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日本の大腿骨近位部骨折者に週末効果はあるか?


📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢患者における週末入院が大腿骨近位部骨折の転帰に及ぼす影響は限定的:日本の全国医療請求データベースを用いた研究

📕Mori, Yu, et al. "Limited impact of weekend admissions on hip fracture outcomes in elderly patients: A study from a Japanese nationwide medical claims database." Geriatrics & Gerontology International (2024). https://doi.org/10.1111/ggi.15041
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[背景・目的] 高齢の日本人大腿骨近位部骨折患者における合併症予防のための早期手術の有効性と、週末入院の影響については、さらなる調査が必要である。本研究の目的は、包括的な日本の大腿骨近位部骨折症例データベースを用いて、高齢の大腿骨近位部骨折患者における週末入院が、入院中のさまざまな後遺症や死亡の発生率に影響を与えるかどうかを明らかにすることである。

[方法] 2016年4月から2022年3月までのDPC(Diagnosis Procedure Combination)全国行政データベースを後方視的に分析した。この期間中、約1100のDPC参加病院が、研究への同意を得た診療記録を継続的に提供した。本研究では、週末の入院に焦点を当て、プロピオシティスコアマッチング後の術後肺炎、肺塞栓症、心筋梗塞、尿路感染症、急性腎機能障害、認知症、院内死亡率との関連性を調査した。研究対象の母集団が多かったため、有意水準は厳格に適用され、P値が0.001未満の場合に統計的に有意であると判断した。

[結果] 年齢、性別、併存疾患を基に傾向スコアマッチングを行った結果、週末と平日に入院した患者を比較した111,035組の患者ペアが特定された。分析の結果、週末に入院した患者の後遺症リスクは、平日に入院した患者と比較して高まることはないことが示された。さらに、週末の入院では死亡率がやや高まる傾向が見られたが、その増加は無視できる程度であり、ハザード比は1.071(95%信頼区間:1.005–1.140、P=0.03)であった。

[結論] 本研究の結果から、高齢者の大腿骨近位部骨折患者の週末入院は、さまざまな後遺症や院内死亡率の増加とは決定的な関連性がないことが示唆され、高齢者の大腿骨近位部骨折患者に対する早期手術の重要性が日本でも認識され、推進される可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これは、特に国公立病院において顕著なのかもしれないが、週末の病院は様変わりする。
勤務体制が、平日とは異なるのだ。
出勤する医師の人数、主治医の勤務状況、看護師の人数、リハビリ職員の人数、そもそもリハビリの有無、など。
どうしたって、日曜日にはやや少なくなってしまうという状況は、どこの病院でもあると思う。
そして、そんな週末に入院してきた患者さんは、ややアウトカムが悪くなる、という考え方が『週末効果』である。

理論としては、確かにあり得そうだ。
だが、日本において実際のところは、どうなのかを確かめたのが本研究である。
アウトカムを後遺症発生、死亡発生として、大規模調査を実施した。
その結果として、日本においては週末効果はほぼ無視できる程度であり、関連性はないと結論している。
こと日本においては、平日に入院しても、週末に入院しても、長期的アウトカムには大差なさそうだ。
そこは、安心できそうである。

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