理学療法士のAI知識
📖 文献情報 と 抄録和訳
医療およびリハビリテーションにおける人工知能の応用に関する理学療法士の知識と態度:横断的研究
[背景・目的] リハビリテーション分野における人工知能(AI)の利用が急速に拡大している。そのため、理学療法士(PT)が臨床現場でAI技術をどのように捉えているかを理解する必要がある。目的:本研究では、複数の説明要因に基づいて、リハビリテーションにおけるAIアプリケーションに関するPTの知識と態度を調査することを目的とした。
[方法] 4つのセクションに分かれたウェブベースのGoogleフォーム調査がデータの収集に使用された。合計317人のPTが自主的に研究に参加した。
[結果]
■ PTのAI知識
317 人の理学療法士のうち、
・医療分野全般:238 人 (75.1%) が医療分野全般におけるAI 知識があると回答した。
・リハビリテーション分野:121 人 (38.2%) がリハビリテーション分野におけるAI 知識があると回答した。
■ 理学療法士のAI知識有無の関連因子
・性別:男性PTは女性PTよりAIに関する知識が高い(オッズ比[OR] 2.43、95% CI 1.53-3.87;P<.001)
・経験年数:多経験PT(≧10年)は少経験PT(<10年)よりAIに関する知識が高い(OR 1.79、95% CI 1.11-2.87;P=.02)
・学歴:博士, 修士PTは学士PTよりAIに関する知識が高い(OR 1.68、95% CI 1.05-2.70;P=.03)
・AI使用経験:使用経験有PTは使用経験無PTよりAIに関する知識が高い(OR 1.79、95% CI 1.11-2.87;P=.02)
学術分野以外の職場で働き、経験年数が10年未満のPTは、AIに対して肯定的な態度を示していた。
[結論] AI技術は、臨床業務の自動化を通じて、多くの理学療法の実践に統合されている。したがって、PTはAI技術の広範な発展を活用し、AIアプリケーションに関する知識を深め、その実践を向上させることが推奨される。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
人間には、『過剰一般化バイアス(over generalization)』と呼ばれるバイアスがある。
過度の一般化とは認知の歪みの一種で、ある出来事から得た経験が他の出来事にも当てはまると思い込むことである。
例えば、一人一人、カラーの違う病院や、臨床環境、人生経験の中で過ごしている。
そして、一人一人は、一度には、その環境や人生経験しか経験し得ない。
にも関わらず、自分の目の前で起こったことや経験したことが、「みんなもそうだよね」と思ってしまうのだ。
ぼくは、最近一生懸命にChatGPTの勉強をしている。
だから、当然のことなのだが、ChatGPTの知識はついてくるわけだ。
そして、そんな人生経験をしている自分にとっては、『みんな、ChatGPTのこと知っているよね。知識持っているよね』と、そんな常識のラインに立ってしまうのだ。
そんな、個々の常識ラインを整えるためにも、今回の抄読研究はとても役立つと思う。
たくさんの理学療法士にアンケート調査をした結果、リハビリテーション分野におけるPTのAI知識があると答えた人は38.2%と3人に1人くらいだった。
「みんなもそうだよね」ではなかったのだ。
だからこそ、職場においてAI導入を進めていく際には、注意しなければならない。
「みんなも知っているよね」のラインからではなく、「みんな、あまり知らないよね」のラインから始める必要がある。
その上で、注目すべき結果の1つとして『AI使用経験とAI知識の関連』があった。
鶏が先か卵が先かはわからないのだが、例えば自分の望むにせよ望まないにせよ、ある日職場にAI導入環境が出現したとしたら、そこから触ってみて、「おっ!」と思って、勉強したりして、知識がつく、自信がつく、という矢印もあるのではないだろうか。
2025年は、その矢印が機能する事を信じて、職場におけるAI導入に向けた一歩を踏み出す1年にしていきたい。
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