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御相伴衆~Escorts 第一章 第三十四話 一緒にお勉強②「何のお勉強?」

「失礼します」
「数馬、いますか?」

 例のドリルの勉強を熟していたら、多分、下校してきたんだろう、三の姫様と柚葉が、俺たちの部屋にやってきた。

「一緒に、お勉強しようと思って」
「明日から、このようなパターンになりますから、まあ、予行演習ということで。今後、三の姫様も、ご一緒となります」
「あ、じゃあ、どうぞ、姫様は、ここのソファをお使いください」 

 ソファに座っていた慈朗シロウは、立ち上がって、三の姫に席を譲る形になった。

「ああ、明日になれば、もう一つ、お勉強用のデスクと椅子のセットが来ますからね、今日は、それでいいですね。えーと、じゃあまず、姫は、ここで、明日の予習です。算術はここです。物理はこの辺り。ここに付箋をつけましたから、熟読して、解らない所があったら、後で、ご説明しますので」

 柚葉、すっかり、先生だな。桐藤も教えるのが、上手いらしいんだけど、タイプが違うんだ、って、聞いたことがあるんだけどね。

「それで、数馬は今、どこら辺まで?どの教科も、満遍なく、やってる?」
「うん、今、エレメンタル(小学校)の4年生の所、半分ぐらい。ここまでは、終わったドリル」
「目に見えると、達成感があるでしょう?」
「うん、そうだね。4年生のも、あと、地理と生物、残してて」
「ひょっとして、苦手なの、先に熟したとか?」
「まあ。そうかな」
「多分、地理は、数馬が好きな分野だと思う。目で見た、周辺各国の話が、そろそろ出てくるから。暗記物、得意なんだよね?」
「うん、そうかもしれないな」
「この二つの科目は、暗記しないと、回答が得られないんで。頑張れ。繰り返ししかないな」
「解った」
「じゃあ、この数馬の終わったドリルを、慈朗が引き継いで」

 あれ?何?大移動?

「慈朗、椅子を持ってきて。僕は、机を持っていきますから」
「うん」
「それぞれが、違うものをやっているので、憶える時は、声を出してもいいから。なので、距離を離します。僕が、巡回しますから、それぞれ、夕食時まで、進められる所まで頑張ってください」
「どこに行けばいいの?僕は」
「こちらに」

 あれあれ、あんな遠くに。ベッドのとこじゃん。ベッドの隣に、机と椅子つけて。あー、そうか、柚葉用の椅子がないから、柚葉は、ベッドに、腰掛けるんだな。

🎨🔑

「今日から、ドリルをやるからね。慈朗」
「できるかな?」
「読んで、書ければ、できるものだよ。キンダーガーデン(幼稚園)の子が解る問題から、スタートだから」
「本当に?」
「ほら、文字も大きい。最初は、描き写しとかからだからね。なので、それに時間をかけても仕方ないので、少しずつ、掻い摘んでやって、できそうな所は飛ばして、どんどん、端折って進めるから。いいね?」
「かいつまんで?はしょって?」
「後で、辞書を引いておいて、それは。僕の言う言葉は、今の慈朗の齢では、大体、ニュアンスが、あー、意味が解ってなきゃ、恥ずかしいんだよ。だから、他の人が喋る言葉や、解らない単語にぶつかった時には、必ず、調べてね。ああ、それ。昔、僕が使っていた皇国語辞典、それでね。数馬には、桐藤のお古があるからね」
「うん・・・柚葉の辞典なんだね、ありがと」
「・・・うん、じゃあ、今から、ここやっておいて、どのくらいできるか、見たら、要らない所を潰せるから」
「わかった」

🏹🍓

「数馬、ねえ、数馬」
「何?」
「今、何、やってんの?」
「地理だよ。覚えて、その後の問題、解かなきゃならないから、話してらんないから」
「ねえ、これ、ちょっと、解んない・・・数馬」
「だから、俺の方が、勉強してないから。年齢通りに、学校行ってるのは、姫だけだからね。俺たちより、進んでるんだよ。俺は、姫のは、難しくて、教えられないから」

