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医療者中心と患者中心。臨床推論プロセスにおける摩擦


📖 文献情報 と 抄録和訳

推論についての推論 - 回想を活用して脳卒中リハビリテーションチームにおける臨床推論を明らかにする

📕Elvén, Maria, et al. "Reasoning about reasoning–using recall to unveil clinical reasoning in stroke rehabilitation teams." Disability and Rehabilitation (2024): 1-10. https://doi.org/10.1080/09638288.2024.2320263
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[背景・目的] 本研究の目的は、脳卒中チームの医療従事者が患者および近親者と協力しながら臨床推論プロセスをどのように推論するかを調査することである。

[方法] 刺激による想起を用いた探索的質的研究デザインが採用された。3つのリハビリテーション対話の音声録音が、臨床推論に関する関係スタッフへのインタビューのヒントとして使用された。テーマ分析アプローチが採用された。

[結果] 主な発見は、データから明らかになった、医療者中心の臨床推論と患者中心の臨床推論の間の明らかな摩擦であった。次の5つのテーマが特定された:

1. 豊かな視点と十分な意思決定のための異なる視点の重要性
・異なる職種や患者・家族の視点を統合することにより、患者の問題についてより広範で正確な理解が可能となる。
・一方で、それらの視点を融合することが困難な場合もある。
2. リハビリテーション対話における文脈の影響
・対話の時間制限やチーム間の準備不足が、患者参加の妨げになる場合がある。
・また、長期的な目標設定が現実的でないと判断されることで、短期的な目標に議論が集中する傾向がある。
3. 分析と意思決定における共通理解:善意はあるが実現が難しい
・チームが患者の目標や問題を理解しようとする努力が、時に意見の不一致や不十分な問題分析につながり、結果的に不明確な目標設定を引き起こす。
4. 患者の視点を理解し、意思決定に至るための機会の喪失に関する洞察
・患者が述べた重要な情報が見逃されることがあり、それがチームの対応の遅れや患者のニーズとの乖離を引き起こす。
5. 医療提供者の専門知識が対話を主導する
・患者の意見を聞こうとする意図があっても、専門家主導で対話が進むことが多い。
・特に患者の目標が現実的でない場合、専門家の判断が優先される。

[結論] 多職種による脳卒中チームは、臨床推論を患者および近親者の見解を尊重するプロセスとみなしているが、各専門家の専門知識が個々のニーズを表面化させることを妨げる危険性がある。専門家が志向するパーソン・センタード・アプローチと臨床推論の実践との間には相違がある。刺激による想起はパーソン・センタード・プラクティスを明らかにし、専門家の臨床推論に対する意識を高めることができる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「真の医者になろうとする者は、治そうと思うあらゆる病気や、診断しようとするあらゆる症状と、それに付随する症状を前もって経験しておかねばならぬ」・・・本当にそういう医者なら私も信用しよう。
実際、他の医者どもは、海や岩礁や港を描いて、自分は机の前に座って、何の危険もなく模型を動かす人のように我々に指図する。
彼を実際の中に投げ込んでごらん
どうしていいか分からなくなるから

モンテーニュ『エセー』第3巻十三章

患者さんについての問題を、真に知っているのは誰だろうか。
医療者だろうか、家族だろうか、患者の友人だろうか、それとも患者本人だろうか・・・。
答えは、『すべて』だ。
患者さんは、自身の症状や心理状態に関することを真に知っている。
医療者は、その患者の症状の医学的側面からの理解や取るべき対応、については真に知っている。
家族は、その患者の社会的背景・資源や介護環境などについて、真に知っている。
患者の友人は、その患者の心の内の本当のところや、友人関係について、真に知っている。
患者さんに関わる、あらゆる人が、特定の側面について『真に』知っている。

だからこそ、だ。
そこに摩擦が生じてしまうのは。
しばしば見られることは、患者さんの訴えと医療者の訴えの間に生じる摩擦である。
患者さんは「こうしたい!」という。
一方で、医療者は「そうすべきではない!こうすべきです。理由はこうだからです」という。
そこに、摩擦が生じる。
だけれども、ここに摩擦が生じることは、僕は健全なのではないかと思っている。
それぞれが、それぞれの価値観や、自らの視界において知り得た範囲内の『正義』を持っている。
そのそれぞれが尊い正解、である。
重要なことは、そのたくさんの正解を寄せ集めて、最適解を導き出すことだ。
そこには、生じた摩擦を解消する『技術』が必要になるだろう。
ただ、患者さんの希望に迎合する訳でもなく、
ただ、医療者の医学的要求を満たすだけでもない。
そんな正解がある、と強く信じる。

そこの技術論は、これからしっかり学ぶとして・・・。
まずはマインドセットとして、一緒に悩み、一緒に最適解に近づこうとすること。
どちらかの色で塗りつぶすという訳ではなくて。
そうしようとしていく中で、見えてくる何かがあるかも知れない、今は分かりきらないけれど。
健全に、悩み続けたい。

迷って。
きっと迷いの中に倫理がある。

ヨレンタ「チ。」

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