御相伴衆~Escorts 第一章 第四十二話 桐藤礼讃④最終話「やっぱり彼はお姫様のもの」
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ついに、文化祭当日となった。一の姫様は、御殿医の維羅に診てもらうと、観劇ぐらいなら、出向いても大丈夫、ということだった。天気の悪い今日より、明日の方がいいだろう、ということになり、俺は、数馬達の公演は、明日、一の姫様とご一緒に見せて貰うことになった。
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数馬「あー、ただいま、何か、雨、酷いね。今日は」
慈朗「桐藤、来なくて、正解だったよ」
女美架姫「レインコート、持ってて良かった」
柚葉「姫様が転びそうになられたので、隣にいて、お支えできて、良かったです」
暁「濡れましたね。はい、バスタオルで拭いてから、中へ入ってくださいね」
慈朗「ねえ、数馬、キスシーンはないの?」
数馬「あ、お前、そればっかじゃん」
慈朗「フェイクでもやるって」
柚葉「何?そんなに渇望してるの?慈朗は」
暁「えーと、・・・」
柚葉「すみません、暁、姫様ですね?」
暁「まあ、お芝居のお話ということで、大丈夫かしらね・・・」
桐藤「玄関でする話じゃないですね。皆さん、お疲れ様でした」
数馬「ああ、桐藤、来なくて、正解だったね。この雨じゃあ、一の姫様、歩けないよ」
柚葉「明日は、上がりそうだね」
暁「明日は、桐藤様と、一の姫様とご一緒に、私も、月も拝見したいので、お付の名目で行かせて頂けることになりました」
数馬「そうですか」
慈朗「さっき、渦も見てくれる、って言ってたよ」
数馬「じゃあ、明日、二日目、頑張るね。今夜は、早く寝るぞ」
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二日目は、日曜日で、特に家族や、外部の人間が、参加できる日に設定されていた。雨も上がり、外出向きとなった。桐藤は一の姫を伴い、暁と月と一緒に、渦の車で、来校した。
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桐藤と一の姫は、講堂の貴賓席に通され、舞台から見て、右斜め上から、観ることになった。
「どんなお芝居なのでしょうか?」
「何やら、馴染みのある設定のお話のようですよ。数馬が主役で、頑張ってますから」
「女美架たちは、下で見てるのね?」
「一応、一階の中央、その下辺り、ああ、女美架姫様が、手を振ってらっしゃいます」
「あ、本当だ、振り返してあげましょう。ああ、慈朗も」
「ああ、あと、背景は、慈朗が描いたそうですよ」
「まあ、それも楽しみですね」
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暁と月、それと渦を、柚葉が案内して、着席した姿が見えた。間もなく、会場は暗転し、開場のベルが鳴った。
筋は、そんなに難しくない話だった。しかし、当初の設定からは、大きくズレたらしい。国への賛辞を示す件は、バッサリ、切られていた。
冒頭、街の娘が、買い物をして、その帰り、二人の暴漢に襲われる。早速の数馬の見せ場で、その暴漢を蹴散らした。これには、観客から、ものすごい拍手が巻き起こった。ふと見ると、娘の衣装のブラウスの腕が裂けている。あれ、あのマントは?・・・未だ、持っていたのか・・・、衣装として、使うということか。・・・成程。
「これで、身体を覆って、お帰り下さい。近くまで、お送りしましょう」
この時には、まだ、数馬の役は不確定で、ただ、ヒーローに違いないとは思わせる。
その先に、偶然が積み重なり、娘とその援けた男は、パーティの席で再会する。
「踊って頂けますか?」
数馬が、ランサム風の挨拶をした。娘は、ニッコリ、微笑んで、それに頷き、二人は、手に手を添えた。音楽と共に、ダンスが始まった。真ん中で、ワルツを踊る二人。その後、スローフォックストロットへ移る。たしか、焔さんは、ダンスが得意だと聞いていた。後半のダンスは、特に、女性の美しさを引き立てるダンスと聞いたことがある。数馬、よく練習したな。
「綺麗な方ね。ダンスのドレスもお似合いだわ。私も、元気だったら・・・」
一の姫が、目を輝かせて続ける。
