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脳の機能シフト


📖 文献情報 と 抄録和訳

脳腫瘍患者の後部言語野の機能がより広範囲にわたって低下している

📕Nakajima, Riho, et al. "More widespread functionality of posterior language area in patients with brain tumors." Human Brain Mapping 45.11 (2024): e26801. https://doi.org/10.1002/hbm.26801
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[背景・目的] 運動、感覚、視覚、そして言語機能を含むさまざまな機能は脳の特定の領域によってつかさどられている。これを機能局在と呼ぶ。機能局在が急激に病変に侵されると、機能障害が生じる。しかし、機能局在に病変がゆっくり進展した場合、脳は自らの機能を守るために脳機能が本来の機能局在から移動することがある(機能シフト)。これは脳の可塑性のメカニズムの一つである。しかし、機能シフトの特徴についてはまだよく分かっていない。

[方法] 本研究では、左大脳半球の脳腫瘍症例を対象に、後方言語野(ウェルニッケ領域)の機能シフトの特徴を覚醒下手術所見と安静時機能的MRIという手法を用いて調べた。覚醒下手術とは、脳内病変に対する手術において、機能障害を避けるために機能局在を手術中に調べながら行う手術である。

[結果] ウェルニッケ領域に病変が及んでいる群と、ウェルニッケ領域から病変が離れている群の2群に分けて言語機能の分布を調べた結果、ウェルニッケ領域に病変が進展すると、言語機能は縁上回後方に広がることが明らかになった。興味深いことに、縁上回後方は脳機能のハブであった。なお、ウェルニッケ領域に病変が進展している症例の言語機能は正常であった。

[結論] これらの結果は、病変がウェルニッケ領域に進展すると、脳のハブ領域が言語機能を代償することを示している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

融通無碍、という言葉がある。
その意は、障害なく通じて、物事が滑らかに運ばれること。
今回の人間の脳における『機能シフト』という現象を見るにつけ、この言葉を思い出した。

水が流れている。
その水の流れの最中に、岩がいくつも障壁として存在している。
だが、水はその岩のない場所を融通無碍に流れてゆくのだ。
人間の構造と機能においても、このような融通無碍の仕組みが備わっていると感じさせられた。

ある場所(今回の場合ウェルニッケ領域)に障害が存在する場合、障害が存在しない場所にその機能・構造が流れてゆく。
なんと融通無碍な仕組みだろうか。
今回は言語領域についてだったが、理学療法士としては運動領域における機能シフトについて知りたいと思った。

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