📖 文献情報 と 抄録和訳
時間の経過とともに、エビデンスは変化する
[レビュー概要]
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
プロテウスは、ギリシャ神話の神。
「海の老人」と呼ばれ、予言の能力を持つが、その力を使う事を好まないため、プロテウスの予言を聞くためには、捕まえて無理矢理聞き出さねばならない。
しかし、他の物に変身する能力をも有するため、捕まえること自体が至難の技である。
このように変化するものとして、エビデンスが描かれている。
今回の論文を読んで、プロテウス現象は、2つの事象から構成されていることを知った。
それは、『誤り』と『未熟』である。
まず、誤りとは、何らかの原因によって結果や結論が誤っている研究成果のことである。
多くの場合、それは研究者のバイアスによって生じうる。
地動説を捻じ曲げ、天動説を信じたいと思った人々によって選択されたエビデンスのように。
次に、未熟とは『その時点での』という枕詞が当てはまる、技術的限界によって生じるもの。
新たな技術は、現象の新たな側面に光を当てる。
そのことによって、それまで見えていた世界が一変して見えることがある。
例えば、望遠鏡の応用によって、地動説を証明したガリレオガリレイの天体観察のように。
この2つの経路によって、僕たちがいま信じているエビデンスが塗り替えられる可能性は高い。
だが、それでいい。
それが『科学』だからだ。
科学と非科学の違いは、以下の通り。
間違っている可能性を積極的に享受するところに、科学がある。
≒ 発展の可能性がある。
反証可能性こそ、科学。
でも、やっぱりこう思ってしまう自分もいる。
まず、しっかりと目の前のエビデンスを見て、考えろ、感じろ。
そして、自分自身が心の底から納得する結論なのか、理論なのか、それを選別するのだ。
その自分の感覚を、信じろ。
その姿勢は、吉田松陰の読書哲学に似ているかもしれない。
吉田松陰は、「なぜあなたは〇〇という理論をそこまで信じるのですか?」と聞かれたときに、「私が〇〇をこのむのは、その学の真がしばしば私自身の真と一致するからだ」と答えている。
自分の真実と合致するものを、選別するための読書。
つまり、真実の自分自身を掘り抜くための読書、勉強。
その真実は、おいおい、自分の信念になるだろう。
そしてその信念はきっと、たくさんの人の心を動かす。
誤りを恐れるな、プロテウス現象を恐れるな、それが科学。
正誤の両輪が、僕たちを前に運ぶ車で、そのどちらもが尊いはず。
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