サルコペニアの概念的定義
📖 文献情報 と 抄録和訳
サルコペニアの概念的定義:サルコペニアのグローバルリーダーシップイニシアチブ(GLIS)のデルファイコンセンサス
[背景・目的] サルコペニアは、加齢に伴う筋肉量と筋力・機能の低下であり、重要な臨床症状である。しかし、その定義に関する国際的なコンセンサスは存在しない。目的:Global Leadership Initiative in Sarcopenia(GLIS)は、サルコペニアの世界的な概念定義を確立することにより、この問題に対処することを目的とした。
[方法] デザイン:GLIS運営委員会は、2019年から21年にかけて、世界中の関連するすべての学会から代表者を集めて結成された。この間、運営委員会はこのテーマに関する一連の声明を作成し、これらの学会からメンバーを募り、2段階の国際デルファイ調査に参加させた。2022年から2023年にかけて、参加者はオンライン調査ツール(SurveyMonkey)を使って、一連の声明への同意をランク付けした。声明は、事前に定義された閾値に基づいて分類された:強い同意(80%以上)、中程度の同意(70〜80%)、低い同意(70%未満)。強い同意が得られた声明は受け入れられ、低い同意が得られた声明は却下され、中程度の同意が得られた声明はコンセンサスが得られるまで再投入された。
[結果] 7大陸・地域、29カ国から107名の参加者(平均年齢54±12歳[年齢不明1名]、男性64%)がデルファイ調査に回答した。その結果、20の意見が強く一致した。その内訳は、「サルコペニアの一般的側面」に関する記述6件(最も強い一致:サルコペニアの有病率は年齢とともに増加する(98.3%))、「サルコペニアの構成要素」に関する記述3件(筋肉量(89.4%)、筋力(93. 1%)、比強度(80.8%)はすべてサルコペニアの概念的定義の一部であるべきである))、「サルコペニアの転帰」に関する11の記述(最も強い一致:サルコペニアは身体能力低下のリスクを増加させる(97.9%))であった。デルファイ調査の重要な発見は、筋肉量、筋力、比強度はすべて「サルコペニアの構成要素」として受け入れられたのに対し、身体能力の低下はサルコペニアの「構成要素」ではなく「結果」として受け入れられた。
[結論] GLISは、サルコペニアの世界的な概念定義を初めて作成した。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
言葉の定義は大事だ。
思った以上に、大事だ。
それを示す、1つの逸話がある。
孔子は、物の名前の定義が人によって異なっていると、話をしても、お互いに考えている内容が食い違ってしまい、結果、政治がうまくいかないということを説いた。
医療においても、例えばサルコペニア、と名称を言われたときに、違った内容を思い描いていては、その話が食い違ってしまう。
そのため、サルコペニアという言葉に対する定義を共有しておくことが、研究、治療をより効果的にするために重要である。
その意味合いにおいて、今回のサルコペニアの定義を明らかにしたデルファイ研究は、とても重要な研究のように思える。
特に、その構成要素とアウトカムを明確に示したことにより、サルコペニアとはこれ!、サルコペニアにより生じる有害事象はこれ!、という風に明確に線引きしてくれた。
このサルコペニアの定義を、よくよく頭に入れておきたいと思う。
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