「それにしても、数馬は、何でもできるのね。すごいわ」
いわゆる、逆シンデレラとでもいうのか、時間が来て、男の方が帰らなければならなくなる。「もう、会えないかも・・・」ここからは、その娘が、街の人と、パレードを見ている様子になる。客席にパレードが通っているような目線で、役者が、その様子を台詞と、表情で語る。
「皇子と姫が来たぞ」
「本当だ」
「ご婚約おめでとうございます」
一の姫は、俺の手を求めて、手を伸ばしてきた。繋いでさし上げると、嬉しそうに、こちらを見る。
その瞬間、照明が暗転し、娘のピンスポットになる。
「皇子様だったのね・・・」
その後、いくらかのシーンがあり、娘はこの地を旅立たねばならなくなった。家の稼業の関係で、他国に行かなければならなくなったのだ。
「皇子様にお借りした、マントを返さなければならない。これが手元にあったら、忘れることができなくなる・・・」
もう、会えないだろうから、門番にそれを渡そうと、城の前に来る。すると、丁度、出かける所の皇子に出くわす。
慈朗「いよいよだね。昨日は、ここで抱き合うだけだったんだけど・・・」
柚葉「やるのか?」
慈朗「らしいよ」
女美架「何、何?」
柚葉「ご覧になれば、わかるそうです」
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柚葉「ふーん・・・名前、そうか・・・」
慈朗「何?・・・あ、来るかな?そろそろ・・・」
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すっと、二人にスポットライトが当たる。ゆっくり見つめ合って、近づく二人。手を取りあうと、皇子は、娘を抱き寄せる。顔が近づき、と同時に、ピンスポットは絞られ、暗転になった。観客は拍手をする。その後はナレーションが思わせぶりなことを告げて、後は、観客の想像を煽るような演出となり、幕となった。
女美架「あ、・・・ダメなやつ」
慈朗「ああ、姫、大丈夫?ああ、あれね、フェイクって言って、振りだから」
女美架「うーん、・・・後で、数馬に聞くから、いい・・・」
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「あの、マント、桐藤の、でしたよね?少し前に作った、生地のものでしたね」
「ああ、そうです。お芝居に使いたいと仰られて、昔のものなので、衣装協力をさせて頂きました」
「・・・」
「一の姫様・・・」
「いえ、・・・わかりました」
「ああ、それならば、良かったです」
「それは、どういう意味なのですか?・・・何が、良かったのですか?」
「一の姫様?」
「・・・わかりますよ。・・・きっと、桐藤にも、皇宮の外の、私の知らない、人間関係があるぐらい・・・。でも、ごめんなさい。私はやはり、出てくることのない、お姫様に感情移入しました」
「柳羅様・・・」
「桐藤、あのヒロインの子に、マントをさし上げたのでしょ?何か、どうしようもない理由があって・・・」
「・・・事実はそうですが、・・・必要のないことは、俺は、自分の記憶に遺さないようにしてるので・・・」
「・・・狡いです。そんなの、言い訳です」
一の姫、・・・こういうことは、女性は敏感だと・・・苛むならば、やはり、皇宮から外に、お連れすべきではなかったのか・・・?
「なぜ、数馬、あんなことしたのかしら?昨日、無かったシーンがあるって、女美架が言ってましたから、きっと、それだわ」
「ああ、数馬は役でしているので・・・」
「おかしいじゃない?姫と結ばれる筈の皇子が、何故、市井の娘と?あのヒロイン役の子が最後、どこに視線を送りながら、涙を流していたか・・・」
「いや、なんでしょうか?一の姫、これは、作りものですよ。そういう解釈をされてるとは、・・・ようやく、貴女の仰る意味が解りました。落ち着いてください、姫・・・あ、カーテンコールですよ」
拍手の中で、数馬と焔は、手を取り合って、三方に挨拶をする。最後に、貴賓席に向かって、頭を下げた。瞬間、一の姫は、桐藤に取り縋った。
「・・・姫、何を、公衆の面前です・・・」
「桐藤は、私のものですから」
拍手の中、緞帳が下がった。
「・・・え?・・・何?」
今の何?緞帳が下がっちゃったから、見えなくなっちゃったけど、桐藤と一の姫、まじ・・・してたよね?
