内側半月板逸脱。膝OA者の歩容との関連
📖 文献情報 と 抄録和訳
変形性膝関節症患者における歩行時の内側半月板脱出の特異的パターンと四肢運動学との関連性
[背景・目的] 内側半月板逸脱は、繰り返される機械的ストレスによって悪化する。内側半月板逸脱には様々な要因が影響すると考えられるが、変形性膝関節症(KOA)患者の歩行時の内側半月板の挙動に関する情報は限られている。本研究の目的は、変形性膝関節症患者における歩行時の内側半月板逸脱のパターンと四肢のバイオメカニクスとの関連を調査することである。
[方法] 本研究には、55名の変形性膝関節症患者と対照群として10名の高齢者ボランティアが参加した。歩行時の内側半月板逸脱と四肢のバイオメカニクスをそれぞれ超音波検査と動作解析システムにより同時に評価した。内側半月板逸脱の値から波形を作成し、歩行周期中に内側半月板逸脱の最高値を示す点を特定した。波形における内側半月板逸脱のピークタイミングにより、波形のパターンを評価し、対照群と比較した。動作解析から側方スラスト、膝関節内転モーメント(knee adduction moment, KAM)、屈曲モーメントを求め、内側半月板逸脱との関連を評価した。
[結果] KOA患者では、歩行時のピークタイミングが特異的であった。対照群と比較すると、内側半月板逸脱波形は歩行周期のピークタイミングから早期(59%未満)、正常(60~83%)、後期(84%以上)の3群に分かれた。早期群、正常群、後期群における内側半月板逸脱波形のパターンは、それぞれ第1KAMおよび側方スラスト、第2KAM、膝屈曲モーメントと相関していた。さらに、健常者の半月板の動き方と類似していない type1, 3 は、逸脱の引き金と なる半月板の後方付着部損傷の発生率が高いことが示された。
[結論] 歩行中の独特な内側半月板逸脱パターンが示され、これらのパターンはKOA患者の四肢バイオメカニクスと関連していた。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
半月板は、自転車のタイヤの空気圧に似ていると思った。
自転車が地面からの衝撃力をうまく吸収して走れているのは、タイヤの空気圧によるところが大きい。
そして、タイヤの空気圧は気づかないうちに徐々に減少していく(空気が抜けていく)。
タイヤの空気が抜けていることに気づくのは、とても漕ぐのが大変になった時か、パンクした時。
つまり、急激な変化が起きなければ、壊れるまで突き進んでしまうリスクが大きい。
半月板は、それに似ている。
つまり、“損傷リスクに気づかないこと” が重大。
今回抄読した研究においては、リスクへの盲目を軽減してくれるかもしれない。
膝OA者の歩容や関節モーメントから内側半月板逸脱を予測でき、かつそれが半月板損傷リスクとも関わる。
これなら、歩行観察レベルで損傷リスクを把握でき、改善の一手を打つことにつながる。
ぼくは、自転車のタイヤの空気は1週間に1度は入れるようにしている。
たとえ、不都合がなくてもだ。
世の多くのことは、グラデーション的に悪化していく。
そして、悪化していることに気づくのは、すでに壊れている時であることが多い。
だから、メンテナンスは対処的ではなく、習慣的になされることが望ましいと感じる。
半月板のメンテナンス、これを習慣的になす方法を、理学療法の視点から考えたい。
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