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手術しなければよかった…。THA & TKA患者における手術後の後悔

📖 文献情報 と 抄録和訳

股関節と膝関節の一次置換術後の決断の後悔

📕Cassidy, Roslyn S., et al. "Decision regret after primary hip and knee replacement surgery." Journal of Orthopaedic Science (2021). https://doi.org/10.1016/j.jos.2021.10.007
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[背景・目的] 意思決定における後悔(Decision regret, DR)は、治療介入後の患者中心のアウトカム指標として認識されている。本研究では、股関節・膝関節全置換術(THA/TKA)後のDRを測定し、患者間の差異を評価し、考えられる寄与因子を探索することを目的とした。

[方法] 2017年2月から2018年12月の間に、前年中に人工関節置換術を受けることを決定し、その結果を振り返ることができたTHAおよびTKA患者群において、DR尺度を用いてDRを測定した。

✅ Decision regret Scaleとは?
・DRスケールは5つのステートメントから構成されている。
Q1. それは正しい判断だった。
Q2. その決断を後悔している。
Q3. もう一度やるなら同じ決断をする。
Q4. その決断は私に大きな損害を与えた。
Q5. その決断は賢明なものであった。
・これらの各記述を5段階のリッカート尺度(1-5)で採点し,DRの総得点(0-100の範囲)を決定した。

📕Brehaut, Jamie C., et al. Medical decision making 23.4 (2003): 281-292. >>> doi.

[結果] THA患者(4.8%(18/376人))と比較して、TKA患者(17.1%(56/328人))は中等度または重度の(Mod/Sev)DRを報告した割合が有意に多かった。逆に、THA患者(66.7%(251/376))と比較して、DRなしと報告したTKA患者の割合は、有意に減少した(42.1%(138/328))。多変量ロジスティック回帰分析では、関節置換のタイプ(TKA/THA)とOxfordスコアの変化がDRの有意な予測因子であり、性別、年齢、BMI、ASAグレードは有意な関連はなかった。TKA患者はTHA患者に比べ、Mod/Sev DRを持つ可能性が2倍以上高かった(オッズ比=2.33(95%CI 1.24-4.39))。

術後1年間の疼痛と機能の改善度が低い患者(オックスフォードスコアで測定)は、DRのレベルが高いことを報告した。

[結論] TKA患者はTHA患者と比較して、術後1年目にDRが大きいと報告する傾向が有意に強かった。TKAとTHAでは、DRが大きいほどOxfordスコアが低いことが示された。人工関節置換術患者の術後DRを軽減するための意思決定支援システムの使用は、特に膝関節置換術患者について検討されるべきであろう。

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後悔先に立たず
覆水盆に返らず

後悔しても、それはもう遅いこと。
そういう諺は多い。
今回抄読した研究の結果、何らかの後悔を知っている人がTHAでは33.3%、TKAでは57.9%もいるのだという。
この場合の後悔も、「盆に返らず」、という性質のものだろうか。

僕は、その因子によって違うと思う。
手術後の後悔は、大きく3つの要因の方向性がある気がした。

①手術因子
②性格
③術後リハ因子

①は手術後のアライメント変化やその他周術期における問題事項。
これは、後悔先に立たず、の可能性が高い。
②は、そもそも変化が苦手な方や、どのような手術だったとしても、後悔してしまう性格はありそうだ。
この場合にも、どうあっても後悔してしまう可能性はある。
気にしたいのは、③だ。
術後成績が振るわず、患者が後悔したとする。
その成績には、Opeだけではなく、術後リハももちろん影響を及ぼしている。
そして、その部分での後悔は、術後にも取り返せる、どこからでも取り返せるものかもしれない。

患者が抱える手術への後悔。
そこに対して、冷たく他人事でいるより、少しでも一緒に前に進むために、自責的な心を忘れたくはない。

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