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情動は知覚の門番:不安な脳と呼吸予測の不適応

▼ 文献情報 と 抄録和訳

呼吸の相互知覚とその不安との関係

Harrison OK, Köchli L, Marino S, Luechinger R, Hennel F, Brand K, Hess AJ, Frässle S, Iglesias S, Vinckier F, Petzschner FH, Harrison SJ, Stephan KE. Interoception of breathing and its relationship with anxiety. Neuron. 2021 Dec 15;109(24):4080-4093.e8.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ ハイライト
- fMRIにおける新しいトライアルごとの呼吸関連インターセプションタスク
- 不安は、呼吸知覚、メタ認知、学習の違いに関係する
- 前部島活動は呼吸予測と予測誤差を反映する
- インターセプティブ予測時の前部島活動は、不安の度合いによって異なる

[背景] 身体内部の状態を知覚するインターセプションは、不安などの感情的性質と密接に関連していると考えられている。インターセプトは感覚的処理からメタ認知的処理にまたがるが、不安がこれらの処理レベルに異なる形で関連しているかどうかは明らかでない。

[方法] 我々はこの疑問を呼吸の領域で検討した。計算論的モデリングと高磁場(7 T)fMRIを用いて、予測可能性の異なる吸気抵抗の動的変化に関連する脳活動を評価した。不安の特性レベルが異なる(低と中)健康成人を募集し、自己報告や心理物理学的測定からスイッチング偶発に反応する神経活動まで、パフォーマンスを比較した。

[結果] 学習率は低不安群と同等であったが、中程度の不安群が課題を通してより高い呼吸不安を報告することを見出した。両群とも、予測の確かさにスケーリングした前頭前野、ACC、aInsの脱活性、予測誤りの大きさにスケーリングしたaIns、ACC、PAG、中前頭回の活性化が観察された(図1A、1B参照)。興味深いことに、aInsの不活性化は、低不安群でのみ正と負の予測を区別し(図1C参照)、これは、皮質レベルでの関連と無関係の信号の区別の悪さに起因すると思われた。中等度不安群はまた、身体知覚質問票と息苦しさの破局感尺度のスコアも高く、いずれも身体症状へのより不適応な焦点を示唆するものであった。

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[結論] 不安と呼吸の関係のモデルが、外部ではなく内部の手がかりの誤った識別を前提としていることから、BLTを視覚的な手がかりではなく、インターセプティブな手がかりに適応させることは非常に興味深い。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

正直なところ、今回の論文はかなり難解で、詳細な方法論と結果の解釈が十分ではない。
だが、トピックが面白すぎたので、勉強したいと思った。
そのトピックとは、「インターオセプティブ推論」という概念だ。

✅ インターオセプティブ推論とは?
● インターセプション(内受容感覚):自分の内部の状態を感じ取る能力。
● インターオセプティブ推論:感情、意識、自己を含む人間の経験の複数の側面が、身体の状態のボトムアップのセンシングとそれぞれのトップダウンの予測の相互作用を介して構築されるという考え方。

カオスになることを避けるため、今回は内受容感覚(インターセプション)に限って考察を進める。
インターオセプティブ推論とは、人の経験という1個のものが内受容感覚(ボトムアップ)と内受容感覚の予測(トップダウン)の相互作用によって決められている、ということ。
そして、今回の研究結果が示したのは、不安は内受容感覚の予測を不適応なものとし、結果的に呼吸知覚、呼吸学習を撹乱した。
このように、情動はとくに『内受容感覚の予測』に強く影響を与えるかもしれない。
そして、結果的に実際感覚(ボトム)と予測感覚(トップ)によって構築される内的知覚(経験)が歪んだりする、と。
つまり、情動は直接的に実際感覚にタッチしているわけではなく、予測感覚に影響を与えることで、統合を変え、経験を変えているという認識だろうか。
上がってきた実際感覚に意味を与え「知覚」を形成する、門番のような感じか。
これって、心因性疼痛の理解にとっても、すごく重要な考え方じゃないか?
・・・、難しい。
今回は、このくらいにしよう。
漸進だ!、一度の挑戦で完璧になるはずがない。

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