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理学療法研究における優先課題9選


📖 文献情報 と 抄録和訳

理学療法研究における優先事項:スコーピングレビュー

📕Souto-Miranda, Sara, et al. "Priorities in physical therapy research: A scoping review." Brazilian Journal of Physical Therapy 28.6 (2024): 101135. https://doi.org/10.1016/j.bjpt.2024.101135
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[背景・目的] 理学療法は、常に進化を続ける専門職である。研究効率を向上させるには、知識のギャップを特定し、研究の優先事項を確立することが重要である。目的:理学療法研究の優先事項を再検討し、そのエビデンスを世界的な研究アジェンダにまとめること。副次的な目的として、研究間の優先事項を比較することとした。

[方法] PubMed、Web of Science、Google Scholarで検索を行い、研究および灰色文献を収集するスコーピングレビューを実施した。 研究課題を決定したり、理学療法研究における優先順位設定に関する研究を実施した理学療法士、理学療法研究者、患者、政策立案者が関与する研究を対象とした。 研究の優先順位を世界的な研究課題の主要テーマに集約するために、2名の独立したレビュアーによる内容分析を実施した。

[結果] 25件の記録が含まれ、そのほとんどが高所得国(n = 25)からのオリジナル記事(n = 19)であった。9件の研究では理学療法研究の一般的な優先事項が確立され、残りは理学療法の特定分野に特化したものであった。2000年以降、理学療法全般および理学療法の7つの特定分野について、合計551件の優先事項が確立された。また、今後の研究のための9つの優先カテゴリーからなる世界的な研究アジェンダが策定された。費用対効果研究は、優先度の高い研究としてより頻繁に挙げられた。

この図は、理学療法(Physical Therapy)における研究の優先課題を9つのカテゴリに分類し、グローバルな研究アジェンダとして提示している。この分類は、25件の研究や政策文書を分析し、それらから導き出されたものである。それぞれの優先課題は、理学療法のさまざまな側面における研究上のニーズを反映しており、具体的には以下の通りである。

1. 費用対効果 (Cost-effectiveness)
・理学療法のさまざまな介入方法の費用対効果を明らかにすることが目標。
・医療費の効率的な配分や、効果的な介入の選定に寄与する。
2. サービス提供の最適化 (Service delivery)
・理学療法サービスの提供モデル、構造、プロセスの最適化に関する研究を行う。
・待ち時間、リソース配分、介入のタイミングなど、患者ケアの効率向上に関連する。
3. 教育、専門職の発展、品質 (Education, professional development, and quality)
・理学療法教育の最適モデルや、教育内容の質向上に関する研究。
・臨床推論スキルの開発や教育モデル(例:反転授業、問題解決型学習)の効果を評価。
4. 測定ツール (Measurement instruments)
・理学療法に関連する新しい測定ツールの開発、または既存ツールの改良。
・測定ツールの心理測定特性や臨床実践での適用可能性(コスト、訓練要件など)の評価。
5. 障害、治療、患者分類のメカニズム (Mechanisms behind disability, treatments, and patient classification)
・障害の背後にあるメカニズムや、理学療法の介入がどのように作用するかを研究。
・患者分類方法の開発や最適化を目指す。
6. 患者のニーズ、期待、経験、文脈 (Patients’ needs, expectations, experience, and context)
・患者の知識、文化的背景、期待が治療成果に与える影響を研究。
・患者中心のケアアプローチを支援するための調査。
7. 予後結果と治療反応 (Prognostic outcomes and response to therapy)
・治療に対する患者の反応を予測する因子を特定し、予後を評価。
・特定の患者グループにおける治療の成功率を向上させる。
8. 意思決定戦略 (Decision-making strategies)
・臨床意思決定を支援するツールや戦略を開発。
・理学療法士の専門性向上や患者との共同意思決定の効果を研究。
9. 技術とビッグデータ (Technology and big data)
・理学療法におけるテクノロジーやビッグデータの利用価値を探る。
・ロボティクス、ウェアラブル技術、遠隔医療の効果や信頼性を評価。

[結論] 本レビューでは、理学療法研究の優先度に関する文献を統合し、世界的な理学療法研究アジェンダを提供した。今後、理学療法研究を計画し、複数の利害関係者や国籍に関連する問題に研究努力を集中させるために、この9つの優先カテゴリーを使用することができる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

“プロダクトアウト”“マーケットイン” という対照的な2つの考え方がある。

プロダクトアウトとは、企業が持つ技術や資源を活かして製品を開発する手法。
言い換えれば、「(クリエイターが)作りたいものを作る」、という方向性。
この考え方において、起点はクリエイターであり、その技術、アイデア、製品の独自性である。

一方で、マーケットインとは、顧客のニーズや市場の動向を重視して製品を開発する手法。
言い換えれば、「(顧客に)売れるものを作る」、という方向性。
この考え方において、起点は顧客であり、顧客のニーズ、マーケットの要求である。

さて、理学療法における研究は、今の学術体系にない部分から少しはみ出す営みであり、まあ悪くいえば『余剰な活動』である。
その活動においては、『俺が作りたくて作ったラーメンだ。食べたければ食べろよ』的な態度になりやすい。
だけれども、よく考えて欲しい。
そんなプロダクトアウト的な態度では、数年から時に10年を超える研究期間をかけた、人生の代表作が、『ん?必要ないですね。興味ないですね』とお払い箱になってしまう可能性が高くなる。
それで、いいと思うか?
人類全体の営みとして、臨床研究があるとするならば、まず人類全体が、現在、何を求めているのか、どんな研究領域が必要のか。
まずは、その部分を知り抜いた上で、かつ自分の強みや興味や技術が貢献できる部分を探すべき、ではないか?

今回の抄読研究においては、理学療法研究における、現在必要度の高い領域9つを明らかにしてくれた。
特に、『費用対効果』の領域の重要度が高いという・・・。
これまで、自分自身の費用対効果という研究領域に対する興味や知識や技術は、小さいものだった。
少し、アンテナの感度を高めてみようと思う。

彼を知り己を知れば百戦殆うからず。
孫子

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