歩行中の介入デバイス。Passive, Semi-Passive, Active
📖 文献情報 と 抄録和訳
患者固有の歩行障害をターゲットとした機能的レジスタンストレーニング法。筋力活性化、神経制御、歩行力学に対する器具とその効果のレビュー
Washabaugh, Edward P., and Chandramouli Krishnan. "Functional resistance training methods for targeting patient-specific gait deficits: A review of devices and their effects on muscle activation, neural control, and gait mechanics." Clinical Biomechanics (2022): 105629. https://doi.org/10.1016/j.clinbiomech.2022.105629
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
🔑 Key points
- 歩行時の機能的抵抗トレーニングは、多くのデバイスを使用して適用された。
- ロボット型/受動型、ウェアラブル型/テザー型など、デバイスによって動作が異なる。
- これらの戦略は、歩行のバイオメカニクスや後遺症をどのように変化させるかについて様々であった。
- 特定の戦略は、患者固有の筋力および歩行障害を訓練することができる。
- この訓練はまた、神経興奮性のタスク特異的な上昇を誘発する可能性がある。
[背景・目的] 神経筋骨格系の損傷は、しばしば筋力低下や歩行障害を引き起こす。歩行時の機能的抵抗訓練(患者が脚への負荷に影響を与える装置を装着しながら歩行する)は、これらの症状に対処するための新たなアプローチである。しかし、患者への抵抗には多くの方法があり、トレーニングのバイオメカニクスを変化させる可能性がある。したがって、すべての方法が患者固有の欠損に対処できるわけではない。
[方法] 歩行中の機能的レジスタンストレーニングが筋活動、歩行バイオメカニクス、神経可塑性をどのように変化させるかを急性期(すなわち、1回のトレーニングセッション後)に調査した論文を特定するために、包括的な電子データベース検索を行った。トレーニング中または抵抗除去後のこれらの効果(すなわち、後遺症)を調査した論文のみを対象とした。
[結果] これらの基準に合致する研究は41件であった。ほとんどの研究(24件)が受動的な装置(例:加重カフや抵抗バンド)を使用し、残りはロボットの装置を使用していた。デバイスは、ウェアラブルか外部に繋がれているか、そして適用する抵抗のタイプ(すなわち、慣性、弾性、粘性、またはカスタマイズ)により様々であった。これらの方法は、筋の活性化、バイオメカニクス、時空間・運動残効に装置特有の変化を与えたことは特筆すべきことである。このようなトレーニングは、神経興奮性のタスクに特化した上昇をもたらすことを示唆する証拠もある。
✅ 3種類の歩行中の介入デバイス
- Passive Device:例:ウェイトカフ/ベルト、弾性バンド、パッシブブレースは、最も費用対効果の高いオプションだが、リアルタイムの制御はできない。コンピュータ制御などを有さない、一様の抵抗を産生。
- Semi-passive device:機能的レジスタンストレーニングではあまり研究されていないが、セミパッシブロボットは、制御可能なパッシブ要素(例えば、制御可能なブレーキ)を利用し、限られた制御のセットを提供するために、控えめな価格で提供されている。油圧式など、外的負荷に応じて適度な抵抗を産生。
- Active Device:リハビリを行う上で非常に優れた制御を行うことができるが、その分、購入費用も高くなる。例. コンピュータ制御による電動のトルク産生。
[結論] これらの知見は、抵抗戦略を注意深く選択することで、患者特有の筋力障害や歩行障害を対象とすることができることを示唆している。また、多くのアプローチは低コストで、臨床または家庭での使用が可能である。この結果は、臨床医が患者固有のニーズを満たすために適切な機能的レジスタンストレーニング戦略を選択する際に、新たな洞察を与えるものである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
理学療法とは、運動しやすいように患者さんの身体の状態を整え、運動の仕方を教える仕事です
📕理学療法. 大橋ゆかり
この言葉は金言だと思う。
歩行を例にして考えてみる。
まず前半。
「運動しやすいように患者さんの身体の状態を整え」は、歩行に必要な身体機能、たとえば大腿四頭筋筋力や関節可動域を獲得するプロセスに該当する。
すなわち、Impairmentレベルへの介入を指す。
具体的な介入としては、筋力トレーニングや関節可動域練習など。
そして後半。
「運動の仕方を教える」は、獲得された筋力や関節可動域を動作中で、どう使用するかを学習するプロセスに該当する。
すなわち、Functionレベルへの介入を指す。
具体的な介入としては、ステップ練習や歩行練習など。
今回の抄読研究は、この後半部分、Functionレベルへの介入の中で、デバイスを用いたものを対象としたレビューを提供してくれた。
抵抗のかけ方によって、大きく3つの枠組みがあることを理解でき、とても意義の大きいレビューと感じた。
さて、
Impairmentレベルへの介入、Functionレベルへの介入。
それだけだろうか・・・。
その中間、Semi-Functionレベルへの介入があると思っている。
どういうことか。
歩行の遊脚終期〜立脚初期を考える。
フォーカスを絞るが、足背屈筋と膝伸展筋の活動は必要なフェーズだ。
ここで、Impairmentレベルへの介入は足背屈筋 or 膝伸展筋の筋力トレーニングにあたる。ここでNMESなどのツールを用いる場合もある。
一方、Functionレベルへの介入は両者の筋活動を賦活するようなステップ練習、歩行練習にあたる、ここでFESや外骨格ロボットなどデバイスを用いる場合もある。
そして、Semi-Functionとは、複合的な筋力トレーニングのことだ。
今回のフォーカスの場合には、筋力トレーニングにおいて、足背屈筋と大腿四頭筋の筋出力を同時にさせる。
その複合的な筋出力(TA+RF)は、遊脚終期〜立脚初期に活動が高まる筋シナジー(筋活動のグループ)である。
筋力トレーニングにおいても、この筋シナジーを賦活させる方法があるのではないかと考えている。
この筋シナジーを考慮したSemi-Functionレベルへの介入は、歩行に対して威力を発揮するだろうか。
実は、いま、検証している。
近々、結果を報告できると思う。
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