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移乗動作を分解する。動作全体のサブタスクという概念

📖 文献情報 と 抄録和訳

亜急性期脳卒中患者におけるベッド-車椅子移動の構成サブタスクの難易度。コホート研究

📕Kitamura, Shin, et al. "Difficulty of the subtasks comprising bed-wheelchair transfer in patients with subacute strokes: A cohort study." Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases 31.10 (2022): 106740. https://doi.org/10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2022.106740
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※ Connected Papersとは? >>> note.
🔑 Key points
🔹ベッドと車椅子の移動は、複数のサブタスクで構成されている。
🔹移乗は車いすを使用する脳卒中患者のADLに不可欠である。
🔹各サブタスクの難易度を知ることは、練習が必要なサブタスクを特定し、優先順位をつけるために重要である。
🔹移乗の準備に関連するサブタスクは入院時に困難であった。
🔹入院中のスキル習得の過程で、準備作業が困難となる傾向が顕著であった。

[背景・目的] ベッド・車椅子間の移乗は複数のサブタスクから構成されているため、各サブタスクの難易度を把握し、練習すべきサブタスクの特定と優先順位付けを行うことが重要である。本研究では、入院時のベッド・車椅子移乗を構成するサブタスクの難易度と入院中のサブタスク技能の再獲得について検討することを目的とした。

[方法] 本研究は、単一施設の前向きコホート研究である。亜急性期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者(平均年齢69.8歳)のうち、入院時に車椅子を使用していた137名を連続登録した。移乗を構成する25のサブタスクのそれぞれの自立度をベッド-車椅子移乗タスク評価票を用いて2週間ごとに評価した。入院時にサブタスクが自立していた患者と、自立していなかったが入院中に自立した患者の人数を調査した。


[結果]
■ 入棟時に最も困難だったサブタスク
🥇「ベッドの手すりを操作する」(18.3%)
🥈「車椅子を移動のために準備する」(19.3%)
🥉「車椅子をベッドへの移動に適した場所に誘導する」(20.6%)
④「靴/ブレースを着用する」(24.8%)
⑤「立ったまま回転する」(25.5%)

スライド2

✅ 図1. 入院時のサブタスクの難易度 入院時のベッドと車椅子(WC)間の移乗を構成する各サブタスクについて、「N, not applicable」と判定された人を除外し、「A, independent」と判定された人の割合を示したもの。割合が少ないほど難易度が高く、多いほど難易度が低いことを示す。

■ 入棟時に非自立だったサブタスクの学習難易度
🥇「移乗のための車いすの準備」(32.1%)
🥈「ベッドへの手すりの操作」(32.9%)
🥉「ナースコールボタンを押す」(36.4%)
④「(車いす→ベッド)ナースコールボタン」(36.7%)
⑤「車いすブレーキをかける」(37.3%)
・自立した人は「車いすのブレーキをかける」「ベッドへの手すり操作」が最も難しかったことが分かった。

スライド3

✅ 図2. サブタスクスキルの再獲得の難易度 ベッドと車椅子(WC)間の移乗を構成する各サブタスクにおいて、入院時に「B、監視または言葉による介助が必要」または「C、介助が必要」と判定された者のうち、評価終了時に「A、自立」と判定された者の割合を示したもの。なお、入院時および評価終了時に「N, not applicable」と判定されたものは分析から除外した。割合が少ないほど難易度が高く、多いほど難易度が低いことを示す。

[結論] 入院時の移乗準備に関するサブタスクは困難であり,その傾向は技能習得過程でより顕著になった.

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ピラミッドストラテジーMECEという論理的思考のフレームワークがある。(関連noteにいくつかの例を提示)。
■ ピラミッドストラテジーとはある高次の項目を、それを構成する複数の下位項目に分解し理解すること。
MECEとは、全体を構成する複数の項目を「漏れなく、重なりなく、網羅的に」理解すること。
今回の研究では、移乗動作のサブセットを網羅的に示していて、これはピラミットストラテジー+MECEと考えることができる。
このような知識が理解できていれば、臨床において移乗動作の問題を論理的に紐解いていくことが可能となる。

いきなりだが、ビジネス全般においてWBS(Work Breakdown Structure)と呼ばれる概念がある。

WBSとは「作業を分解して構造化する手法」です。
プロジェクト管理の基礎であり、スケジュール作成のもとになります。
🌍 参考サイト >>> site.

この考え方は、今回のサブセットの考えと同義に近く、また名前が気に入った。
🔹Breakdown ≒ ピラミッドストラテジー的
🔹Structure ≒ MECE的
これをADL動作に対して当てはめるとすれば「ADL breakdown structure;ADLBS」とでもいおうか。
さらに、これはどんな階層間にも当てはめることができる。
1つの動作(motion、例えば立位保持)に対しての筋力低下などのImpairmentレベルの構成要素を考える場合には「Motion breakdown structure;MBS」
1つの機能低下「impairment, 例えば筋力低下」に対しての廃用性、末梢神経麻痺などPathologyレベルの構成要素を考える場合には「Impairment breakdown structure;IBS」
思考過程の階層間を行き来するための用語を手に入れた。
チャンクアップする場合には、SynthesizeやCompositeなどを使えばいいか、おいおい考えよう。

⬇︎ 関連 note✨

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