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運動神経を活性化させるシートが開発される


📖 文献情報 と 抄録和訳

健康な若年成人男性における局所振動が運動単位の発火行動と筋力に及ぼす即時効果

📕Nishikawa, Y., Holobar, A., Watanabe, K. et al. Immediate effect of local vibration on motor unit firing behavior and muscle strength in healthy young adult males. Eur J Appl Physiol (2024). https://doi.org/10.1007/s00421-024-05553-9
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[背景・目的] 本研究の目的は、健康な若年成人男性において、振動が運動単位(MU)の発火行動および拮抗筋の運動能力に及ぼす影響を検討することである。

[方法] 14名の男性(年齢=24.3±3.6歳)を対象とした。大腿二頭筋の遠位腱に80Hzの振動を30秒間与える条件と、コントロール条件(振動なし)の2つを設定した。

✅ (大腿四頭筋の) 運動神経を活性化させるシート
対象者は,シートに腰掛けた状態で内蔵した振動子を大腿二頭筋腱に当て,振動数:80Hz,振幅値:0.1mm のパラメータにて 30 秒間の刺激を実施した(図 )。
図 が開発したシートで、振動子を大腿二頭筋腱に当てている様子を示している。

振動刺激前後に、膝を伸ばす最大筋力と運動神経活動の計測を行った。運動神経活動の計測には、高密度表面筋電図法を用いて解析を行った。対照条件として、振動を行わずに振動刺激条件と同じ時間シートに腰掛け、その前後に最大筋力と運動神経活動の計測を実施した。

[結果] 解析の結果、振動刺激を加えることで、即時的に筋活動が増加し、運動神経活動が増加することが明らかになった。また、振動刺激はより高閾値で活動を開始する運動神経の活性化に寄与していることが分かった。運動神経は、小さい運動神経から順に活動を開始する特性があり、これをサイズの原理と呼ぶ。この原理を踏まえると、低閾値では遅筋線維、高閾値では速筋線維が活動するため、振動刺激は速筋線維の活性化に寄与することが示唆された。さらに、運動神経活動の変化が大きい人ほど筋力の増加量が大きいことが分かり、身体機能の即時的な向上に貢献できることが明らかになった。

[結論] これらの結果から、振動は拮抗筋の神経制御に即時的な変化をもたらすことが示唆された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「運動神経を活性化させるシート」、なんと夢の詰まった名前だろう。
僕たち理学療法士は、運動神経を活性化させるために、さまざまな徒手的な方法や、声掛け上の工夫や、運動強度の変更などを日々模索している。
それを、30秒の刺激で、活性化!?、夢のシートである。

大事なのは、しっかりと仕組みを知っておくことである。
本文中の考察も読んだ上で、以下のような仕組みがありそうだ。
まず、振動は筋紡錘の活動に対して促進的および抑制的な効果を持ち、これが運動出力に影響を与えると考えられる。
そして、80 Hzの振動が30秒以上続くと, Ia線維の発火率が低下することが報告されている (📕Roll et al. 1989 >>> doi.; Ribot-Ciscar et al. 1998 >>> doi.)。

Ia抑制の仕組みを考えると、目的筋(大腿二頭筋)を興奮させ、拮抗筋を抑制する。
そして、振動刺激はこの Ia抑制を「抑制」することで、拮抗筋である大腿四頭筋の筋活動を高めると考えられる。

脊髄反射を活用した反応であるから、おそらくこの効果は即時的で、持続時間の弱いものだと思われる。
そのため、このシートで活性化した直後での運動や介入が重要になってくるだろう。
このシートが臨床応用されるときに向け、活用方法の具体案を考えておこう!

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