📖 文献情報 と 抄録和訳 非特異的慢性腰痛患者における運動アドヒアランスを妨げる要因と促進する要因:定性的エビデンスの系統的レビュー
📕Gilanyi YL, Shah B, Cashin AG, et al. Barriers and enablers to exercise adherence in people with nonspecific chronic low back pain: a systematic review of qualitative evidence. Pain. 2024;165(10):2200-2214. https://doi.org/10.1097/j.pain.0000000000003234 🔗 DOI , PubMed , Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers ※ Connected Papersとは? >>> note .
✅ 前提知識:運動アドヒアランスとは? ・アドヒアランスとは,人が何かに対して愛着を感じ,それを継続するということを表す概念であり,運動アドヒアランスとは運動を継続するという強い意志を示す概念である。 ・コンプライアンスとの違い:コンプライアンスは、医療従事者の指示に従って患者が治療を受けることを意味し、受動的な参加を示する。一方、アドヒアランスは、患者が治療方針の決定に賛同し、積極的に治療を受けることを意味し、能動的な参加を示す。
📕大工谷新一, 他. 理学療法学 30.2 (2003): 48-54. >>> doi . 🌍 参考サイト >>> site . [背景・目的] 運動は慢性腰痛(chronic low back pain, CLBP)の第一選択の治療法であり、短期的には痛みの軽減と障害の改善をもたらす。しかし、運動の有益性は時間の経過とともに減少するが、その理由として長期的な運動の継続が欠如していることが考えられる。本研究の目的は、CLBP患者の認識と信念を統合し、運動アドヒアランスに対する障壁と促進要因を特定することである。
[方法] 我々は、慢性腰痛患者の運動継続に影響を与える要因を調査した質的研究論文を特定するため、CENTRAL、Embase、CINAHL、SPORTDiscus、PubMed、PsycINFO、Scopusのデータベースを創設から2023年2月28日まで検索した。データの分析には、テーマ分析と理論的ドメイン・フレームワークを組み合わせたハイブリッドアプローチを用いた。我々は、Critical Appraisal Skills Programme チェックリストを使用して方法論の質を評価し、Confidence in the Evidence from Reviews of Qualitative Studies を使用して生成されたテーマの信頼度を評価した。
[結果] 23件の論文(n = 21件の研究)が対象となった(n = 677人の参加者)。運動の継続に影響を及ぼす主なテーマは4つあった。すなわち、(1) 運動、痛み、身体、(2) 心理的要因、(3) 社会要因、(4) 外的要因 である。
この図は、非特異的慢性腰痛患者における運動継続の「障害(Barrier)」と「促進要因(Enabler)」を、Theoretical Domains Framework(TDF)に基づいて分類したものである。 ■ 運動、痛み、身体 (Exercise, pain, and the body) ・障壁と促進要因 :痛みの変化、併存疾患、運動の生理的効果、健康感の向上などが含まれる。運動による痛みの悪化が障害となる一方、運動がもたらす健康感の向上は促進要因として働く。・TDFドメイン :「強化 (Reinforcement)」「スキル (Skills)」「感情 (Emotion)」が関連する。例えば、痛みの軽減が得られることで運動が強化される。■ 心理的要因 (Psychological factors) ・障壁と促進要因 :自己効力感、動機付け、運動の価値観、健康信念、楽しさなどが含まれる。運動に対するポジティブな信念や価値観があれば促進され、自己効力感が低ければ障害になる。・TDFドメイン :「能力に関する信念 (Beliefs about Capabilities)」「目標 (Goals)」「意図 (Intention)」「感情 (Emotion)」などが関連する。■ 社会的要因 (Social factors) ・障壁と促進要因 :助言やサポート、社会環境が含まれる。家族や友人のサポートや、良好な社会環境が運動継続の促進要因となる。・TDFドメイン :「社会的影響 (Social influences)」「知識 (Knowledge)」「環境やリソース (Environmental context and resources)」が関連する。例えば、サポートがあることで社会的影響が強まり、運動継続が促進される。■ 外部要因 (External factors) ・障壁と促進要因 :物流(道具)、リソースへのアクセス、物理的環境、運動の種類が含まれる。運動施設へのアクセスがしやすい場合や、天候が良い場合は促進要因になるが、逆の場合は障害になる。・TDFドメイン :「環境やリソース (Environmental context and resources)」「社会的アイデンティティ (Social identity)」が関連する。
これらのテーマには、運動アドヒアランスの障壁および促進要因となる16のサブテーマが含まれていた。障壁および促進要因に関する個人の経験は、運動アドヒアランスの障壁または促進要因となり得る影響因子が運動前、運動中、運動後の状況に特異的に存在する可能性があるという観点から、最も適切にスペクトラムとして表現された。
[結論] これらの知見は、慢性腰痛症患者の運動アドヒアランスおよび最終的には治療結果の改善に役立つ可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか? 理屈の複雑さは、思想の脆弱さの裏返しでしかない。 突き詰めれば生きるとは、思索することではなく、行動することなのである。
【夏川草介】スピノザの診察室 身体に良い食事法を知っていても、実際にその食べ物を口に入れなければ現実は変わらないのと同様に、良い運動方法を知っていても、実際に運動しなければ現実は変わらない。 現実を変えるのは、実践なのだ。
今回の抄読研究は、慢性腰痛者における『知識→実践(アドヒアランス)』 の障壁、促進要因を列挙してくれた。 これらの項目のそれぞれに対して、どんな働きかけができるだろうか。 その部分は行動変容の知識、技術を深めていかなければならないと感じている。 そして、最近では運動アドヒアランスの測定ツールも開発されている(関連note参照)。 例えば、退院支援としての自主トレーニングの指導と運動アドヒアランスへの介入を両輪として行えば、退院後の運動定着率に影響を及ぼせる かもしれない。 どうやら、まだまだやれることはある!
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