見出し画像

御相伴衆~Escorts 第一章 第五十話 御殿医の診察~お許し 数馬と三の姫⑧

 三の姫様の診察中 俺は、お妃様と二人で、診察室の隣の部屋で待つことになった。

「数馬、ここで、私とお茶を飲みながら、お話をして、姫が終わるのを待ちましょう」
「はい・・・」
「どうしたの?不思議そうな顔をして」
「三の姫様は、どこか、お悪いのですか?」
「悪い所があっては困るので、あらかじめ、調べているのですよ」
「そうですか・・・」

 すると、俄かに、廊下の方から、慌ただしい音がした。

「お待ちください。入ります」

 恐らく、廊下にいたであろう、アカツキの声だ。

「・・・」
「あの・・なんか、あったのでしょうか?」

 お妃様は、余裕に、紅茶を召し上がっている。

「まあ、・・・初めては、仕方ないですね。私もそうでしたし、一の姫もね。でも、少しで済みますからね。維羅イラもいてくれることだし・・・」
「・・・」

 何のことやら、解らない。イラって、誰かな?御殿医の人の名前かな?

 目の前のティーカップの紅茶が冷めた頃、部屋のノックの音がして、暁が三の姫様を連れて、戻ってきた。

「お妃様、おめでとうございます。三の姫様、万事整い、お許しが出ました」

 半泣きの顔で、女美架姫様は戻ってきた。

「まあ、良かった。辛かったわね、びっくりしたでしょう?女美架。ああ、涙目になって。ごめんなさいね。でも、維羅が診てくれたのでしょう?せめて、女の医者にお願いしたのですよ。さあ、ソファに、数馬の隣にお掛けなさい」

 姫様は、下を向いて、泣きながら、言われた通りに、ソファに掛けた。

「姫様・・・?大丈夫ですか?」

 首を、ぶんぶんと、横に振って、半分怒ったような顔で、もじもじしている。どうしたんだ?

「薬がついてるんでしょう?消毒薬だからね。少し、沁みる感じがするのよ。でもね、これで、自分の身体の中に、こういう部分があるのだ、ということを、皆、自覚して、大人の女性になるのですからね」

 まさか、御殿医の診察って、あの御殿医の診察・・・?つい、三の姫様を覗き込んでしまった。

「数馬、やだ、見ないで」
「大丈夫ですから、姫様。数馬様は、訳が解らず、ご心配されてらっしゃるんですよ。痛みが収まったら、蜜餅みつもちをお持ちしますからね。数馬様、ちょっと」
「ああ、数馬に段取り、教えてやって頂戴ね」
かしこまりました」

 パーティションにするスクリーンの陰に、暁は、俺を連れて行った。
 そこには、いかにも、三の姫の好きそうな、黒蜜のかかった御菓子が、可愛い籠に乗せられて、設えられていた。これ、東国にも、そっくりなのがあるな。

「数馬様、この度は、三の姫様『奥許おくゆるし』のお許しを、御殿医様から頂きました。誠におめでとうございます。この後、『蜜餅の儀』に入らせて頂きます。いいですか、段取りですが・・・」

 えっ、やっぱし、そうだったんだ。暁は、嬉しそうにして、俺に言葉を挟む間も与えず、その儀式の説明を始めた。

「お解りになられましたか?数馬様」
「・・・はあ、・・・えーと」
「先立っては、桐藤様が、一の姫様のご診察をお待ちになられて、この儀に及びましたので。今度は、三の姫様に、数馬様が、この儀式を施されるのですよ。これは、仮の婚儀のようなもので、古式のものを簡略化したものです。現代風に、シンプルに、極近しい人の立ち合いで、執り行いますので。私も、こんなに近々に、お二人のお姫様の寿ことほぎに立ち合えるのが、嬉しく思います」

 暁、嬉しいと早口で、沢山、喋るんだよな。ルナもそうだけど。
 戻ると、お妃様が、三の姫様の隣にひざまづかれ、なだめておられるご様子で。

「ああ、数馬、戻りましたね。昔と違って、簡単な儀式なので、わずらわせませんから。はい、姫、もう、大丈夫ね。痛みも収まったでしょう?」
「うん・・・治った感じ」
「ねえ、数馬も学校を休んでもらったのはね、この為ですからね。じゃ、二人並んで頂戴」

 すると、暁が、先程の御菓子を持ってきた。

「姫様が憧れていた、蜜餅ですよ。甘くて、美味しいですからね。最初の一口を、数馬様に食べさせて貰ってください。はい、どうぞ」

 姫様の顔をちょっと、覗き込む。・・・うーん、もう少しだね・・・

「ああ、そうだ。姫様、あれだ、姫様のおねだりの、あれ」
「何?」

 耳打ちしてあげた。

「あーんして、だよ」

 少し困った顔をしたが、こくりと頷く。部屋に入って来てから、俺を初めて見た。
 お妃と暁が、ニコニコしながら、見ている。

 うん、はっきり言って、これは儀式という晒しものなんだな。
 ならば、すぐ、終わらせよう。

「姫様、お召し上がりください」

 琥珀色の蜜のかかった、小さなゼリーみたいな塊を一つ、小さなスプーンに乗せ、姫様の小さな口元に運ぶ。こういうのは、失敗すると、げんが悪いから、落とさないように。

「ほら、あーん・・・」
「あーん・・・」

 スプーンから、その餅を、唇の間に流し込む。姫様が、それを、こくんと飲み込むと、お妃様と暁が、クスクスと笑い出した。

「女美架、おめでとう。これで、数馬との『奥許し』の許可が出ましたから、数馬、後は、よろしくお願い致しますね。数馬は、これを持って、三の姫の『ご指南役しなんやく』に格上げとなりましたので、よくお取組みを。一先ず、今週は、姫と二人で学校の方はお休みして、ゆっくり、お過ごしください」
「えっ・・・あ・・・はい、」

 チラチラと、俺を見ている三の姫様。
 ちょっと、困ってる顔が、赤くなった。

「姫様、よかったですね」
「・・・うん、・・・」
「はい、もう、いいですよ。解放してあげますから、二人で、お過ごしなさい。では、私は、この後、陛下に、ご報告致しますのでね」

 お妃様は、部屋を出ていかれた。

                             ~つづく~


みとぎやのメンバーシップ特典 第五十話 「御殿医の診察~お許し」
              数馬と三の姫編⑧ 御相伴衆Escorts 第一章

 どうやら、三の姫様は、ご病気ではなかったようですね。
 ひとまず、安心しましたね。
 これで、数馬は正式な「ご指南役」という役職になったそうですが・・・。どういうことでしょうか?これは、桐藤キリトや柚葉とは、違う役割のようですが・・・。

 今回もお読み頂きまして、ありがとうございます。
 次回も、お楽しみになさってくださいね。

ここから先は

0字

高官接待アルバムプラン

¥666 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細

この記事が参加している募集

更に、創作の幅を広げていく為に、ご支援いただけましたら、嬉しいです😊✨ 頂いたお金は、スキルアップの勉強の為に使わせて頂きます。 よろしくお願い致します😊✨