骨折リスクの高いがんの種類とは?
📖 文献情報 と 抄録和訳
20の癌の生存者50万人における骨折のリスク:リンクされた英国の電子カルテを用いた集団ベースのマッチド・コホート研究
[背景・目的] 多発性骨髄腫、前立腺がん、乳がんの罹患歴は骨の健康と関連しているが、より広範ながんにおける関連は不明である。われわれは、さまざまながんの生存者におけるあらゆる骨折および主要な骨粗鬆症性骨折のリスクを、がんを発症していない人と比較することを目的とした。
[方法] この集団ベースのマッチドコホート研究では、病院データとリンクした英国臨床実践研究データリンク(UK Clinical Practice Research Datalink)の電子カルテを用いた。リンケージが可能な成人(18歳以上)を対象とし、研究開始を1998年1月2日以降に限定し、2020年1月31日に管理上の打ち切りを適用した。がん生存者群には、最も一般的な20のがんの生存者を含めた。がんに罹患した各個人は、がんに罹患していない対照群最大5人(1対5)とマッチングされた(年齢、性別、一般診療科)。主要転帰は、指標日(すなわち、マッチさせたがん患者の診断日)から1年以上経過後に発生したあらゆる骨折および主要な骨粗鬆症性骨折(骨盤骨折、大腿骨近位部骨折、手首骨折、脊椎骨折、上腕骨近位部骨折)とした。共有リスク因子で調整したCox回帰モデルを用いて、がんサバイバーシップと骨折との関連を推定した。
[結果] 1998~2020年にがんと診断された成人578,160人を、がんでない3 226,404人とマッチさせた。がん生存者における骨折の粗発生率は、甲状腺がんでは1000人年当たり8.39例(95%信頼区間7.45-9.46)、多発性骨髄腫では1000人年当たり21.62例(同20.18-23.18)であった。がんに罹患していない人と比較して、あらゆる骨折のリスクは20のがんのうち15で増加し、主要な骨粗鬆症性骨折のリスクは20のがんのうち17で増加した。効果の大きさは様々であった: 調整ハザード比(HR)が最も大きかったのは多発性骨髄腫(1.94、95%CI 1.77-2.13)と前立腺がん(1.43、1.39-1.47)であり、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、腎臓がん、中枢神経系がんでは1.20-1.50の範囲のHRがみられ、悪性黒色腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、食道がん、大腸がん、子宮頸がんではより小さい関連(HR<1.20)が観察された。多発性骨髄腫(2.25、1.96-2.58)、中枢神経系(2.12、1.56-2.87)、肝臓(1.62、1.01-2.61)、前立腺がん(1.60、1.53-1.67)、肺がん(1.60、1.44-1.77)において、骨粗鬆症性骨折のリスクが最も大きく増加した。
[結論] ほとんどの種類のがんの生存者は、がんの種類によって異なるが、がん後数年間骨折のリスクが高かった。これらの知見は、緩和および予防戦略に役立つ。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
これは、知識としてあまり持ち合わせていなかった。
がん患者の骨折リスクは「高いだろう」とは感じていたが、がんの種類別にそのリスクの高低があるとは考えていなかった。
今回の抄読研究では、20種類のがんのうち、どのがんが骨折リスクが高いのかを明らかにした。
日頃のリハビリテーションに応用すると、併存疾患にがんを有していた場合、そのがんの種類別に「このがんは特に骨折リスクが高いから、転倒予防に重点をおいて退院支援していくべきだな」などの臨床判断につながる可能性がある。
有用な知識だ。
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