御相伴衆~Escorts 第一章 第四十九話 数馬と三の姫⑦「お洋服選び」
皇宮御用達の衣料品店のカメリアは、最近、よく、皇宮に呼ばれているらしい。今日は、主人が腰を痛めたとのことで、夫人が商売に来ている。
「まあ、今回は、三の姫 女美架様、先日は、一の姫様でしたが、こんなに早く、妹姫様から、お声掛けがあるなんて。少し見ない間に、素敵なお姫様になられましたね。女美架様」
三の姫は、嬉しそうに、身を捩らせて、もじもじしている。その仕草は、まだまだ、子どもっぽい感じもあるが。
「本日は、どんな、お洋服をお求めですか?三の姫様」
「えっと、この間の、一のお姉様のお洋服みたいなの」
「白いワンピースでしたよね。こんな感じのですね。少しデザイン違いなんですが・・・」
「違うの、もっとこう、ここが空いてて、綺麗なのなんだけど」
「あ、そうですね。これは、同じ布を使って、襟元が詰まった感じのものですよ。お姉様のサイズより、少し小さいので、三の姫様にお似合いだと思いますよ。ほら。御揃いになりますよ」
「数馬、違うの、違うの。こないだ、話したみたいに、上手く言って。桐藤みたいに」
「えー、俺?・・・だって、姫様が着るんじゃんか・・・」
「こちらは?」
「あ、姫の御付の数馬なの。今日は、一緒に見てもらうの、カメリア」
「まあ、そうですか。じゃ、お見立てして頂きましょうか?」
「あ、はい・・・でも、俺、男だし、こういうの、よく解らなくて・・・」
カメリア夫人は、すっと近寄り、数馬に耳打ちする。
「・・・姫様がお似合いだと思われるものを、いくつか選んで、教えて差し上げれば、いいのですよ。その中から、ご本人が選ばれると思いますよ」「あ、はい・・・」
「数馬、ここ、空いてるやつがいい」
夫人は、後ろへ下がった。こちらの話は、聞こえてはいる様子だが・・・。
「うーん、これかな。うん、可愛いじゃん。これ」
「わあ、水色のワンピース」
「姫様らしいと思うけど、多分、ここ、襟元空いてるし。後は、サイズが合えばいいんじゃない?」
「試着していい?カメリア」
「はい、どうぞ、姫様。お手伝い致しましょう」
面倒臭いわけではないが、気恥ずかしいので、早く終わらせたいと思っていたが、今、選んだものは、本当に、三の姫に似合いそうだ、と、数馬は思っていた。今日は、暁が、他の仕事で付き添えないので、店員が、三の姫を手伝った。試着が済んで、三の姫が出てくる。
「これ、気に入ったの。ギンガムチェックの水色なのね。好きなのが、裾のフリルの所」
着てみなければわからないもので、想像以上に、三の姫には、お似合いの服で良かったと思った。
「数馬、ちゃんと見て。ほら」
近くまで、速足で来る。膝が見える丈の服なので、先日の擦り傷の跡が、まだ残っているのがわかった。
「とても、綺麗ですね。首から、お胸も美しいですね。今まで、こんな感じのお洋服をお召しにならなかったから、この機会に、より、大人っぽいものも、よろしいのではないですか?」
「あとね、ここの、後ろのフリルがいっぱいあるの、お気に入りなの」「元々、三の姫様は、飾りがお好きですよね。襟元に飾りがあるお洋服が多かったですが、これなら、可愛いですよ。ウエストは締まったんですよね。半年前の採寸から、3センチも細くなられました。お胸は反対に・・・ですね。スカートの裾のフリルは、スタイルを強調します。女性らしくなられたのでね、相応のお洋服ですよ。これは」
「数馬、すごーい。これね、今の姫の為のお洋服みたいよ」
「まあ、良いのを選んで頂いて、ようございましたね」
確かに、可愛いし、似合うけど。とにかく、早く、終わってくれないかな・・・。
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「ありがと。他にもね、ブラウス2枚も買っちゃった」
「よかったな」
「うん。でも、いつもよりも、少ないんだよ」
「そうなんだ」
「お姉様が、必要なものだけ買わないと、無駄遣いは、ダメだって」
「はあ、そうだよなあ。流石、一の姫様、桐藤とそんな話してそうだよな」
「うん、ただ、お洒落なだけではダメなんですって。桐藤は、一のお姉様が、いいことすると、『さすが、皇后様の器です』って、褒めるんだって」「桐藤らしいし、俺も、一の姫様なら、ご立派な皇后陛下になられると思う」
「姫も思う。お姉様は、皇后様に、ぴったりだと思う」
「うん」
「姫は・・・?うーん、皇后陛下はお一人だから・・・」
「何?」
カメリアでの買い物が済み、三の姫の私室に戻ってきたんだけど、何やら、先の話になってきたなぁ・・・。うーん・・・。
「二のお姉様は、きっと、柚葉のお嫁さんになるのかな?」
「そうなの?・・・」(えー、無理なんじゃないのかな・・・?)
