歩行中の中殿筋:負荷量を調整する方法とは?
▼ 文献情報 と 抄録和訳
片側荷重をかけた場合とかけない場合の歩行における股関節と体幹の筋活動と力学
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 骨盤の落ち込みは、股関節外転筋の活動低下によって引き起こされ、下肢の傷害と関連している。股関節外転筋の強化エクササイズはよく知られているが、機能的な活動中に股関節外転筋の活動を高めるための標準的な方法は存在しない。本研究の目的は、片側の重りを持って歩くことの効果を調べることである。
[方法] 合計26名の健康な成人が、手持ちの重り(体重の15%~20%)を使用した場合と使用しなかった場合に、計装化されたトレッドミルで歩行した。筋活動、運動学、動力学のデータは、それぞれ表面筋電図、モーションキャプチャー、フォースプレートを用いて収集した。股関節と体幹の平均筋活動,股関節,骨盤,体幹の角度,および立脚時の股関節内側のピークモーメントを,条件(非加重/加重)間の各側(加重の対側/同側)について,一般化推定方程式補正を用いた一般化線形モデルで比較した。
[結果] 筋活動,前額面の骨盤・体幹角度,前額面の股関節モーメントについて,条件と側方との間に交互作用が認められた(P ≤ .003)。
■ 筋活動について
ウェイトなしの条件と比較して、ウェイトありの条件では、ウェイトの対側で股関節外転筋の活動が高かったが(P < 0.001)、ウェイトの同側では変化が見られなかった(P ≥ 0.790)。運動学的および運動学的変数にも同様の変化が見られた。
■股関節モーメントについて
ウェイトありの条件では、ウェイトなしの状態と比較して、荷重と反対側の肢の立脚期における股関節外転モーメントが43%高く(79 N·m vs. 56 N·m、平均差:24 N·m [95%CI:20 N·m、28 N·m])、股関節内転モーメントが29%低かった(6.0 N·m vs. 8.4 N·m、平均差:2.4 N·m [95%CI:1.6 N·m、3.3 N·m])(p <.001)。
ウェイトと同側の肢の立脚期では、股関節外転モーメントは19%低下し(45 N·m vs. 56 N·m、平均差:10 N·m [95%CI:8.3 N·m、13 N·m])、股関節内転モーメントは75%上昇した(15 N·m vs. 8.7 N·m、平均差:6.5 N·m [95%CI:5.0 N·m、8.1 N·m])(p <.001)。
[考察] 片側に重りをつけて歩くことは、機能的な股関節外転筋の活動を高めるための治療法の一つとなりうる。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
今回の論文のように、バイオメカニクス的な仕組みがわかっているということは、価値のあることだ。
たとえば、今回の仕組みを知っているとトルクに影響を与えうるモーメントアームや重錘の質量を変化させることで、段階的に負荷量を調整できることを『自分の頭で』考え、気づける、応用できる。
そして、この論文が明らかにした重要な点は、重錘を用いて中殿筋に対する負荷を増やすこともできるし「減らす」こともできるということだ。歩行中の中殿筋活動が不足し、トレンデレンブルグ兆候が出現している患者には、良い適応かもしれない。
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