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運動学習とは、髄鞘が建築されること
📖 文献情報 と 抄録和訳
運動学習により、学習軸索に間欠的に生じる髄鞘形成の動的パターン
📕Bacmeister, Clara M., et al. "Motor learning drives dynamic patterns of intermittent myelination on learning-activated axons." Nature Neuroscience 25.10 (2022): 1300-1313. https://doi.org/10.1038/s41593-022-01169-4
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🔑 Key points
🔹学習には新たなオリゴデンド(アストロサイトより少ない突起を持つグリア細胞)形成が必要であるが、学習中にミエリンパターンがどのように変化するかは不明である。
🔹Bacmeisterらは、運動学習が、行動的に活性化された軸索上の髄鞘に相特有の変化を引き起こし、それが運動性能と相関することを示し、髄鞘の形成が学習に関与していることを示唆した。
[背景・目的] ミエリンの可塑性は、新しく形成されたオリゴデンドロサイトと既存のミエリン形成のパターンを再構築することによって生じる。ミエリンのリモデリングは、神経細胞の活動の変化に応じて起こり、学習や記憶に必要である。しかし、行動によって誘発される神経細胞の活動と、回路特異的な髄鞘の変化との関連は不明なままである。
[方法] 本研究では、マウスを用いた縦断的なin vivo 2光子イメージングと学習活性化ニューロンの標的標識法を用いて、器用なリーチタスクの学習中に個々の皮質軸索上で断続的な髄鞘形成のパターンがどのように変化するのかを探った。
[結果] 行動によって誘発されるミエリン可塑性は、学習によって活性化された軸索をターゲットとし、マウスの一次運動野の皮質層全体で段階的に生じることを明らかにした。学習時には、ミエリン鞘が収縮し、ランビエの節が長くなる。運動学習後、新たに形成されたミエリン鞘が加わることで、連続的に伸びるミエリン化の数が増加する。計算機シミュレーションにより、運動学習によるミエリン可塑性は、軸索の伝導速度を最初は遅くし、その後速くすることが示唆された。最後に、ミエリンと結節のダイナミクスの大きさとタイミングが、運動学習中の行動能力の向上と相関していることが示された。
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[結論] このように、学習によって生じる、回路に特異的な髄鞘の変化は、運動学習中の神経回路における情報伝達に寄与している可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
運動学習って、よく考えると不思議なことだ。
運動前と運動後、その人は見た目なにも変わっていないのに、運動ができるようになっている。
これは、『具体的に何が変化した』のだろう。
何かが変わったから、運動ができるようになった、のだろう?
じゃあ、その『何か』とは、なにか?
これまでにも知っていた1つの回答は『活動場所の変化(Site shift)』だ。
例えば、サッカーのプロ(ネイマール)は素人と比べてドリブルのさいの脳皮質の活動が極めて少なく、また活動が深部に寄っていることが報告されている(📕Naito, 2014 >>> doi.)。
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一方、本研究で示された、新たな回答は『同一回路の速度(Speedup)』。
そして、その変化は跳躍伝導という生理学的な現象によって裏打ちされる。
運動学習によって新たな髄鞘が形成されることで、その回路における速度が増大するわけだ。
一見すると何も変化が起こっていないように見える人の頭脳中で、目まぐるしい建築が起こっているのかもしれない(今回の研究はマウスだが)。
そう考えると、脳卒中後の回復の病態レベルの理解として、最近『超適応』(site shift的)が注目されているが、か細く残っている回路の髄鞘形成によっても、支えられているのかもしれない。
何にせよ、回復をあきらめなくていい理由が1つ増えてよかった。
今後の興味として、Site shiftを引き起こしやすい介入と、Speedupを引き起こしやすい介入が違うかは気になる。
運動学習の仕組み、・・・面白い。
⬇︎ 𝕏での投稿✨
📕運動学習とは「髄鞘」が建築されること
— 理学療法士_海津陽一 Ph.D. (@copellist) November 6, 2022
・ #nature_neuroscience
・運動学習による運動皮質の変化検証
・運動学習により既存髄鞘の収縮+新規髄鞘の形成
→軸索の伝導速度が速くなった
運動学習には髄鞘形成による神経伝導速度の増大(Speedup)が関わっているのですね😲#運動学習 #髄鞘 #運動皮質 pic.twitter.com/erzB2WPXAt
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