御相伴衆~Escorts 第一章 第八十九話特別編「隣国の王女~白百合を摘みに①」
ちょっと、本編はお休みで、もう一遍、特別編です。
このお話は、奥殿の務めになった数馬が、慈朗と再会して、数日後に発生したお話です。今回は、ちょっと、コメディ寄りのドタバタ劇となります。
では、お楽しみください。
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「紫杏、お願いがあります。紫颯の様子を見てきてほしいのだけれども・・・」
「紫音伯母様、解りました。お任せください」
ここは、素国の、南の宮。
紫杏王女は、伯母の紫音妃に呼び出されていた。
「要はその・・・紫颯は、紫統の影響を受け過ぎていて・・・」
「伯母様、解ります。紫颯お兄様は、ずっと、王宮の、紫統伯父様の所のレッスンに、入り浸りでしたものね」
小柄で細身の紫杏姫は、昼前のお茶の時間、よく伯母と話をするらしい。
どうやら、今日は、ただの話ではなさそうだ。
「従妹のお前に頼むのも、何なのだけれども、変な虫がついていないか・・・まあ、その・・・」
「解りますわ。大丈夫。そのような者がおりましたら、二度と、紫颯様に近づけないようにすれば、よろしいのですよね?」
「中には、雲竜と、彩香がおりますから、協力を得ることもできますから・・・」
「スメラギ皇国・・・、あんな崖にへばりついた小国、まだ、組み入れることもできずにいるなんてね。素国の名折れだわ・・・、大丈夫ですわ。私、行ってまいります」
伯母は、明るく闊達に応える紫杏に、微笑みかけた。信頼を込めて。
「紫杏、帰って来たら、藍国へのお見合いを、セッティングする予定ですから・・・」
「アーギュ王太子様ね♡・・・私、自信があるのよ、この間のランサムの社交界で、お声掛け頂いたの。『なんて美しい方だ』って・・・うふふ♡・・・」
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「この度、素国の紫杏姫様が、お忍びで遊びに来られるとのこと。まあ、スメラギに皇子がいれば、話は、ご縁談ということにもなりますが・・・まあ、どういうことかしらね?」
珍しく、第二皇妃の部屋に、御相伴衆の4名が集められた。
「お妃様、お呼びでしょうか?」
折り目正しく、跪く桐藤。
「お待たせ致しました」
優雅な仕草で、穏やかに頭を下げる柚葉。
「失礼します。何の御用でしょうか」
慌てた様子で、駆け込んできた数馬。
「お妃様、今日も、ご機嫌麗しゅうございます♡」
周囲に見習い、ニコニコと微笑みながら、列に並ぶ慈朗。
それを見て、満足そうに、第二皇妃は微笑み、話を切り出した。
「さて、私の御相伴衆、全員、揃いましたね・・・この所、女美架の藍国への輿入れの件で忙しくしている所に、また、来客とのことでね。まあ、どういうことか、柚葉、お前の親戚のお姫様、紫杏王女が来られるとのことでね。これもまた、素国との交流ということですから、お招きして、迎えるようにね。・・・ああ、桐藤、また、取り纏めて、何か良いこと、考えて頂戴ね。解りましたね?」
一同「はい」
桐藤「承知致しました」
これにより、御相伴衆は、久方に、全員、集まることとなった。奥殿の数馬も呼び出され、紫杏姫の御招きについて、打ち合わせをすることとなった。約一ヶ月振りだったが、数馬も揃って、四人での話し合いとなった。
一同は、今は、一人で使っている、慈朗の部屋である、広間に集まった。
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桐藤「やっぱり、数馬だな。変わってなくて、良かった。久方ぶりだが、元気そうで、何よりだ」
柚葉「まあ、どこに行っても、お前なら、やっていけるとは、皆、思っていたから、心配はしてなかったけど」
慈朗「うん、でもさ、やっぱ、数馬が本殿に居てくれると、『御相伴衆』って感じがするよ」
柚葉「全く、数馬大好き慈朗だなあ。慈朗は、何かあると『数馬がいたら・・・』って、よく、言ってたんだ」
数馬は、照れ臭そうに、頭を掻いた。
数馬「ああ、皆、なんか、こういう、持ち上げられるような感じ、慣れないから、もう、いいよ。・・・んで、素国のお姫様が来るんだったら、お姫様同志、お会いして頂くということで、お任せしたら、どうかな?」
慈朗「そうだよね。それがいいよね。で、柚葉、その紫杏姫って、おいくつなの?」
柚葉「女美架様と、ご一緒だったかな。だから・・・16歳?あ、慈朗、お前と同い齢だな。こちらに来る前には、エレメンタル(小学校)で、ご一緒だった、という記憶しかないんだが・・・」
桐藤は、少し、怪訝そうにしている。
桐藤「しかし、何の為に、この時期に、姫が、お一人で来られるのだろうか?」
柚葉「・・・確かに、皇子のいないスメラギに、輿入れの話でもないしな・・・」
数馬「お妃様も、ピンと来てない感じだったよな」
慈朗「国際交流、ってことでしょ?同じ齢なら、女美架姫様とご一緒に、何か、愉しいことをしてさしあげれば、いいんじゃないかな?」
数馬「・・・まあ、こっちの姫様は、忙しいかもしれないけどね」