🔑🎨

「だいぶ、できるようになったんだね。偉い、慈朗。じゃあ、国語は、読み書きは飛ばして、というか、文法をチェックするから、語順とか、その名前とか、かな。その後、慣用句とか、いこうか。ちょっと、国語中心にするから、この3年生までの部分を、今日、一気に見るから。何、簡単だから、こんなの。じゃあ、これ、読んでみて、解るとこだけ答えて。解らない所は、飛ばしていいから、丸をつけた頁、どんどん進めて」
「はい」

 あ、柚葉、来た、来た。

「数馬、掛け算の暗唱できる?2桁まで」
「ああ、そうだった、1桁はいけたけど、2桁のが」
「予習はどうですか?」
「やっぱり、苦手、全然ダメ」
「じゃあ、それは後で、どこが解らないのか、聞きますから」
「うーん・・・」
「あ、姫にお願いがあるのですが、先に、数馬の掛け算の暗唱チェックしてあげてください」
「え、いいの?」
「そうですよ。というか、お勉強では、数馬の先輩なのですから、見てさし上げてください。念のために・・・、このドリルの巻末に出ていますね。回答が。お願いしますね。数馬は、だいぶ、憶えて、進んでいるので、ランダムに問題を出して、数馬が答える。いいですね。じゃあ、机を、ソファに寄せて」
「わーい、一緒にできるね」
「ドリルは?」
「一人でできることは、夜やっても構わないので。案外、その掛け算の暗唱は、理数系の基礎で、早く回答を導くのに、わかっていないと、ネックになるので」
「そうか、わかった。じゃあ、姫様先生、お願いします」
「わかりました」
「さてと、僕は、一番遅れている慈朗を見ます。スピード上げさせて、追いつかせますから、こちらは、姫様先生にお任せします」
「はい」

 柚葉は踵を返して、早歩きで、慈朗の所へ。桐藤がいたら、どっちかに付きっ切りになれるだろうに。大変だよな。頑張らないとな。こんなに、協力してくれてるんだからな。

🍓🏹

「じゃあ、これね、あのね、私も2桁は苦手なんだ。わかんなくなる時があるもん」
「そうなんだ」
「でも、この計算慣れてると、すぐ色んな問題、解きやすくなるんだって」
「これ、11×11からか・・・、山程あるな、この表」
「121だよね。」
「お、すげえ、姫様。じゃあ、これは・・・」

🔑🎨

「ごめんね、慈朗、できたかな?」
「これって、ここにかかるの?」
「そうそう・・・ああ、聞いてる質問が、もう5年生ぐらいのことだね」
「そうなの?」
「ぜんぶ、あっという間に、書いちゃったでしょ」
「うん」
「要は、書字ができなかっただけなんだよ、慈朗は。国語の4年生まではもういい。読解の回答が・・・そうだね。書き過ぎなぐらい。あと、聞かれている事だけ、答えるんだ。それ以外は要らない。主人公が可哀想だとか、そういうことは聞かれてないから」
「えっと・・・」
「要は、相手のいうことに、多過ぎても、少な過ぎてもダメ。ぴったし、聞かれたことを答える。ああ、この抜き書きも、苦手そうだね。でも、単語5個分って言ったら、意味から見て、ここしかないね。だから、これは書き過ぎ」
「ああ、そうか。よく読んでなかったかもしれない。お話が面白かったから」
「うん、問題文はそうだよね、でも、この問いの所の説明も、よく読まないと。勘違いして答えたら、解ってるのに、不正解になる。そうか。じゃあ、落ち着いたら、山程、本を読んだらいい。今の、感性豊かな慈朗に、知識が備わったら、鬼に金棒だ」
「おににかなぼう?」
「ああ、ことわざや名言など、そういった比喩による言い回しもね、国語の領域だから、後で出てくるから。これは、例文を見て、使い回しを憶えると、話し言葉も豊かになる」
「そうか、何となく、解る」
「面白い?」
「うん、本が読めるとか、皇宮の中に書いてある看板とかが読めるとか、すごく、嬉しい」
「世界が広がったな、慈朗。じゃ、ここ進めて」
「はい」

