御相伴衆~Escorts 第一章 第八十八話暗躍の行方1「奥殿の迷宮」
数馬は、奥殿で、維羅の仕事の補佐をすることになった。その内容は、多岐に渡るが、多くは、表舞台に立つものではなかった。そのうちに、本殿の出入りの数も増えてくる。久方に、本殿のスタッフにも、顔を見せた。
数馬が骨折してから、1か月、予定通り、大事を取っていたことになる。
本殿で、その数馬の姿を見て、誰よりも喜んだのは、慈朗だった。
慈朗にとっては、柚葉が支えてくれていたので、数馬がいなくても、そこで過ごすことに、特に困ることもなかった。
桐藤もあのままでいてくれた。今は、桐藤は、一の姫との将来のことと、三の姫の縁組に追い風を送ることに、尽力を注いでいた。皇帝に相応しい人物になろうと、日夜の努力をしているかのようだ。
数馬は、奥殿の極秘の情報に関する仕事を、維羅とともに、請け負っていた。その仕事の性質上、他言することは、許されていなかった。その為、本殿に長居はできなかった。
しかし、維羅の許可を取り、密かに、慈朗と話すことだけは、許されることになった。これは、慈朗が熱望したことと、数馬も、その後の本殿の様子を知りたかった為、つまりは、三の姫の件、なのでもあるが・・・。
数馬と慈朗は、本殿と奥殿を結ぶ所にある、診察室を使うこととした。
慈朗には、上手く動いてもらい、熱でも出たように、振る舞って貰った。
維羅の下で働いていることは、当然、慈朗には、知らせてはいけない。
それ以外は、いつも通りのことだった。
🏹🎨
「数馬、良かった。足、治ったんだね」
「うん、まあ・・・」
「・・・元気そうだね」
「まあね」
「今って、奥殿で、仕事してるんだってね」
「うん」
慈朗は、数馬の変わらない様子に、安心して、笑った。
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