円背治療器の威力。8週で円背と肩前方突出を軽減
📖 文献情報 と 抄録和訳
胸椎後彎の改善がモビライゼーション後の肩の前方姿勢に及ぼす影響
📕Jung, Sung-hoon, et al. "Effect of improved thoracic kyphosis on forward shoulder posture after mobilization in individuals with thoracic hyperkyphosis." Clinical Biomechanics 97 (2022): 105707. https://doi.org/10.1016/j.clinbiomech.2022.105707
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable
🔑 Key points
- 8週間の機器による胸郭モビライゼーションにより、肩前方突出姿勢が改善された。
- 肩前方突出姿勢を改善するための後弯変化率のカットオフ値は13.8%以上であった。
- 肩のリハビリテーションにおいて、胸椎モビライゼーションは肩前方突出姿勢を改善するために推奨される。
[背景・目的] 胸椎の後弯は、構造的に肩甲骨の位置を変化させ、肩関節の前方移動を引き起こす。しかし、胸椎後彎の改善が肩の前方姿勢に及ぼす影響については不明である。本研究の目的は、8週間の胸部モビライゼーションによる胸部過度後弯と肩関節前方姿勢の改善効果を明らかにし、肩前方突出姿勢改善のための後弯変化率のカットオフ値を決定木法を用いて決定することである。
[方法] 本研究では、胸部過度後弯を有する19名の被験者(18-50歳)に8週間の胸部モビライゼーションを行った。胸部モビライゼーション前後に肩前方突出姿勢(肩峰-壁間指標)と胸椎後彎を測定した。
✅ ベッド型機器を用いた円背改善の介入方法
- プックジャム機械式マッサージ装置を使用した。
- このマットタイプの機械式マッサージ装置は、直径5cmの2つの円形ローラーを持ち、各ローラーの中間点間は7.8cmである。各ローラーの内側端点間の距離は2.8cmであった。
- このローラは両側の脊柱起立筋群をマッサージすると同時に、脊柱を伸展方向に動員する。装置に組み込まれた胸椎モードは、ローリングマッサージで胸椎に適用された。
- この胸椎モードでは、頭部から胸椎にかけてのマッサージを行う。ローラーは0.4cm/sで上下に駆動する。
- 胸部モードでは、合計3回のラウンドドライブを25分間行う。ローラは胸部のマットから4.9cm上方へ移動する。
📕Jung, Sung-hoon, et al. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine (2020). >>> doi. https://doi.org/10.1155/2020/6526935
[結果] 所見介入により、胸椎後彎と肩前方突出姿勢が有意に改善された。肩前方突出姿勢を改善するための胸椎前弯の変化率のカットオフは13.79%以上であった。前弯変化率13.79%以上のサブグループ解析(7例)では、全例で肩前方突出姿勢が改善された。一方、後弯変化率13.79%以下のサブグループ(12例)では、8例に肩前方突出姿勢の改善がみられたが、4例では改善がみられなかった。
[考察] 胸椎高後弯の患者において、肩甲骨の不整列を管理・予防するために、肩の前方姿勢を改善するための肩関節リハビリテーションプログラムにおいて、胸椎モビリゼーションを推奨することができる。後弯が 13.79%以上改善された場合、高い確率で肩の前方姿勢が改善されることが示唆された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
この研究の題目を見たとき、後光が差して見えた。
それほど、円背自体を改善する介入を待っていた。
これまで、円背と転倒の関係性や円背の疫学的な研究や要因など、観察研究は数多見てきた。
その中で、「円背って大事なんだなぁ」と思っていたが、それ自体を治せるのか、治せるとしたらどのようにしてか、という部分は大きな課題だった。
そんなパズルの抜けた部分を満たす1つのピースが、今回の抄読研究だった。
ベッド型機器を用いて、せり上がることで多動的に脊柱を伸展させる。
それを1日25分間(週3回)実施することで円背、肩前方突出姿勢が改善される。
おそらく、タオルロール(バスタオル丸めたやつ)でも同様の効果が期待できるのではないだろうか。
ただ、注意事項としては対象者(Participants)で、今回は18-50歳を対象にしているので可動域の可塑性が大きかったことが推察される。
臨床応用に際しては、高齢者を対象とした試験が望まれる。
そして、注意事項の2つ目として、胸椎伸展可動域が獲得されて終わりではないということ。
今回の介入内容も、あくまでも準備的な介入となると認識されるべきだろう。
胸椎屈曲(Thoracic kyphosis angle: TKA)自体は、転倒など主要アウトカムとは関連せず、それよりも下位のINC(Trunk Inclination Angle: INC)などの関連が大きい。
✅ 脊椎の矢状面における変形を示す4つのパラメータ
- Thoracic kyphosis angle: TKA
- Lumber lordosis angle: LLA
- Trunk inclination angle: INC
- Sacral inclination angle: SIA
📕 Yanagisawa, Shinya, et al. Asia-Pacific Journal of Sports Medicine, Arthroscopy, Rehabilitation and Technology 2.2 (2015): 68-71. >>> doi.
そのため、TKAだけ変化しても、臨床上得たいアウトカムにはリーチできない可能性が高い。
介入としては、TKAを出した後に、Pelvic tiltなど腰椎-骨盤帯も含めた神経筋コントロールの介入が必要になることが想定される。
何にしても、TKAに影響を及ぼせそうな介入に出会えたことは、嬉しい❗️
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