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生きた肩甲下筋を見よ。拡散テンソルで生体内構造調査


📖 文献情報 と 抄録和訳

ヒト肩甲下筋の生体内三次元構造

📕Zhang, Yilan, et al. "Three-dimensional architecture of the human subscapularis muscle in vivo." Journal of Biomechanics 161 (2023): 111854. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2023.111854
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[背景・目的] 骨格筋の構造を詳細に分析することで、骨格筋の機能についての洞察が得られる。これまで、ヒトの肩甲下筋構造の測定は、死体での測定に限られていた。

■ 肩甲下筋×解剖学を巡るこれまでの背景
・Bモード超音波画像:筋構築の測定に最も広く用いられている方法であるBモード超音波画像は、ヒトの肩甲下筋の筋構築の評価には用いることができない。超音波は肩甲骨を透過しないため、肩甲下筋の大部分を画像化することができないからである。
・解剖体を用いた研究:骨格筋内の水分量や安静時緊張(神経筋活性)の違いよって、筋断面積やその他の骨格筋指標に大きな影響を及ぼしそう

[方法] 本研究では、解剖学的に拘束された線維トラクトグラフィーを用いて、ヒト肩甲下筋の3D構造を再構築し定量化することの実現可能性を実証し、ヒト肩甲下筋の構造をin vivoで初めて定量的に測定した。 健康な若年成人20名の右肩からmDixon画像と拡散テンソル磁気共鳴画像を得た。解剖学的に拘束された筋線維トラクトグラフィーを用いて、肩甲下筋の筋線維構造を再構築した。

[結果] 定性的には、再構築された筋構造は既知の肩甲下筋の解剖学的構造によく似ており、再構築の面的妥当性が示された。筋構造パラメータ(平均値±SD)は、筋体積138±42cm3、筋束長63.6±5.9mm、生理的断面積(PCSA)22±6cm2、羽状角16±2°であった。

肩甲下筋の構造的な測定値は、死体研究で報告された範囲内であり、線維トラクトグラフィーのパラメーターの変動に比較的敏感ではなかった。
■ 肩甲下筋:生体内 vs. 解剖体
肩甲下筋の平均筋体積(±標準偏差)は138±42cm3、筋束長は63.6±5.9mm、羽状角は16±2°、PCSAは22±6cm2であった。
筋体積は、Wardら(📕Ward et al., 2006 >>> doi.)およびMathewsonら(📕Mathewson et al., 2013 >>> doi.)が報告した平均値よりも50%および18%大きかった。 
平均筋束長:解剖体研究で報告されたものと同様であった。
・我々のサンプルのPCSA(22±6cm2)は、Wardら(2006)およびMathewsonら(2013)が報告した範囲内であった
羽状角はWardら(2006)とは大きく異なっていた。

[結論] 解剖学的に詳細な全筋の再構成は、関節手術が筋構造に及ぼす影響を定量化し、ヒトの肩の計算モデルを進歩させるために使用することができる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

例えば、ジューシーなステーキとビーフジャーキー。
例えば、もぎたてのフルーツとドライフルーツ。
例えば、釣りたての鮮魚と干物。

「こんなにサイズ感が違うかね!?」
というくらいに、違いを感じる。
この例を人体に当てはめることは不謹慎である、が近しいものがあると思っている。
生体内の骨格筋には、みずみずしい血液が流れ、そのミクロな構造を稼働させる、電気的な刺激も加わり続けている。
解剖体を用いた研究においては、生体の構造を見ることはできるかもしれない。
だが、そこに「生」を見ることはできない。
そこには、明らかな限界がある。

今回の抄読研究では、その限界に風穴を開ける拡散テンソルという手法を用いて、生体内の肩甲下筋構造を明らかにした。
その結果、やはりボリュームやそれが関わりそうな羽状角という点では、過去に報告された解剖体研究とは違いを認めた。
さらに、忘れてはいけないのは、解剖体は「高齢者が多い」ということ、それはもちろんそうだろうと思う。
これから、解剖的な研究も、その目的と手法の適応が整備されていくのかもしれないと感じた。
「生きる」を見ること、関わること、促すこと、これはどこまでも柱だ。

なぜおれは泣くのだろう。
なぜこんなに天地は美しいのだろう。
そうだ。ここではなにもかも生きているからだ!

手塚治虫 火の鳥(4)

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