時代の争いの中で、武力により、先住民は、その地を追われ、ある者は、山の奥、海の傍、東北の寒冷の地、そして、南諸島部へと追いやられた。これによって、中つ大州(なかつおおしま)と呼ばれる、東国の中心地の大半は、亜素の血と混血した者たちの支配下となりつつあった。
東国の畸神を祖に持つ筈の帝の血筋ですら、改ざんされ、一部では亜素の人間が帝を偽る歴史に書き換えられてきたことに、時の右大臣は気づき、これ以上の偽りの定着を恐れ、また、真実の歴史が殲滅されつつあることに危惧した。この時の定子院帝こそ、亜素の後ろ盾のない帝であった。この機にと、右大臣は、帝に、「真実の歴史書」の発掘と新たなる編纂をする事業を提案した。まさに、命懸けの任務を進めることになった。
「惟月島神書」「艶歌乃書」「蜂宮国母伽二十傑伝」は、かねてより、聖地と呼ばれる惟月島にて、五代に渡る畸神、また、蜂宮における二十傑によって、編纂されたものであり、実は、この内容は、文字ができる前から、これを知る巫女の口伝によって、継承されてきたものである。時系列的な問題が含まれている(「未来予言の書」である)ということもあり、その辺りも、一般的には『偽書』という説を唱える学者もいる。
真実の歴史の口伝は、当時、まだ、その漂白の民の中で生きづいているものであった。中つ大州の中央山間部、獣しか住まないといわれる山奥に潜む山の民(山家)、その南の木の国の海の果て、僅か水際の海の民(漂白)、雪深く寒冷地である東北の民(蝦夷)、小さな島々の点在する南諸島の民(家船)の4か所がその代表である。
その真実の歴史の口伝継承総元であったのが、海の民の巫女アサギであった。全ての歴史を諳んじていたが、この危機に及び、各地で、この歴史を四つに分け、その四つの地域の謡巫女に、これを継承した。現在、畸神の歴史順に、このように、担当が分かれている。この後の資料の、( )の苗字は、後に、この一族の名乗る家の名前となる。尚、同根と言われている東国とスメラギ皇国は、その成り立ちは、東国からの分岐が正しい。(スメラギ皇国は、元と言っているが、これも亜素による書換え)
◎中世の謡巫女とその先祖と子孫(4つに分けられた担当別)
(★スメラギ皇国にある自然神異聞を入れると5つに分かれる)
太祖神時代
家船 ミホト(宇部) ← 先祖宇部媛真富豊(素国初代王后)
ミホト=美富豊は最初の日女と言われている名
二・三代神時代
漂白 アカ(卯月) ⇒ 子孫第四陽畸神日女美
四・五代神時代
山家 エニ(八尋) ← 先祖兎上幸多祁理 後の長箕沢 地下守護:辻家
蜂宮国母二十傑時代
蝦夷 トバリ(帳) ⇒ 後の北睦 役者:帳研ノ丞
蜂宮国母二十傑時代(自然神異聞)
住良 シュラ(隠) ← 東国日女族からスメラギ皇国へ分岐
★宇部・八尋・帳は、七鞘の太刀継承 東国神官の御三家
→ 当時の、畸神を司る神官系列の家は、全て否定の上、漂白に?!
実際に、アサギによって、口伝により、伝わったのは東国国内の四つの地域であるが、異聞として、スメラギに伝わる外伝的要素(未来予言第七在界)が存在している。これは、蜂宮二十傑のうちの数人が、ある時期のスメラギ皇宮に存在していた証拠と言われている。
「未来予言」に関しては、クライシス時の伽産との関わりも深く、時系列の捻れ、逆転現象、「伽の先祖帰り」と喩えられるものとも言われている。伽産の際、時系列的には、古いものが、後に生まれた為、聖地の記憶軸でいけば、当たり前のこととなるという。この辺りの絡繰りを知るのは「太祖陽神」「仙」「天賦天女(国母)」のみと言われている・・・
後書きに設定を兼ねて、別の話に出てくる、研究資料として制作したものを掲載しました。・・・といっても、更にわかりにくいかもしれませんね。
つまりは、侵略前の世界で、畸神という神様を崇めていた、統治者、神官の一族から、排斥されていったということです。その末、生き残った者で、逃げ回りながら、居留を移したり、隠れて暮らしてきたのが、この四か所の漂白の民ということなのです。かつては、隣国に嫁ぎ、妃となった姫を輩出した一族、神官として、大事な神器を守っていた一族、それらが、殺され、人の住めないと言われる険しい場所に追いやられました。いつの間にか、多くの東国の民たちは、気づかぬうちに、その真実が抹殺されようとしている・・・。その土地や全ての存在が、まことしやかに、他の民族のものにされてしまう・・・呪詛を使い、乗っ取り、背乗り、これらが巧みに行われてきたとしたら・・・?
この話、ずうっと前から、考えて書いてきました。
最近、これは、どうも、みとぎやの伽(お話)というだけのことではないかもしれない・・・ひょっとすると、今の世の中も、実際に、世界の中に、いや、現在、住んでいる国も、そんな目に遭っている・・・かもしれません。
書き出した時は、これを世に出してよいのかと思っていましたが、今となっては、そんな世の中のアンチテーゼとして、今後も描いていきたいと思っています。
解説の方が長くなりました。
意味が解らない所もあったかもしれませんが、実は、他のお話のキャラクターの出自が解る部分もあったりします。お時間のある方は、探してみると良いかもしれません。
長い、難解な解説も含め、お読み頂きまして、実にありがとうございます。
このお話は、こちらから、纏め読みできます。今後の展開をお楽しみになさってください。
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