🏹🍓🔑

「そう、すごい。さすが、三の姫。それで、59×43は?」
「えっとぉ・・・たしか、2千、いくつだっけ?」
「ああ、反対じゃないですか。なんで、姫が答えて、数馬が見てるんですか?」
「ああ、質問してって、姫が言うから、あと2問やったら、交替って約束してたんだけど」
「我儘、言ったかな?また」
「さあ、どうでしょう?でも、数馬とお約束されたなら、それで、交替してくださいね。というか、姫様が解らないのは、論外ですよ。エレメンタルのうちに、この掛け算は諳んじて、すぐ出るようにしとかないといけないのですからね」
「柚葉、75×71は?」
「5325です」
「わあ、即答じゃん」
「すごい」
「当たり前です。同じ暗誦を、来週から、慈朗にも、やらせますから」
「慈朗、大変だわ。大丈夫かな?」
「慈朗は大丈夫です。やり方を変えて、一つの科目を6年分、一気に教えます。理解力がありますから、3年生の読解をやっていても、質問の内容が、5、6年生のレベルですから、恐らく、理屈がお腹に落ちれば、できる子になると思います」
「うわあ、慈朗に負けるかも」
「かも、じゃありませんよ。本当にそうなりますよ。このままだと。姫、躓いた所は、必ず、やってください。来週は、テストします。一定の時間で、どれだけ、答えられるかを、プリントでやりますから。姫もやりますよ。ハイスクールでできてないのは、とても恥ずかしいことです。じゃあ、交替で質問でも構いませんから、それをやってください」

「失礼します」

 はあ、よかった。
 ここで、ルナがお茶と御菓子を、ワゴンに乗せて、持ってきてくれた。

「わあ、今日は何?フルーツタルトだあ。お願いしてたやつだね。『ハニープラネット』の。ありがとう。月」
「侍従長様が、他に用足しがあって、お出かけになられて、買ってきて下さったのですよ。皆様に、おねだりされてらっしゃるのですか?三の姫様は」
「抜け目ないやつだな、姫様は」
「それは、数馬様・・・ちょっと、言葉遣いが・・・」
「ああ、すみません。やつはなかったです。訂正します。抜け目ない姫様だなあ」
「うふふ・・・じゃあ、切ってお持ちしますから、お勉強続けてください。頑張ってる慈朗様の方に、先にしようかしら?」
「ああ、月、見せて、ホールのうちに。可愛いケーキだわ。果物いっぱいで。あのね、月・・・」
「なんですか?」
「イチゴの多い所がいい」
「イチゴ、満遍まんべんなく、入ってるよ。そんなこと言ったら、月が大変だ」
「えー、ここにいっぱい入ってそうだから、ここがいい・・・」

🎨🔑

「・・・なんか、騒いでるね」
「気になる?・・・慈朗」
「ううん、大丈夫」
「いいよ、今は、やらせとけば」
「え?」
「今夜は来れる?」
「あ、それは、後で・・・」
「どうして?俺、お前の予定、解ってるから」
「皆、見てるから、そういう感じ、今は無理」
「約束してほしいんだけど」
「うーんと、ここの穴埋めの単語が、わからないんだけど・・・」
「なぜ、お返事がきけないのか、わからないんだけど・・・」
「うん、行くから。教えて」
「わかった。ここは、この手前の単語の中に、必ず、それに当たるものがあるから・・・」


🌙🏹🍓

「まあ、慈朗様は、わき目もふらず、頑張ってますよ」
「偉いなあ、慈朗」
「うん、そうだね」

🔑🎨

「今、こっち見てるぞ、皆、こんな約束してるなんて、知らないんだよなあ、ふふふ」
「柚葉先生、これでいいですか?」
「いいよ。合ってます。何?ちょっと、ひっかかるじゃん」
「ちゃんと、勉強したい」
「わかったよ、ごめん。真面目だな、慈朗は・・・いい子だね」

 あれ、なんかな・・・。慈朗が、少し、困ってるみたいだ。問題が難しいのかな?

~次のお話へつづく


御相伴衆~Escorts 第一章 第三十四話 一緒にお勉強②「何のお勉強?」

 お読み頂きまして、ありがとうございます。
 柚葉の意図が解ると・・・、二組分けて、お勉強する意味が解りますね💦
 
 本当に、最初は文盲の慈朗が、この後、頑張りを見せます。
 無邪気な4人(?)の、様子ですね。

 数馬は、目標が決まると一直線に頑張りますし、慈朗は知らなかっただけで、学ぶことが面白くなり始めています。

 三の姫は、勉強に自分のやりたいことが重なると頑張れるのですが・・・。

 次回もお勉強のお話が続きます。お楽しみになさってください。

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