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サッカースパイクの科学


📖 文献情報 と 抄録和訳

天然および人工の競技面における横方向の牽引力に対するサッカー用スパイクのアウトソール構造の影響

📕Loud, Danyon, et al. "Effect of Soccer Boot Outsole Configuration on Translational Traction Across Both Natural and Artificial Playing Surfaces." Orthopaedic Journal of Sports Medicine 12.8 (2024): 23259671241259823. https://doi.org/10.1177/23259671241259823
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[背景・目的] サッカー用スパイクは、特定の表面において選手に優れたグリップ力を提供し、スリップを最小限に抑え、選手のパフォーマンスを向上させるために、異なるスタッドパターンと構成で製造される。しかし、過剰なグリップ力は、特に前十字靭帯断裂など、足部の固定による負傷につながる可能性がある。目的/仮説:この研究の目的は、天然芝および人工芝(AG)の両方の競技面で、4つの異なる方向に動く5種類のアウトソール構成の並進牽引特性を調査することである。スタッドの長さが長い、または非対称の形状をしたスタッドは、特定の競技面に対して推奨されるスタッド構成と比較して、より高い牽引係数をもたらすという仮説を立てた。

[方法] 研究デザイン:記述的ラボ研究である。方法:特注の試験装置を使用し、天然芝と人工芝の両方の競技面で、前方・後方・内側・外側に動く5種類のサッカーシューズの並進牽引力を記録した。牽引力に対するアウトソール形状の影響を判定するため、3要因分散分析を実施し、異なるアウトソール形状をコントロールと比較するために事後Tukey分析を行った。

この図は、天然芝で行われた牽引実験のための装置を示している。

✅ 5種類のサッカースパイクとその特徴
■ FGC(Firm-Ground Circular-Shaped)

・モデル: Nike Tiempo Legend 9 Elite FG
・特徴: 丸型のスタッドが配置されており、固い天然芝用。比較的均等な牽引力を提供するが、深い草にはあまり適さない。
■ FGB(Firm-Ground Blade-Shaped)
・モデル: Nike Mercurial Vapor 14 Elite
・特徴: 刃型のスタッドを持ち、直線的な加速に適したデザイン。深く「かみつく」ような牽引力を提供し、特に直線的な動きで効果的。
■ SG(Soft-Ground)
・モデル: Nike Tiempo Legend 9 Elite SG
・特徴: 長いスタッドを使用し、柔らかい地面や雨天時の滑りやすい天然芝に対応。芝に深く刺さり、強力なグリップを提供するが、硬い面では不安定になる。
■ AG(Artificial Grass)
・モデル: Nike Tiempo Legend 9 Elite AG
・特徴: 小型のスタッドを多数配し、人工芝用に最適化。高い牽引力を維持しながらも、足の固定を防ぐため、怪我のリスクを抑える設計。
■ TF(Turf)
・モデル: Nike Phantom GT2 Pro
・特徴: 平たいゴム製の突起を持ち、硬い土や人工芝のような平らな面に対応。滑りやすい面でのパフォーマンスはやや劣るが、使いやすさが高い。

[結果-考察] SGスパイクは天然芝で高い牽引力を提供するが、過度な固定により怪我のリスクが高まる可能性があった。TFスパイクはどの条件でも低い牽引力を示し、滑りやすさが懸念された。人工芝では、AGおよびFGBのスパイクが安定したパフォーマンスを示した。

[結論] 一部のサッカー用スパイクは、推奨される構成と比較して、より高いトラクション値を示すことが明らかとなった。臨床的関連性:この結果は、異なる競技面でのスパイク選択の重要性を強調している。トラクション値が高い場合、過剰なトラクションと足の固定により、選手の負傷リスクが高まる可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前に、人工芝 vs. 天然芝での下肢損傷率のレビュー論文を抄読した。
その結果としては、以下のようなものだった。

・人工芝と天然芝で下肢損傷率を比較
人工芝の傷害率が高い vs. 天然芝が高い↓
🔹全般:35.5%(11/31) vs. 12.9%(4/31)
🔹膝関節:30.8%(8/26) vs. 15.4%(5/26)
🔹足関節:58.3%(14/24) vs. 12.5% (3/26)
人工芝は特に足関節周囲への弊害が大きい可能性

だが、芝の環境は、合いの手の片側でしかない。
もう片方の手に該当するところの、足側の環境だって重要だ。
むしろ、競技者側にとって可変的なのは、足側の環境でしかないとも思える。
今回の抄読研究では、そんな足側のサッカースパイクの種類による影響を検討している。

その結果として、人工芝、天然芝に対して、各種のサッカースパイクは牽引力の特徴を示した。
総括していえることは、人工芝、天然芝といった路面環境に応じて、スパイクの履き替えが推奨されるということ。
相手に応じた話し方があるように、環境に応じたスパイクがある。
興味深い一論文であった。

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