介護者になった理由。4つのライフコースパスウェイ
📖 文献情報 と 抄録和訳
世代間介護のライフコースパスウェイ
📕Rodrigues, Ricardo, et al. "Life course pathways into intergenerational caregiving." The Journals of Gerontology: Series B (2022). https://doi.org/10.1093/geronb/gbac024
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable
[背景・目的] 人生の重要な転機、累積的なプロセス、家族領域における人生のつながりというライフコースの概念を用いて、家族が提供する高齢者への世代間介護の経路を分析するための枠組みを構築する。
[方法] 研究方法フレームワーク分析を用いて,オーストリア(N=24)とスロベニア(N=52)のダイアド(被介護高齢者とその子・義理の子・孫からなる主な家族介護者)のサンプルから半構造化質的インタビューを分析する。データは2019年に、社会経済的背景や性別が異なるダイアドを含む目的別サンプリングによって収集された。
[結果] 分析の結果、介護への4つの非排他的な経路が明らかになった。
以下、介護者になった理由:4つのライフコースパスウェイを示す。
(1) 人生のターニング ポイントイベント
この経路は、家族の介護に関連した、人生のターニングポイントと呼ばれる、夫婦の家族または雇用の軌跡の移行を指す。主に、ケアの決定に直接影響を与える重要な出来事の中で、家族の軌跡に関連するもの。
・介護者自身の離婚、または両親の離婚
・介護者自身の子供が引っ越して、介護者が複数の介護義務から解放されること
・ケアが必要になった時点で介護者がすでに実家を出ており、近くに住んでいなかった場合
・両親の家が彼らを収容するのに十分な大きさであり、自分の宿泊施設を見つけることができなかったか、またはする気がなかった
・退職したばかりか、必要が生じたときに長期の病気休暇を取っていた
(2) 累積的なプロセスとしての介護
この経路は、介護への移行に影響を与えるようになったライフイベントによって引き起こされた累積プロセスを反映していた。労働市場への愛着が弱いという個人的な歴史、またはしばらく前に労働市場から完全に去ったことがあることを主な要因として挙げた。
・労働市場への愛着が弱く、頻繁に健康を害するエピソードが絡み合っていた
(3) 継続的かつ持続的なサポートの交換
この経路は、インタビューに答えてくれた人たちの話から帰納的に生まれたもので、ダイアド内のさまざまな形の支援の過去と継続的な交換を含んでいる。これらの交流は、彼らの人生の軌跡における現在の時点で、ケアによって恩返しをするという道徳的な「負債」または期待を生み出した。
・相互交流による累積的なプロセスは、親密な関係を享受しているダイアドに多く見受けられた
・過去の継続的な交流や支援がなければ、介護は行われなかったかもしれない
・親孝行という規範から切り離されていた
(4) 他者の生活と人生の軌跡の連関
この経路では、他の家族の選択、行動、資源によって影響を受ける介護への移行を分析します。言い換えれば、介護への移行が、家族の他のメンバーの人生の軌跡にどのように影響されるかということである。
・家族内の対立は、家族内の介護の分担に大きな役割を果たした
・母親と嫁との間に不和が生じ、そのために兄が介護を控えるようになった
・他の兄弟の人生の軌跡は、性差を超えて介護への道筋として言及された
[結論] 家族内の介護に関する決定は、家族内の力学や関係と同様に、介護者の人生における他の軌道の進展と関連したプロセスとして理解するのが最も適切であろう。介護者になることは、それ自体が、家族内の累積的な交流と同様に、絡み合った累積的な脆弱性の結果である可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
介護者になった理由。
正直、これまで積極的に情報収集してきた項目ではない。
だが、この情報は退院支援において極めて重要な情報だと感じた。
たとえば、以下2タイプの介護者がいたとしよう。
【A】必要に迫られてやむを得ずなった、仕事の時間ももっと確保したい、そこにジレンマを抱えている
【B】これまで自分に尽くしてくれた親。深い感謝から介護者になった。少しでも多くの時間を一緒に過ごしたい
このAさんと、Bさんで、退院支援として同じ介護サービス利用の推奨をしたとしたら、どうなるだろう。
セラピスト:「介護疲れなども危惧されますので、デイサービスやデイケアなどの利用をお勧めします。その方があなた自身の時間も確保できますし」
Aさんは、喜ぶだろう。Bさんは、疎むだろう。
なぜなら、Bさんの希望は、親と少しでも一緒の時間を過ごすことだから。
Bさんには、以下のような提案が望ましいかもしれない。
セラピスト:「〇〇さんは、まだまだ機能改善の余地があります。リハ継続が望ましいですが、介護者である娘さまにも一緒にリハビリを受けていただき、介護方法の指導や環境最適化を図ることのできる訪問リハビリの利用を推奨します」
まず理解することである。
理解してから、理解されること。
これを原則として心に刻もう。
退院支援はティーチング偏重あってはならず、コーチング先行でなくては。
相手の中に、鍵穴はある。
鍵穴の形を知らずして、扉を開けるための鍵はつくれない。
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