高齢者が身体活動参加に期待するアウトカムは何か?
📖 文献情報 と 抄録和訳
「今、健康に向かって歩んでいる」:高齢者にとって重要な身体活動参加の結果に関する質的研究
[背景・目的] 身体活動への介入を行うランダム化比較試験では、多数の健康関連アウトカムにおいて高齢者への有益性が実証されている。しかし、このような試験が患者に関連するアウトカムを確実に測定しているかについては、あまり注意が向けられていない。今後の試験におけるアウトカム選択を支援するため、本研究の目的は、高齢者が身体活動への参加に関連するアウトカムとして何を重要視しているかを理解することである。
[方法] 65歳以上の成人を対象に12名の半構造化インタビューを実施し、反射的テーマ分析を用いてインタビューの記録を分析した。
[結果] 高齢者は、一般的なもの(例えば、生活の質)から具体的なもの(例えば、脚力)まで、身体活動への参加から多様な成果を望んでいる。 関連する成果は、身体的、臨床的、社会的、心理的、包括的の5つのテーマに分類され、それぞれにサブテーマが設定された。
1. 身体的アウトカム (Physical outcomes):
・右上の青い部分が「身体的成果」を表しており、主なサブテーマには「機能 (Function)」「構造 (Structure)」「可動性 (Mobility)」「認知機能 (Cognitive)」が含まれる。
・これらは、高齢者が身体活動を通じて体の機能や可動域、認知能力の維持や向上を期待していることを示している。
2. 臨床的アウトカム (Clinical outcomes):
・左上の赤い部分が「臨床的成果」を表しており、主なサブテーマには「転倒 (Falls)」「傷害 (Injury)」「疾患 (Disease)」「健康と長寿 (Health and longevity)」「生理的変化 (Physiological)」が含まれる。
・これらは、身体活動が転倒や病気の予防、健康の維持・改善に繋がることへの期待を示している。
3. 心理的アウトカム (Psychological outcomes):
・左下の緑の部分は「心理的成果」であり、サブテーマには「自信 (Confidence)」「コントロール (Control)」「アイデンティティ (Identity)」「精神的健康 (Mental well-being)」「環境的要因 (Environmental)」が含まれる。
・身体活動が自己肯定感や精神的な安定に寄与するという心理的側面を強調している。
4. 社会的アウトカム (Social outcomes):
・右下の紫の部分が「社会的成果」を表し、サブテーマには「相互作用 (Interaction)」「つながり (Connectedness)」「孤独感 (Solitude)」が含まれる。
・身体活動を通じて社会的なつながりが生まれたり、孤独感が緩和されることが期待されている。
5. 包括的アウトカム (Overarching outcomes):
・図の最上部に位置する「全体的成果」は、他の全ての成果を統合するものであり、身体活動が「独立性 (Independence)」や「生活の質 (Quality of Life)」に貢献することが強調されている。
・この図は、高齢者が身体活動から期待する多様な成果を包括的に表しており、各成果が独立して存在するのではなく、相互に関連し合っていることを示している。
[結論] 高齢者が重要であると考える結果は数多くあり、それらの根底には生活の質を向上させたいという願いがある。結果のテーマのいくつかは過去の試験で頻繁に報告されている(例:身体的)が、そうでないものもある(例:社会的)。今後の研究者は、試験を計画し結果を定義する際に、高齢者の優先事項を認識し、それに対応する必要がある。意義/影響:本研究は、高齢者を対象とした身体活動に関する今後の試験における結果の選択を改善するのに役立つ。また、患者中心の研究という理念に沿って、この研究は高齢者の優先事項を基に、今後の結果の選択の基礎を築くことにもなる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
例えば、健康を求めている人に対して、ただ筋量の増大が効果として強調されたら、どう思うだろう。
また逆に、筋量の増大を求めている人に対して、ただ孤独の改善を効果として強調されたら、どう思うだろう。
1つの介入(例えば身体活動参加)に対して、さまざまなアウトカム領域が考えられる。
今回の抄読研究においては、12名の高齢者を対象とした質的研究によって、その領域の全体像を明らかにしてくれた。
一望すると、こんなにもたくさんのアウトカム領域があることが分かる。
そして、個々の患者さん、利用者さんによって、どのアウトカム領域を期待するか、ということは異なる。
その個々の鍵穴の違いに対して、適切なアウトカムを設定し、測定し、示すことが求められるわけだ。
手前勝手なアウトカム設定にならぬよう、意識したい。
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