退院時点のADL自立度。病院と自宅における違い
📖 文献情報 と 抄録和訳
脳卒中生存者における入院リハビリテーション施設と自宅での日常活動能力の違い
[背景・目的] 脳卒中患者はリハビリテーションサービスの最大の利用者グループの一つである。入院中のリハビリは日常生活動作が改善するものの、退院後の自宅での日常生活動作は困難な場合が多い。標準的な臨床環境と自宅でのパフォーマンスの違いはあまり理解されていない。目的:入院リハビリテーション施設(IRF)から在宅への移行期における活動パフォーマンスの違いをよりよく理解するために、我々は、同じ時点(退院)における2つの異なる環境(IRFと在宅)の日常活動パフォーマンススコアを調査した。
[方法] 無作為化比較試験のベースラインデータを用いた横断的解析である。参加者はIRFから自宅退院を予定している50歳以上の脳卒中生存者であった。機能的自立度測定とセクションGGコード(いずれも国際機能分類、障害、健康スコアに換算)をプロトコールに従い、まず自宅で、次に退院時にIRFで実施した(3日以内の間隔、順序はランダム化せず)。
[結果] 57人の参加者のうち、自宅での活動スコアはIRF退院時のスコアより有意に悪かった。40%以上の参加者の退院時スコアは、シャワー/浴槽移動、歩行、階段の昇り降りについて、障害なし~軽度であったが、自宅訪問時のスコアは、これらの活動について中等度~完全な障害を示していた。スコアに最も差があったのは、シャワー/浴槽移動(中央値差1.5、95%CI 1.00-2.00)と階段昇降(中央値差1.50、95%CI 1.00-2.00)であった。
[結論] この結果は、リハビリテーション施設内での評価が、実際の生活環境での機能パフォーマンスを完全には反映していないことを示している。自宅環境では、環境要因や家庭内の障壁が影響し、活動の独立性が低下することが多いことがわかる。この知見は、退院後の支援計画やリハビリテーション戦略の改善に役立つであろう。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
“生活混乱期” という言葉があり、覚えておきたい言葉である。
実際、僕たちの研究グループの調査において、退院直後が最も危険なタイムポイントであることが明らかとなった。
今回の抄読研究は、ほぼ同時点で評価したにも関わらず、病院内のADLと比較して、自宅でのADLが有意に低くなることを明らかにした。
退院直後は、まさに、“生活混乱期” と呼ぶに相応しい時期である。
この時期において、リスクの高い患者に対しては、間髪置かない介護サービスの利用が求められる。
「帰ってから考えます」、そんな悠長なことを言っている場合ではない、かもしれない。
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