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筋持久力を測る:大臀筋 & 中殿筋

▼ 文献情報 と 抄録和訳

臀部持久力測定法(GEMs)の信頼性と妥当性について

Lehecka BJ, Smith BS, Rundell T, Cappaert TA, Hakansson NA. The Reliability and Validity of Gluteal Endurance Measures (GEMs). Int J Sports Phys Ther. 2021 Dec 2;16(6):1442-1453.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 臀部は、筋持久力に関連したユニークな形態をしており、適度な大きさの繊維とタイプI持久力繊維が大半を占めている。臀部の持久力は、腰痛、ランニングの運動特性、バランス、姿勢などに関係することが示唆されている。しかし、臀部の持久力に特化した信頼性の高い有効な測定法は文献上では不足している。本研究の目的は、臨床使用を目的とした2つの臀部持久力測定法(GEM)の評価者内・評価者間の信頼性を検討することである。また、筋電図(EMG)を用いて2つの測定法の妥当性を検討し、タスク失敗の理由を記録し、人口統計学的グループ間の違いを分析することを目的とした。

[方法] 研究デザインは横断的。大学生を対象に、18~35歳の再発性腰痛の有無にかかわらず、68名の男女を募集した。筋電図の電極を大殿筋と中殿筋に装着し、各被験者はGEM-A(外転持久力)とGEM-B(ブリッジング持久力)を3回ずつ行った。保持時間、筋電図の中央周波数(MF)データ、課題失敗の主観的理由を分析した。

図1

✅ 図. 左:臀部持久力指標A(GEM-A)-外転持久力、右:臀部持久力指標B(GEM-B)-ブリッジ持久力

[結果] どちらのGEMも高い評価者内信頼性(ICC = 0.87-0.94)と評価者間信頼性(ICC = 0.99)を示した。平均保持時間は,GEM-A(外転持久力)が104.83±34.11秒,GEM-B(ブリッジング持久力)が81.03±24.79秒であった。腰痛が再発した被験者とそうでない被験者の間には、統計的に有意な差は見られなかった。周波数の中央値データは、両測定法における臀部の疲労の開始を検証した。GEM-AおよびGEM-Bでは、被験者の93%および86%が、タスク失敗の主な理由として後側股関節(臀部)の疲労を報告した。

[結論] GEM-A(外転持久力)とGEM-B(ブリッジング持久力)に関するこの画期的な研究では、両測定法が臀部持久力の信頼性と妥当性のある測定法であることがわかった。異なるタイプの腰痛や股関節痛を持つサンプルでGEMをさらに検討することが推奨される。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

筋力(Strength)、筋持久力(Endurance)、似て非なるもの。
50m走で速いやつと、マラソンで速いやつは、違う人だったろう。
違う機能を使った、違った能力なのだ。

筋持久力を病体(Pathology)レベルにチャンクダウンして考えてみよう。
筋線維は、筋持久力に影響の大きいType1線維と最大筋力に影響の大きいType2線維がある。
臀筋群は、このType1線維が大半を占める筋であることが知られている。

筋持久力を機能(Function;動作)レベルにチャンクアップして考えてみよう。
最大筋力は、1回の歩容・リハビリ時の歩容・ラボでの歩容を反映しやすいかもしれない。
筋持久力は、むしろ1日の総歩行量、身体活動量との関わりが強いかもしれない。
リンクしてくる動作レベルも、筋力と筋持久力では異なってくると思われる。

スライド3

その中身も、用いられ方も、筋力と筋持久力では違う。
だったら、測り方も当然、変わらなければならない。
みかんの質量と糖度を測るのに同じ測り方はしないだろう。
Strengthと、Enduranceは距離が近いだけで、同じことがいえるはずだ。

言葉・名前によって現象や概念が梱包されるように、
計測られることによって、存在が、形が浮き彫りになる、与えられる。
計測することは、創造することの1つだと思う。

"if you cannot measure it, it does not exist."
測定できないものは存在しないのだ

ブレネー・ブラウン

※高齢者に用いる場合には、GEM-A(中殿筋)は応用可能そうだが、GEM-B(大臀筋)は強度が強いと思われる。両下肢でのブリッジでも同様に信頼性が検証された研究がある。下記論文を参照されたい。

✅ Related study
Schellenberg, Kerri L., et al. AJPMR 86.5 (2007): 380-386. >>> doi
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