歩隔の科学。歩行, 走行への影響
📖 文献情報 と 抄録和訳
典型的な運動活動における歩隔のバイオメカニクス的影響:系統的レビュー
[背景・目的] 歩隔は前額面における空間変数であり、初期接触時の両足の踵(スプリント時は前足部)間の内外側距離として定義される。歩隔の変動は下肢のバイオメカニクスに影響を及ぼす可能性がある。このシステマティックレビューでは、歩隔の急性変化がロコモーションのバイオメカニクスに及ぼす影響を明らかにするために、発表されている知見を総合し、傷害予防やスポーツパフォーマンス向上への示唆を与えることを目的とした。
[方法] システマティックレビューの方法に従い、文献の同定、選択、評価を行った。4つの電子データベース(Web of Science、PubMed経由のMEDLINE、Scopus、ScienceDirect)を2023年5月まで検索し、PICOモデルに基づいた包含基準を作成した。研究の質はDowns and Blackチェックリストを用いて評価し、測定されたパラメータをまとめた。
[結果] 23の論文と399人の参加者がシステマティックレビューに含まれた。対象となった23の研究の平均品質スコアは9.39点(14点満点)であった。歩隔は、下肢の矢状面、前額面、横断面における運動学的および動力学的特性、例えば、後足部の倒立角とモーメントのピーク値、股関節の内転角とモーメントのピーク値、膝関節の屈曲モーメント、膝関節の内旋角のピーク値、膝関節の外旋モーメントを変化させた。歩隔の変化は、運動時の安定性と姿勢を変化させる可能性があり、歩隔の変化により近位運動学が変化し、負荷変数に影響を与える手がかりが得られるというバイオメカニクス的効果が即座に得られるというエビデンスが存在する。
■ 歩隔が広いと・・・
<歩行>
・サポートベース↑
・中臀筋と小臀筋の活性化↑
・膝関節運動における変化(例:伸展モーメント↑ 、 膝関節内転ピークモーメント↓ 、膝関節内転モーメントインパルス↓)
<走行>
・膝関節外転ピークモーメント↓
・ピーク後脚外転角↓
・脛骨剪断応力↓
[結論] 歩行、ランニング、スプリント中の歩隔の短期的な変化は、複数の下肢バイオメカニクスに影響を与えた。歩隔が狭いと、歩行時およびランニング時のバランスが悪くなり、下肢への衝撃荷重が大きくなる可能性があり、アスリートのスプリントパフォーマンスが制限される可能性がある。歩隔を広げることは、膝蓋大腿痛症候群、腸脛靭帯症候群、脛骨骨ストレス損傷などの傷害のリハビリテーションに有益な場合があります。ステップ幅を広くすることで、支持基盤が増加し、一般的にバランスコントロールが強化され、ひいては日常動作中の転倒リスクを軽減できる可能性がある。そのため、歩隔を変更することは、臨床現場における簡単で非侵襲的な治療法として提案されている。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
臨床において、『歩隔』というものに注目し、介入することは意外に多い。
特に多いのは、歩行開始時に歩隔が狭くなる人に対して、「広げて」と指導する場面である。
歩隔が狭くなることは、ロープの綱渡りをするような歩き方に近づき、これは特に前額面上のバランス低下につながる。
そのため、「もう少し足の幅(歩隔を視覚的に示しながら)を広げて歩いてみましょうか」と指導することになる。
今回の抄読研究は、この歩隔が歩行、走行にどのように影響するかだけに着目した、かなりニッチな論文だと思う。
だが、考察の冒頭で示したように、歩隔に介入する機会は意外に多いし、例えば変形性股関節症者の歩容にとっても重要と考えられている。
そして、今回の抄読研究では、全般的に歩隔が狭いことは弊害が多く、歩隔が広いことはメリットが多い、というニュアンスで結論が述べられている。
まず、歩隔が狭すぎないこと、これは重要な視点の1つかもしれない。
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