透析患者のかゆみ。“たかがかゆみ”と侮るなかれ
📖 文献情報 と 抄録和訳
血液透析患者におけるそう痒症:臨床結果および患者報告アウトカムとの縦断的関連性
[背景・目的] 慢性腎臓病関連そう痒(よう)症(CKD-aP)と有害な臨床イベントおよび患者報告アウトカム(PRO)との関連については、横断的研究で報告されている。われわれは、維持血液透析を受けている患者におけるCKD-aPの変化と臨床転帰との縦断的関連について研究した。
[方法] 研究デザイン前向きコホート研究。設定および参加者Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOPPS)の第4~6期(2009~2018年)において、約12ヵ月間隔で2回のCKD-aP評価を受けた21ヵ国の血液透析患者7,976例。曝露曝露状況は、初回および約1年後のそう痒炎の評価に基づく。初回評価時のみ中等度以上のそう痒症(解消)、2回目評価時のみそう痒症(発症)、どちらの評価でもそう痒症(なし)、両方の評価でそう痒症(持続)の4群を同定した。
アウトカム:初回そう痒症評価時および1年後の検査値およびPRO。分析アプローチ線形混合モデルにより、4つの曝露群における1年間の試験期間中の臨床検査値およびPROの変化を調査した。
[結果] 51%の患者がいずれかの評価で中等度から重度のCKD-aP症状を有していた。
■ 皮膚のかゆみとアウトカムとの関連
・うつ病、睡眠不足、消耗感の有病率は、そう痒症を発症した患者では試験期間中に増加し(それぞれ+13%、+10%、+14%)、そう痒症が消失した患者では減少した(それぞれ-5%、-8%、-12%)。
・消失群および持続群では、PROの経時的変化はわずかであった。検査値(リン、Kt/V)の経時的変化は、いずれの群でも検出されなかった。
・CKD-aPが認められなかった患者と比較して、CKD-aPが持続した患者の補正ハザード比は、全死亡が1.29(95%CI、1.09-1.53)、全入院が1.17(1.07-1.28)、心血管イベントが1.48(1.26-1.74)、感染症イベントが1.01(0.80-1.29)、透析からの離脱が1.32(0.74-2.35)であった。
[限界・結論] 2回の評価間のCKD-aP症状の中間評価は行わなかった;2回目の評価前に死亡または追跡不能となった患者による選択バイアスの可能性。結論CKD-aP症状は慢性的であり、これらの所見は標準化されたアプローチを用いてこの症状を繰り返し評価することの潜在的価値を強調するものである。今後の研究では、CKD-aPの潜在的な原因および効果的な治療の選択肢を系統的に調査すべきである。これらの所見は、かゆみを臨床的に発見することの潜在的価値と、このような症状を経験している透析を受けている患者に対する効果的な治療法の追求を強調している。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
臨床においては “あるある症状” と思われるものが、いくつかある。
その代表的な1つが『透析患者における皮膚のかゆみ』だ。
皮膚を観察すると、掻きこわしがよくある。
「やっぱり、かゆいですよね」
「・・・、そうなんだよ、かゆくってかゆくって」
という会話が、何度かわされたことだろう。
そして、「まあ掻きこわしをしなければ・・・」程度にそのかゆみについて軽視していた。
だが、今回の抄読研究によって、その見立てが甘かったことを知った。
なんと死亡、入院、心血管イベントなど重要なアウトカムと関連するらしい。
強いかゆみを訴えるということは、“かゆみ以上に重要な何か” を訴えている。
今度からは、臨床上かゆみに出会ったときには、その先の予後予測にも影響を与えていこうと思う。
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