第七回 慈朗編③ 天国と地獄②~高官接待
「絵は、習ったの?」
「・・はい、お爺ちゃんから、ちょっとだけ」
「そうなんだ」
「もう、死んじゃったんだけど・・・」
「そうかあ、じゃ、会えないね。・・・っていうか、ここにいたら、家族にも会えないんだよね。お前たちの身分だとね」
「そうなんですか?」
「うん、柚葉ですら、多分、直接の両親には、会えないんだよね。遠縁とは言え、あの素国の王族の一人なのにね。そう、もし、柚葉が、素国の王位継承者だったら、私、ひょっとしたら、王妃になれるかも・・・」
「え・・・?じゃあ、貴女は」
「うん、まあね、でも、ここに来たこと、内緒にしてね。じゃ、お絵かき頑張ってね」
「あ・・・はい・・・」
その方は、すごい勢いで、走って、皇宮の奥に戻っていった。
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あれから、僕が、ここに来てから、一年経った頃、数馬という、東国の芸人をしていた人が入ってきた。数馬は、僕より三歳上で、桐藤や、柚葉と同じ年で、色々な所を旅してきて、世の中を見聞してきたらしくて、何というか、人とのやり取りが上手い。そして、正しくて、弱い者を護る、強い男だ。羨ましい。何度か、僕も庇ってもらったことがある。
僕は、相変わらず、そういうことが苦手だ。でも、時々、月が優しく、声をかけてくれたり、御菓子をこっそり、部屋に持ってきてくれたりしてくれる。一度、聞いてみたいのだが、維羅はどうしたのか。元気なのかなと。なんとなく、それって、できないんだけど・・・。
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