Obesity paradoxは、骨盤骨折患者にも当てはまる
▼ 文献情報 と 抄録和訳
肥満度の低さは骨盤・寛骨臼骨折患者の死亡率増加と関連する
Waseem, S., et al. "Low body mass index is associated with increased mortality in patients with pelvic and acetabular fractures." Injury (2021).
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[ハイライト]
-肥満パラドックス(obesity paradox)は骨盤および寛骨臼の骨折にも当てはまる
-骨盤または寛骨臼の骨折患者では、BMIの低さが死亡率の上昇と関連している
[背景・目的] 骨盤および寛骨臼の骨折は、若年者の高エネルギー外傷や骨粗鬆症の骨の脆弱性骨折の結果として起こることが多い。これらの骨折は、生命を脅かしたり、人生を変えてしまうような怪我である可能性がある。この患者グループの肥満度(BMI)と死亡率を比較したデータは公表されていない。本研究の目的は、低BMI(18.5未満)がこれらの損傷を受けた患者の罹患率と死亡率の予測因子であるかどうかを確認することである。
[方法] 対象者および方法4.5年間(2015年8月~2020年1月)にレベル1の大外傷センター(MTC)に紹介された骨盤または寛骨臼の骨折患者1033人のうち、入院した患者全員のデータをレトロスペクティブに分析した。人口統計、損傷パターン、手術介入、合併症に関するデータを収集しました。低体重(BMI<18.5)の患者とそうでない患者の比較を行いました。院内および退院後の合併症として、肺塞栓(PE)、深部静脈血栓症(DVT)、イレウス、感染症、減量、6ヵ月後の死亡率などを記録した。結果骨盤または寛骨臼の骨折でMTCに入院した569人の患者を分析対象とした。
[結果] 低体重の患者は、他のBMIグループと比較して、院内死亡率(p = 0.019)と受傷後6ヵ月目の死亡率(p = 0.039)が統計的に有意に増加した。罹患率については、これらのBMIグループ間で統計的有意性は認められなかった。DVT(p=0.712)、PE(p=0.736)、イレウス(p=0.149)の罹患率を比較しても、これらのBMIグループ間には統計的有意性は認められなかった。共変量解析では、年齢と傷害のエネルギーを補正した後、BMIが低いと院内死亡率が3倍になることが示された(補正OR 3.028、95%CI 1.059-8.659)。
[結論] 本研究は、低体重の骨盤・寛骨臼骨折患者の死亡率が統計的に有意に増加することを示した初めての発表である。外科医は、これらの患者に対する適切な周術期の最適化を慎重に検討すべきである。BMI値の低さと外傷への対応の影響については、さらなる調査が必要である。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
『Obesity paradox』とは・・・?
太っている人と、太っていない人、長生きするのはどちらですか?
1+1=2と同じくらいの難易度で、即「太っていない人」と答えるだろう。
だからこそ、われわれはいつも、より効率的・効果的な減量方法を探っているのだろう(参考になるサイト)。
だが、慢性腎不全者、透析患者においては、その直感に矛盾が起きる。
太っているほど、死亡率が低いという事実が明らかになったのだ。
Speakman, et al. Blood purification 29.2 (2010): 150-157. >>> doi
そして、今回の論文はその『Obesity paradox』が骨盤骨折患者にも当てはまったという事実を報告している。
Less is moreは、高齢骨盤患者には該当しないようだ。
僕たちは、肥満以上に低体重に対して敏感になった方がいいのかもしれない。
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