退院直後にこそ、リハビリテーションを!
📖 文献情報 と 抄録和訳
機能障害を持つ高齢者の要介護度悪化に対する退院後早期のリハビリテーションサービスの効果。傾向スコアマッチング研究
[背景・目的] 日本人高齢者における退院後早期のリハビリテーション(以下、退院直後リハ)が要介護度の悪化に及ぼす影響について検討すること。
[方法] デザイン傾向スコアマッチによる後ろ向きコホート研究。設定日本の郊外都市の医療・介護保険請求データを用いて二次データ分析を行った。参加者2012年4月から2014年3月の間に病院から自宅へ退院し、機能障害を示す要介護認定を受けた65歳以上の患者(N=2746)を分析対象とした。介入方法退院後1ヶ月以内にリハビリテーションセラピストによる退院直後リハを提供した。退院直後リハを受けた患者と受けなかった患者の特性の違いを制御するために傾向スコアマッチングを用いた。主なアウトカム評価項目退院後12ヶ月間の要介護度の悪化の有無。マッチング後の曝露変数とアウトカム変数の関連を明らかにするためにCox比例ハザード分析を実施した。
[結果] 2746人の患者のうち、573人(20.9%)が退院直後リハを利用した。要介護度の悪化は508人(発生率:1000人月あたり18.3人)で発生し、そのうち76人が退院直後リハを利用し(1000人月あたり12.3人)、432人が退院直後リハを利用しなかった(1000人月あたり20.0人)。1対1の傾向スコアマッチングにより、すべての共変数の差を調整した566組のマッチングペアが作成された。これらのマッチングペアにおいて,要介護度悪化のハザードは,退院直後リハを利用した患者で有意に低かった(ハザード比=0.712,95% CI,0.529~0.958).Kaplan-Meier生存解析でも同様の結果が得られた(log-rank:P=0.023)。
[結論] リハビリテーション療法士による退院後の退院直後リハは要介護度の悪化防止に有効であり、リハビリテーション療法士が移行期のケアに関わることは、機能障害を有する日本人高齢者の健康管理の最適化に役立つ可能性があることが示された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
僕は、短い期間ながら、訪問リハを経験したことがある。
そこで強烈に感じたことは、以下の2点であった。
🔹退院直後は非常に危険な期間である
🔹入院中に退院後に起こる問題を予測しきることは不可能である
その強烈な感覚が、その後、勉強のアンテナとなり、以下のようなエビデンスを引き寄せた。
そんなアンテナに引っかかった新たな論文が、今回抄読した研究である。
退院直後リハが、要介護度の悪化リスクを低減させることを明らかにした。
この仕組みの1つに、『ショックアブソーバーの役割としての退院直後リハ』があると思っている(📕海津, 2020 >>> 地域リハビリテーション)。
上述したエビデンスも示したように、退院後、とくに退院直後には何が起こるか予測しきれない。
だからこそ、環境最適化、介護サービス最適化、身体機能・動作能力への介入など多くの事象に対応でき、かつ介入頻度の高い(ケアマネは頻度に限界があると思っている)退院直後リハが「操縦者」として最適と思っている。
たとえば、退院直後は訪問リハをデフォルトにして、最も危険域である退院直後〜1ヶ月間を過ぎたら抜く、ということが理想的と考えている。
なんにせよ、入院中セラピストとして、座して予測するだけではなく、積極的に「経時的な遠隔操作の限界を認識し、現場に操縦者をつける」技も身につけておく必要がある。
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