数馬は、そっと、焔の顔を見た。
「お疲れ様、・・・やっぱり、彼は、お姫様のものだったのよね」
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柚葉と慈朗は、三の姫を連れて、貴賓席の桐藤と一の姫を迎えにいった。
先立って貴賓席の様子を見た柚葉は、二人の、いつにない雰囲気に気づいた。
慈朗「やったね、数馬、キスシーン、・・・」
柚葉「しっ、慈朗・・・」
女美架「ねえ、あれ、したの?本当に?やだな、本当だったら、数馬・・・」
柚葉「・・・あ、・・・ちょっと、待って、今、行ったら、ダメだから」
柚葉は、二人を制した。
慈朗「え?」
柚葉「リアルだから、そっと、降りて、下で待とう」
女美架「リアルって何?」
慈朗「まじ?・・・芝居見て、盛り上がっちゃったんだ?うそー」
柚葉「いや、というより・・・まあ、いいから、早く、降りますよ」
女美架「なんでー?」
柚葉「いいから、」
慈朗「三の姫様、いきましょう。下で、暁と月と渦が、待ってるから」
女美架「?・・・はあい」
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文化祭も無事、終了した。俺は、久しぶりに、登校する。
柚葉が、そのことを伝えてきた。
「桐藤、焔さん、卒業待たずに、ランサムに留学するんだって。短期を修めて、それから、本科生になるコースを見つけたらしくて」
「・・・そうか。文化祭も終わったしな。演劇部としては、良いタイミングかもしれませんね」
教室のドアの所で、下級生だろうか。目が合うと、会釈をする者がいた。
「あのう、すみません。桐藤様、いらっしゃいますか?」
「あの子、劇部の子だね」
「はい、なんでしょうか?」
柚葉と二人で、廊下に出た。その部員は、紙袋を持っていた。それを開いて、その中身を見せた。
ああ、そうか・・・。
「あの、焔さんから、これ、桐藤様にお返ししてほしいって」
「・・・焔さん、今日、こちらには?」
「昨日、スメラギを発って、ランサムに行かれました。王立の、演劇学科の短期コースに入るそうで、よろしくお伝えください、とのことでした」
「はい、わかりました。わざわざ、ありがとうございました」
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「マント、帰ってきましたね。・・・お芝居、丸なぞりだな」
「・・・こんなもの、何枚もありますから、気にしなくても・・・」
「・・・返さないと・・・彼女もけじめをつけたかったんでしょう」
「まあ、やりたいことをやろうとするだけの力がある、というのは、良い事ですから」
「彼女なら、ランサムに一人でも、頑張れそうですね。誰かのように・・・」
「・・・気楽でいいな」
「・・・嘘?・・・ダメでしょう?桐藤が、そんなこと言ったら?」
「どういう意味だ?」
「それは、俺が二の姫様の不在で、楽だということでしょう?」
「お前が呑気でいいな、という意味だ」
「えー?」
「なんだ?」
「そうかなあ?・・・気が付かないだけというか、そんな振りして。ひょっとしたら、また、君のこと見てる娘が・・・」
「うるさい。・・・二度と言ったら、許さない。俺は、必要のないことは、自分の記憶に遺さないようにしてる。一の姫様以外のことは、なんら、関係ない」
なんだ。桐藤、君には、どんな女の子からの外圧も関係ないんだな。
今の台詞を、是非、柳羅様にお聞かせしたいですよ。
御安心ください。桐藤は、貴女のものみたいですよ。一の姫様・・・。
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「数馬、もう、演劇部辞めて」
「えー?あの時だけだから、もう、辞めてるけど、何?」
「本当にしたの?」
「えー、あー、してない。振りだけ。それを、フェイクっていうの」
三の姫様・・・もじもじしないでよ。そのおねだりは、ちょっと、まだ・・・。
桐藤と焔さんのことは、謎だけど、何か、あったんだろうな・・・柚葉に聞かないでほしい、と釘刺されたので、まあ、そういうことなら、そのままがいいんだろうな。・・・柚葉が、なんか、言ってたなあ・・・あれ、どういう意味かな?
「でもね、確かなのは、何があっても、桐藤はブレない、ってことだから」
~「桐藤礼賛」終~
みとぎやのメンバーシップ特典 第四十二話 桐藤礼賛④最終回
「やっぱり彼はお姫様のもの」御相伴衆Escorts 第一章
お読み頂きまして、ありがとうございます。
色々とやってみましたが、読みづらかったかなと思います。すみません💦
やっぱり、漫画の台詞割のようで・・・💦
ひとまず、こちらのお話は終わります。
次は、少し、時間が遡った頃の学園物を、もう1本、ご紹介したいと思います。お楽しみになさってくださいね。
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