足関節捻挫から1年。近位関節障害の疫学
📖 文献情報 と 抄録和訳
足関節捻挫後の治療的運動がその後の膝、股関節、腰椎の損傷発生に及ぼす影響について
[背景・目的] 本研究は、足関節捻挫後1年間に発生する膝、股関節、腰椎障害の負担と、その負担に及ぼす治療的運動(Therapeutic exercise, TE)の影響について検討することを目的とした。
[方法] 2010年から2011年にかけて軍医療システムで足関節捻挫と診断された計33,361人を1年間追跡調査した。捻挫後に負った膝、股関節、腰椎のケアシーキングの有病率を確認した。人口統計学的グループ、足関節捻挫のタイプ、およびTEの使用と近位部損傷の割合との関係をCox比例ハザードモデルを用いて評価し、属性によるハザード率の効果修飾を判定した。足関節捻挫に対するTEの近位関節損傷率への影響については、Kaplan-Meier生存分析を用いて評価した。
[結果] 全コホートの20.5%(n=6848)が近位部位を損傷した。具体的には、膝(n=3356)10.1%、股関節(n=973)2.9%、腰椎(n=3452)10.3%の損傷であった。最初の捻挫の後、TEを受けたのはコホートの半数以下であった。TEを受けた患者は、その後の膝関節(HR = 0.87、95%信頼区間[CI] = 0.80-0.94)、股関節(HR = 0.68、95%CI = 0.58-0.79)または腰椎(HR = 0.82、95%CI = 0.76-0.89)損傷が少ないことが判明した。
[結論] 足関節捻挫の治療を受けた人の5人に1人が、翌年に近位関節の傷害を経験していた。足関節捻挫の初回治療のためのTEは、近位部損傷の診断の可能性を減少させ、足関節捻挫後の職場復帰やスポーツプロトコルの治療計画において考慮されるべきものであった。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
『隣接関節障害』という概念がある。
SuperHumanも2019〜2022年(現在も)にかけて精力的にこの隣接関節障害の一部に光を当てようとした。
それが、『PHFKP, post-hip fracture knee pain』である。
大腿骨近位部骨折後、膝関節に疼痛を訴える症例はしばしばいる。
それは、大腿骨近位部骨折により大腿骨形態が変化し、膝関節アライメントに影響を及ぼすことが考えられた(詳細は以下note、Twitter参照)。
PHFKPでは、股関節→膝関節の隣接関節障害だった。
今回の文献においては、足関節→膝関節/股関節/腰椎の関係性を明らかにした。
その結果、足関節からは、膝関節と腰椎に大きな影響が及ぶようだった。
不思議と、股関節への影響は少なかった。
なぜ、膝関節と腰椎なのだろう・・・。
これは完全に推測だが、『関節可動域』が関係していそうな気がする。
股関節は、球関節であり、ご存知の通り可動域が大きい。
一方、膝関節、腰椎はとなると、特に前額面においては可動域が狭い。
そうなると、小さな変化からも大きな影響が及ぶ可能性が高くなるのではないか?
なんにせよ、荷重が複数の関節で分担している以上、1つの関節異常は他関節に影響を及ぼす。
常に、その視点を持ちながら、当該関節に望みたいものだ。
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