半球間促進!?常識とは逆行する現象
📖 文献情報 と 抄録和訳
半球間抑制と並行した逆説的な促進作用
Belyk, Michel, et al. "Paradoxical facilitation alongside interhemispheric inhibition." Experimental brain research 239.11 (2021): 3303-3313.
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
✅ 前提知識:半球間抑制とは?
- 「半球間抑制」とは、左右の脳が抑制し合う神経現象のこと。
- 左右の大脳皮質は脳梁とよばれる情報の道でつながり、情報のやり取りをしながら巧みに混乱を防いでいる。
- 片麻痺になると、「半球間抑制」が手足の麻痺の改善に悪影響を及ぼすことがある。
- 麻痺のない側の手足を過剰に使用しすぎると、麻痺側の手足の働きを抑制してしまう。
🌍 参考サイト >>> site. 📕 Carson, 2020 >>> doi.
[背景→結論] 経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いた神経生理学的実験により、脳梁の運動野の機能を探ろうとしている。一次運動野は脳梁を経由して、反対側の半球の相同領域に正味の抑制的影響を与える投射を行う。半球間抑制(IHI)実験は、この抑制経路を探るものである。片方の半球の運動皮質にテスト刺激(TS)を与えると標的筋の運動誘発電位(MEP)が誘発され、反対側の半球の同相領域に条件刺激(CS)を与えるとTSの効果が調節される。CS-MEPは対側運動野がどれだけ効果的に刺激されたか、つまり半球間抑制の大きさを示す信頼できる指標となるはずなので、CS-MEPが大きければIHIが増加すると予想した。しかし、CS-MEPsが大きいと半球間抑制が減少する傾向が強く、極端な場合、正味の効果が促進されることが観察された。この驚くべき効果は大きく、系統的であり、ほぼすべての参加者に観察された。この現象の根底にあるメカニズムについて、今後の研究の指針となるようないくつかの仮説を概説した。
✅ 図. ペアコイル実験。ベースライン刺激試験(左図)では、右半球に与えた試験刺激により左手の運動誘発電位(MEP)が誘発され、これがベースライン測定として記録される。実験刺激試行(右図)では、同じ実験刺激の前に左半球に条件刺激を与え、より小さなMEPを誘発させる。試験手からの MEP(TS MEP)と条件付け刺激からの MEP(CS MEP)は、各磁気刺激が一次運動野をどれだけ効果的に活性化したかを測定する。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
常識とは、時に解像度が荒い場合がある。
灰色に見える1つのものも、もっと近づいてみると、白と黒で構成されているかもしれない。
今回の研究は、半球間抑制という常識の解像度が荒かったことを示唆した。
すなわち、刺激の強度をあげていくと、抑制ではなく、逆に「半球間促進」されることを明らかにした。
これは、イノベーションを起こす可能性のある研究だと思った。
この研究の結果を臨床現場に翻訳すると、何が起こるか。
非麻痺側の過剰使用もむしろ「善」かもしれない。
たとえば、非麻痺側をしっかり使った後で、麻痺側の練習をすることが効果的だったり。
CI療法は、「半球間促進」の可能性を奪う介入である可能性だったり。
常識は、少し変わるだけでも、枝葉が大きく揺れ動く事になる。
「半球間促進」、覚えておきたい。
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