「柚葉は、素国の王族の一人だから、二のお姉様は、素国に嫁がせる、って、お母様が仰ってた気がする・・・」
柚葉のことを考えると、二の姫様にとっても、それは、難しいように、思うんだけど・・・。
「女美架は、どうなるのかな?数馬は、どう思う?」
「さあ、まだ、先のお話なんじゃないですかね」
「そうだよね。今は、数馬と仲良くして、勉強したり、お菓子食べたり、時々、カラオケ行ったり、が、愉しいし」
そうだよな。まだまだ、先の話だよね、三の姫様にとっては。
あの一の姫様だって、20歳になられてから、桐藤との『奥許し』のお許しが出たというし。
二の姫様は、多分、お元気だったので、少し早かったとか聞いていて、18か19か、みたいなことを、慈朗が言ってた。
三の姫様は、まだ、16歳になられたばかりだからな。その辺りの話は、もう少し、先になるのかな、というイメージなんだけど・・・。
先程の買い物の時、最後の方に、お妃様が来られて、女美架様のことを可愛いし、綺麗だと褒めていた。俺にも、何度も、念押ししてたっけ。俺は、ニコニコして、頷くだけだったけど。やはり、お妃様もお母さんなんだな、と思った。
三の姫様の洋服選びが終わって、三の姫様の私室に戻ると、間もなく、暁が、部屋にやってきた。
「失礼します。姫様、明日、急なんですが、御殿医の診察を、お受け頂くことになりました」
「えー、何かな? 姫、具合悪くないよ。お姉様の所にいらっしゃるんじゃないの?」
「多分、健康診断ではないでしょうか。お妃様が、そのように、仰られてましたよ」
「解ったけど、学校は?」
「午前中からなので、お休みになりますね」
「ああ、そうか、じゃあ、明日は、皆だけだね」
「ああ、それで、一応、お姫様付きなので、数馬様もお休みされてほしいとのことです」
「えッ?・・・俺も健康診断、受けるんですか?」
「うふふ・・・いいえ、診察は、姫様だけですよ」
えー、御付って、そういうときも、一緒なのか・・・、まあ、そうかもしれないな・・・、その役があるから、俺なんかでも、学校にも行けてるようなもんだしなあ。
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翌朝、桐藤が登校する日だったので、多分、一の姫様の診察はないんだろうと思った。そして、柚葉と慈朗も学校へ行った。
その後、三の姫様と俺は、お妃様の私室に呼ばれた。そこから、姫様は、御殿医の診察を受ける為に、暁と、別の部屋に行った。
「くれぐれも、よろしくお願いしますよ、上手くね」
「・・・お話して、解って頂けるといいのですが・・・」
「好きなものをご褒美にすると、私が言っていた、と言いなさい」
「はい、上手く行くといいのですが・・・」
打ち合わせなんだろうか。お妃様と暁が、声を落として、話している。
「数馬、ここで、私とお茶を飲みながら、お話をして、姫が終わるのを待ちましょう」
「はい・・・」
あ、そういうことになるのか・・・。でも、本当に、急だよな、大丈夫なのかな? 女美架姫様・・・。
「どうしたの?不思議そうな顔をして」
「三の姫様は、どこか、お悪いのですか?」
~つづく~
みとぎやのメンバーシップ特典 第四十九話 「お洋服選び」
数馬と三の姫編⑦ 御相伴衆Escorts 第一章
少し前のお話で、桐藤と一の姫の段でもありました、同じ「お洋服選び」というタイトルですが、比較してみると面白いかもしれませんね。
末っ子の女美架姫は、長女の柳羅姫が、大好きのようですね。先を行く、姉姫を、これまでも、今回のように、倣ってきたのかもしれませんね。
さてさて、女美架姫、具合が悪いのでしょうか?
若くして、その命に何か・・・?
そしたら、数馬は?
それは、次回にわかります。
今回も、お読み頂きまして、ありがとうございます。
次回を、お楽しみに。
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