桐藤「あああ、数馬、・・・すまない、そうだな、うーんと・・・ああ、そういえば、柚葉、美加璃様も、少しの間、戻って来られるそうだが・・・」
柚葉「あああ、今度は、俺に、嫌なことを思い出させてしまったな、桐藤」
今度は、柚葉が眉を顰めた。
桐藤「そうなると、姫ラッシュになるな」
数馬「・・・なんか、桐藤らしくない、言い回しだな」
桐藤「というか、その紫杏姫というのは、どのようなご性格の方なのだろうか、場合によっては、一の姫様は、この際、ご療養でお出まし頂かなくとも・・・」
柚葉「・・・いいですね。桐藤。君の一の姫だけ、その手が使えますね」
桐藤「いや・・・三の姫様のご縁組みの件で、疲れておられるから・・・」
慈朗「うーん、いらっしゃる方、皆で愉しくなることがいいよ」
柚葉「慈朗、お前、本当に、前向きだな」
慈朗「なんで?お姫様が遊びに来るってことでしょう?それをお迎えするってことだから・・・」
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数馬「じゃあ、久方に、俺が、芸を見せるよ。これで一つ、決まっただろう?後は、お庭遊びしたり、なんなら、市井を見てもらったら、どうかな?」
桐藤「セキュリティの問題が出てきますが、まあ」
慈朗「それこそ、西のお城、とか、どうかな?」
数馬が固まった。・・・その時は、遠慮させて貰おうか・・・。
慈朗「ああ、数馬・・・ごめん」
柚葉「・・・まあ、そうだな。大袈裟にしないで、ゲストルームにお泊り頂いて、そう長逗留でもないだろうから、皇宮で、できることを考えますかね?」
慈朗「それこそ、三姉妹のお姫様と、ご一緒がいいよね。僕、女美架姫にご相談してみようか?」
数馬「積極的だな」
慈朗「あああ、数馬、変な意味じゃなくてさ」
数馬「解ってるよ。じゃあ、ここは、ぶっちゃけて、姫様たちも巻き込んで、企画して、お迎えするのは、どうかな?」
桐藤「うーむ」
柚葉「もしもですよ。皇子がいたら、話は違うんですよね。そうでないのに、姫が来る。その理由の方が、気になるんですよ」
桐藤「素国だからな・・・ああ、柚葉、ハッキリ言ってしまうが・・・」
柚葉「いいですよ。そう考えるのは、普通でしょう」
慈朗が、閃いたらしい、目を大きくして、話し出した。
慈朗「あのさ、僕も、ぶっちゃけていい?話しづらい人達を分けて、分担したら、どうかな?僕が思ったのは、柚葉と女美架姫様、数馬と美加璃姫様の組み合わせで、動けばいいんだよ」
柚葉「いや、お前と俺でもいいよな、それって。それで、女美架姫様と桐藤でも、いいんだ」
桐藤「何の話だ?二人組になる必要はないだろう。企画が分かれるなら、例えば、見世物は、体力勝負だから、二の姫様と数馬というのはいいと思う。後は、こっちでもいいのではないか?とにかく、姫様方にも、話に入って頂くことにしよう」
数馬は、柚葉の顔を覗き込んだ。
数馬「ところでさ、美加璃姫様って、いつ、戻ってくるの?」
柚葉「あああ、今日の午後だ、そうだ・・・空港に出迎えねば」
慈朗「僕も行こうか?」
柚葉「本当か🎵」
数馬「・・・ったく、」
今度は、桐藤が、数馬の表情を伺う。
桐藤「何か、少し、面倒なことになりそうだ。アーギュ王子を迎えるのとは違うからな。数馬、女美架姫様との同席がきつければ、お前は、しばらく、奥殿に戻っていても、構わないが、・・・それと、足はもう、大丈夫なのか?」
数馬「まあ、もう殆ど完治、って所まで来てるから、お妃様に呼び出されて、これだから、また、来客なんだなって。まあ、これは仕事、ってことだろうから、やるよ。大丈夫」
桐藤「すまないな。では、数馬、引き続き、頼む。じゃあ、姫様たちのお知恵を借りながら、二の姫様がお帰りになったら、お茶会がてら、お話を進めようか」
柚葉「致し方ありませんね。皆様、申し訳ございません。我が国からの来客ですからね。あ・・・」
慈朗「どうしたの?」
柚葉は、戦慄の表情になった。
柚葉「そうだ、思い出しました。先ほど、桐藤に聞かれましたよね、そうでした。・・・紫杏姫は、性格的に、二の姫に似てます」
桐藤「・・・それは・・・」
数馬「なんか、嵐の予感だな・・・」
慈朗「そうなの?へえ・・・」
~隣国の王女②につづく
御相伴衆~Escorts 第一章 第八十九話 隣国の王女~白百合を摘みに①
お読み頂きまして、ありがとうございます。
「隣国の王子」という章がありましたが、今回からは、もう一つのお話「隣国の王女」が始まりました。
柚葉の国、素国のお姫様で、柚葉とは、従妹に当たるお姫様が、皇国にやってきます。
素国の王族は、名前に「紫」が入っているのが、とても、ややこしいのですが、今回、来皇するのは、紫杏姫です。伯母の紫音は、柚葉の母親です。兄に当たる、紫統大佐の秘蔵っ子だった柚葉。母親の紫音は、彼の素行面が気になり、姪に当たる紫杏姫に、様子を見てきてほしい、ということになりました。
さて、いよいよ、次回から、お姫様ラッシュになります。
まずは、お客様をお迎えする話し合いの為に、スメラギの姫三姉妹が揃います。
お楽しみになさってくださいね。
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