死亡前の20年間に起こる機能低下の末期的な変化
📖 文献情報 と 抄録和訳
高齢者の身体機能の末期的低下
[背景・目的] 現在のところ、身体機能が終末期の低下期を示すかどうか(いつ示すか)、すなわち、死の直前の数年間に身体機能の低下が大幅に加速するかどうかは不明である。
[方法] Yale PEP Studyの702名の70歳以上の死亡した成人から、死亡20年前までの身体機能測定(Short Physical Performance Battery, SPPB)を4,133回行った。加えて、連続歩行および椅子立ち上がり下位テストのスコア(秒単位)を評価した。ランダム変化点を用いた一般化混合回帰モデルを用いて、身体機能の終末期低下の開始と急勾配を推定した。
[結果] 身体機能の3つの指標すべてにおいて、晩年において低下が加速した。終末期の低下の開始は、SPPBでは死亡の1年前、椅子立ち上がりと歩行速度検査得点ではそれぞれ死亡の2.5年前と2.6年前に起こった(MMSEについては記載がないがおそらく2.6年前くらいから末期的な低下が起こっている)。身体機能の終末期低下は、終末期前の低下の6~8倍急であった。フレイルが死因であった人に比べ、認知症やがんで死亡した人は、SPPBにおける終末期低下の開始がそれぞれ最大6ヵ月、3ヵ月早かった。
[結論] 高齢者における身体機能の終末期低下は、認知機能における終末期低下現象に匹敵する。われわれの結果は、差し迫った死による後期高齢者の身体機能の急速な低下を示す新たな証拠となる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
これまで、今回の抄読研究のような末期的な変化に着眼した研究を複数抄読してきた。
今回の研究を含め、このような研究は “予兆の感覚” を鋭敏にしてくれると思う。
というか、感覚を論理的なものに変換し、間違いなく気づけるものに変換できる可能性を与える。
SPPB、歩行速度など、定期的に測定していれば、その低下度合いが急勾配に入った瞬間に気づける。
そのときから、抗おうとする努力をしたとしたら、どうなるか。
それは、次なる課題になるだろう。
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