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手術予定の膝OA者。実生活での歩行と方向転換


📖 文献情報 と 抄録和訳

人工膝関節全置換術を予定している患者の実際の歩行と方向転換

📕Boekesteijn, Ramon J., et al. "Real-world gait and turning in individuals scheduled for total knee arthroplasty." Clinical Biomechanics 119 (2024): 106332. https://doi.org/10.1016/j.clinbiomech.2024.106332
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] 移動能力の向上、特に歩行能力の向上は、人工膝関節全置換術の重要な治療目標です。しかし、移動能力の客観的指標は臨床評価には存在しない。本研究では、慣性計測装置による連続モニタリングを使用して、人工膝関節全置換術を予定している患者と健康な対照者の実際の歩行と方向転換を比較することを目的とした。

[方法] 実際の歩行と方向転換のデータは、足部と腰部に取り付けた慣性測定装置を用いて、人工膝関節全置換術 (TKA)を予定している患者(n = 34)と健康な対照者(n = 32)を対象に、5~7日間収集した。 歩行と方向転換のパラメータは、線形回帰モデルを用いてグループ間で比較した。 さらに、歩行持続時間に基づく歩行持続時間、および方向転換角度と方向転換に基づく方向転換の層別化によってデータを分析した。

この図は、IMU(慣性計測装置)が埋め込まれたソックスについての概要を示している。IMUは、歩行や姿勢のモニタリングに用いられるセンサーで、図のセンサシステムは、足首の外側に配置された大きなケースにバッテリーとメモリが内蔵されている。このケースは、足背(足の上部)に装着されたIMUと小さなケーブルで接続されている。

[結果] 結果として、人工膝関節全置換術を予定している患者は、健康な対照群と比較して、以下の特徴を示した。

この図は人工膝関節全置換術を予定している患者と健康な対照群における歩行パラメータのバイオリンプロットを示している。各プロットでは個々のデータポイントに加えて、中央値(白い大きな点)、第1四分位および第3四分位範囲(点線)を示しており、分布全体の形状も表現されている。

・主な歩行速度のピークが低かった(Δ = -0.21 m/s)
95パーセンタイルでの歩行速度も遅い(Δ = -0.17 m/s)。
ストライド時間がやや長い(Δ = 0.05秒)。

この図は人工膝関節全置換術を予定している患者と健康な対照群における歩行パラメータのバイオリンプロットを示している。各プロットでは個々のデータポイントに加えて、中央値(白い大きな点)、第1四分位および第3四分位範囲(点線)を示しており、分布全体の形状も表現されている。

最大歩行距離が短い(F、Δ = -316歩)。
一時間あたりの歩数も減少している(H、Δ = -72歩/h)。
・TKA群(手術予定の膝、手術予定でない膝)の方向転換の速度が健康な対照群よりも遅く、手術予定の膝での速度低下が顕著(Δ = -7.6 deg/s)。

[結論] 人工膝関節全置換術を予定している患者は、実生活において歩行と方向転換に特定の制限があることが示された。慣性計測装置から得られたパラメータは、人工膝関節全置換術を予定している患者の歩行制限を示す実生活の移動能力測定の豊富なプロファイルを反映しており、今後の研究に関連する結果の次元を提供できる可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

変形性膝関節症者が手術をして、実際に変えたい部分とはどういうところだろう。
それは痛みかもしれないし、膝の関節可動域かもしれない。
だが、大きな領域の1つに『身体活動』があるだろう。
歩いて外出をしたい、スムーズに動きたい・・・。

では、その前に重度の膝OA者の実生活での身体活動は、どのように低下を認めているのだろうか。
今回の抄読研究は、その部分をかなり丁寧に調べている。
その結果として、歩行速度、歩行距離の低下を認めた。
さらに、この研究では方向転換まで調査しており、両方向ともに方向転換速度の低下を認めていた。
これらの結果から、手術前の膝OA者は、ゆっくりしか歩けず、方向転換も緩慢なものとなっていて、スムーズに動けるという理想からは離れた状態であることが明らかになった。

以前の文献抄読から、TKAを実施すると、非変形性関節症者の身体活動量にだいぶ近づく、ということは明らかになっているので、やはり進行した膝OA者に対しては、TKAは重要な選択肢の1つとなるだろう。
術前リハビリ、手術適応など、複数の視点から役立つ情報を提供してくれた一論文であった。

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