英国における理学療法士の訴訟経験
📖 文献情報 と 抄録和訳
臨床過失と理学療法:理学療法士の訴訟経験に関する英国調査
[背景・目的] 英国の理学療法専門職に対する訴訟の程度と影響を調査すること。
[方法] オンラインによる横断的質問紙調査を用いた。調査対象は、NHS(National Health Service, 国民保健サービス)、非NHS、個人診療所を含む、英国で開業している有資格の理学療法士で、専門、グレード、環境は問わない。
[結果] 688名の回答者がアンケートに回答した(信頼度96%)。英国のすべての国から回答があった。73%が女性で、44%が20年以上の資格保持者であった。ほとんどの回答者はNHSに勤務し(74%)、神経筋骨格系の仕事に従事していた(62%)。回答者の10%が訴訟に関与したことがある。128件の請求が報告され、1件以上の訴訟に関与した回答者もいた。
■ 理学療法士の職務形態と訴訟を受ける頻度
訴訟は、経験者にとっては非常にストレスの多い経験であり、他の多くの人々にとっても悩みの種であった。個人的な影響は、ストレス(76%)、心配や不安(67%)であった。専門的な影響として最も多かったのは、防御的実践(68%)であった。ほとんどの回答者が、法的支援を提供すべき人物を誤って認識していた。46%が受けた支援に満足していない。ほとんどの回答者(77%)は、登録前および大学院(68%)のプログラムに訴訟研修を含めるべきだと回答した。
[結論] これは、英国の理学療法専門職の訴訟経験を調査した初の英国調査である。調査に参加した理学療法士の10%が訴訟に巻き込まれた経験があった。訴訟は理学療法士の身体的・精神的ウェルビーイングと臨床実践に影響を与えた。精神的、法的なサポートの改善が必要である。臨床的過失のトレーニングを登録前および大学院のプログラムに含めるべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
医療の仕事に携わっていて感じることは、すべてがうまくいく訳ではない、ということ。
一生懸命患者さんのために、勉強して、考えて、治療しても、それがうまくいかないことはある。
驚愕の事実に、後から気がついてしまうことが、やっぱりある。
そんな歯車がうまく回らなくなった時に、医療訴訟というものが起こりうるのだろうと思う。
今回の抄読研究は、イギリスにおける理学療法士の医療訴訟の実情を報告してくれた。
注目すべきは、職務形態による医療訴訟頻度の違いだろう。
個人開業者は、医療訴訟を受けやすい、自由と責任は表裏一体、というところだろうか。
そして、日本の理学療法士も注意したいのは、若手理学療法士の頻度の高さだ。
若手は失敗が多い、もちろん。
それに対して、若手は知識、技術以外の人間としてどうあるか、に重々注意しなければならないだろう。
そして、失敗が多いということが最初からわかっているのだから、周囲の先輩はそれをカバーできるように動くことが求められるだろう。
とても学びの多い論文だと思う。
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