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日本人高齢者を7年追跡。フレイルの自然史的軌跡

📖 文献情報 と 抄録和訳

地域在住日本人高齢者のフレイルの自然史的軌跡

📕Tange, Chikako, et al. "Natural History Trajectories of Frailty in Community-Dwelling Older Japanese Adults." The Journals of Gerontology: Series A 77.10 (2022): 2059-2067. https://doi.org/10.1093/gerona/glac130
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[背景・目的] 平均寿命と健康寿命の間には依然として大きな隔たりがある。このギャップを克服するためには、フレイル発症の自然史を理解し、フレイルの予防と治療を行うことが必要である。本研究では、グループベースの多重軌道モデリングを用いて、5つのフレイル評価要素の軌跡を明らかにした。

[方法] 地域在住の高齢者845名(65-91歳、男性433名、女性412名)を対象とし、少なくとも3回、縦断的なフレイル評価を行った。平均追跡期間(±SD、範囲)は7.1年(±2.3、3.8-11.3)であった。各Waveにおいて、身体的虚弱は、Cardiovascular Health Studyの基準を部分的に修正した以下の5つの要素について評価した。

✅ 5つの要素の定義
①体重減少(Shrinking):過去2年間の体重減少率が5%以上と定義
②筋力低下(Weakness):最大握力が男性で26kg未満、女性で18kg未満であること
③疲労困憊(Exhaustion):Center for Epidemiologic Studies Depression Scale の「抑うつ感情」の2項目について、過去1週間に「ほとんどない、または全くない(1日未満)」以外の回答をしたこと
④緩慢(Slowness):快適な歩行速度<1.0m/sまたは歩行障害と定義
⑤低活動(Low activity):余暇の身体活動のうち、男女別で最低20%と定義

グループベースの多重軌道モデリングを用いて、5つの虚弱要素に関して特徴的な軌道をたどるサブグループを同定した。

[結果] 5つのフレイル軌跡グループが同定された:
● G1:筋力低下重視のフレイル進行グループ(グループ1[G1]:10.9%)
● G2:頑健維持グループ(グループ2[G2]:43.7%)
● G3:疲労困憊重視のプレフレイルグループ(グループ3[G3]:24.3%)
● G4:フレイル進行グループ(グループ4[G4]:6.7%)
● G5:低活動重視のプレフレイルグループ(グループ5[G5]:14.4%)
Cox比例ハザードモデル解析の結果、G1、G4、G5は、性・年齢調整後、死亡リスクが有意に高かった(G2は基準群)。

[結論] 虚弱の自然史に基づき、5つの特徴的な軌跡群は、ある人は頑健さを保ち、ある人はプレフレイルにとどまるか、主に身体運動能力の低下により進行することを示した。したがって、これらの進行性フレイルグループに属する個人を特定し、各グループの特徴に応じた介入を行うことが有益であると考えられる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

前向きコホートでこれだけ大規模な研究。
しかも、日本人データ🇯🇵。
さらに、The Journals of Gerontology-Series A。
紛れもなく、神論文といえよう。

今回の論文で提示されているように、各グループごとの介入戦略が明らかになることが次のステップだろう。
G2には、G2の、G5にはG5の課題や次の一歩がある。
現状のラインを見定め、その次の一歩に向けた提案、サポートができるよう勉強していく。

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