ポケットの中には『3次元動作解析』がひとつ
📖 文献情報 と 抄録和訳
深層学習スマートフォンアプリで推定した3次元座標から変換した2次元体軸投影面における定量的な歩行特徴量評価
[背景・目的] 病的歩容の評価・判定には、明確な基準や指標が存在せず、評価者間の信頼性に乏しいことは課題である。また従来の3次元動作解析は非常に高額で、広い設置場所と、計測・解析に時間がかかることも課題であった。そこで、病的な歩き方を誰もが簡単に発見して、重症度を評価できるように、スマートフォンを活用した計測方法を開発する研究を行った。
[方法] iPhone 用アプリ(Three D PoseTracker, TDPT)の歩行解析研究用非公開アプリTDPT for Gait Test (TDPT-GT)を使用。健常者と正常圧水頭症患者に直径1m の円を2 周歩いてもらい、AI による頭から足先までの全身24 点の3 次元相対座標を自動推定した。この3 次元相対座標から、被検者本人の体軸に対する矢状断面、冠状断面、軸位断面へ投影した2次元相対座標と、その座標の動作軌跡(75%信頼楕円)に基づいた関節可動域角度や軌跡の中心間距離を計算する方法を考案した。
[結果] 矢状断面投影2次元相対座標上における左右の股関節の平均可動域角度が30 度未満であれば「すり足歩行」、左右の膝関節の平均可動域角度が45 度未満であれば「小刻み歩行」と「すり足歩行」、かかとの上がり幅が下肢長の10%未満であれば「すり足歩行」である可能性が高いことを発見した。さらに、「開脚歩行」の指標として、下肢の軸位断面2次元投影相対座標上における股関節の動いた軌跡(75%信頼楕円)の中心に対するかかとの動いた軌跡の中心の左右水平外側方向への偏移度と、かかとの動いた軌跡の中心に対するつま先の動いた軌跡の中心の左右水平外側方向への偏移度の合計が下肢長の10%以上が最も信頼性が高かった。
[結論] これらの「すり足歩行」「小刻み歩行」「開脚歩行」の定量的指標は、体軸面へ投影した2次元相対座標に変換することで計測が可能となった関節の可動域角度や軌跡の中心間距離などに基づいており、シンプルで分かりやすく、また多くの人が保有するスマートフォンのアプリを活用しているため、広く浸透しやすく、一般化が期待される。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
かつて、ぼくたちのポケットは、たくさんの道具やデバイスでパンパンだった。
・電話(携帯電話)
・音楽ウォークマン(MDやipodなど)
・デジカメ
・手帳
・…
いま、それらの多くが1つのデバイスに集約された。
戦国時代に、数多くいた武将が数名の強者に併呑され、天下統一に向かったように。
デバイス戦国時代の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康は、『スマートフォン』だ。
そして、驚いたことに3次元動作解析までもが、その配下に入ろうとしている。
24の3次元座標が『正確に』出せるのならば、そりゃ立派な3次元動作解析装置だ。
ビデオ撮影はスマホで。座標算出→角度計算はAIで。
もしも、
・加速度装置を用いて関節モーメントが…
・靴内蔵のセンサーと連携して床反力が…
とか、力すらスマホでポンッと出てきてしまったら。
そしてそれが、VICONとか床反力計と同等の精度を持ったとしたら。
いやはや、ふしぎなポケットになってきた。
ますます、目が離せそうにない。
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