脳卒中者の職場復帰。デンマークは2/3が職場復帰、日本は?
📖 文献情報 と 抄録和訳
デンマークにおける脳卒中後の労働市場への参加と退職:登録に基づくコホート研究
[背景・目的] 脳卒中のサブタイプ別に,脳卒中患者とマッチさせた一般人の労働市場への参加と退職について検討した。
[方法] 全国規模の,人口ベースの,マッチドコホート研究。設定 デンマークの全病院を対象としたDanish Stroke Registryとその他の全国的なレジストリ(2005~18年)。対象者:虚血性脳卒中(n=16 577),脳内出血(n=2025),くも膜下出血(n=4305)の初回診断を受けた患者(18~60歳,労働市場で活動中),および年齢,性別,暦年でマッチさせた一般人口(n=134 428)。Scandinavian stroke scale scoreの中央値は55であった。
主要評価項目:労働市場参加率、病気休暇給付金受給率、障害年金受給率、任意早期退職率、国民年金受給率、死亡率の加重平均値を、脳卒中診断後5年までの各週について計算した。対数線形ポアソンモデルを用いて正確な有病率推定値を求め、傾向スコアで重み付けした有病率の差と有病率比を脳卒中診断後-6か月、1年、2年、5年後に求めた。
[結果] ほとんどの患者(虚血性脳卒中62%、脳内出血69%、くも膜下出血52%)が診断後3週間以内に病気休暇に入った。虚血性脳卒中患者(脳梗塞)の労働市場への参加率は,マッチングした一般集団の人々と比較して,6ヵ月後には56.6%対96.6%,2年後には63.9%対91.6%であった.病気休暇の有病率は,6ヵ月後では39.8%対2.6%,2年後では15.8%対3.8%であった.障害年金の受給率は、6ヶ月では0.9%対0.2%、2年では12.2%対0.6%であった。傾向スコアによる重み付けで,患者とマッチさせた一般集団の社会経済的・併存疾患的差異を調整しても,対照にはほとんど影響を与えなかった.脳内出血の患者は病気休暇と障害年金の受給率が高く,労働市場への参加が少なかったが,くも膜下出血の患者の有病率は虚血性脳卒中の患者の有病率と同程度であった.
[結論] 高資源国において、主に軽症の虚血性脳卒中患者の約3分の2が診断から2年後に労働市場に参加していた。非参加の理由としては,病気休暇と障害年金の受給が最も一般的であった.脳内出血の患者は虚血性脳卒中やくも膜下出血の患者よりも労働市場に復帰する可能性が低かった。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
日本に住む僕たちがこの文献を見たときに、避けては通れない疑問だろう。
調べてみたところ、以下のようなことが分かっているらしい。
つまり、北欧諸国に比較すると日本の脳卒中者の職場復帰率は低い。
これには、大きく個人の能力の問題と受け皿としての社会の問題があるだろう。
■ 個人の能力の問題(脳卒中後の回復)
・脳卒中後の身体機能
・高次脳機能障害
etc...
■ 受け皿としての社会の問題
・企業の障がい者の受け入れ
・社会支援のシステム
・軽度障がい者の働く場
etc...
何の根拠もないのだが、北欧と日本の違いには、後者の影響力が大きいのではないだろうか。
理学療法士としては、後者に声を上げていくとともに、前者の影響力では北欧に負けないようにしていくことが大事だと思っている。
ところで、以上のような職場復帰率と要因ごとの阻害状況を調査できたら、とても有用だと思った。
Research Questionとして保存しておこう。
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