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THA後の運動療法。バランスと歩行に対する効果
📖 文献情報 と 抄録和訳
人工股関節全置換術後のバランスと歩行に対する運動療法の効果:系統的レビューとメタ分析
📕Park, Se-Ju, and Byeong-Geun Kim. "Effects of exercise therapy on the balance and gait after total hip arthroplasty: a systematic review and meta-analysis." Journal of Exercise Rehabilitation 19.4 (2023): 190. https://doi.org/10.12965/jer.2346290.145
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[背景・目的] 股関節全置換術(total hip arthroplasty, THA)後の患者のリハビリ期における運動療法の効果を分析した研究は不足しているのが現状である。したがって、この系統的レビューとメタ分析の目的は、THA後の患者のバランスと歩行に対する運動療法の効果を分析することである。
[方法] 本研究で選択した研究は、以下のPICOに基づいている: P(患者)-THA後の患者、I(介入)-運動療法、C(比較)-対照群とその他の療法群、O(結果)-バランスと歩行。本研究の追加基準は、研究デザイン(ランダム化比較研究)、言語(英語)、出版状況(雑誌)、出版年は限定しなかった。
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[結果] 11の研究が含まれた。THA後の患者におけるバランスと歩行に対する運動療法の効果は、有意差があった。
■バランス
・標準化平均差(SMD)、0.51;95%信頼区間(CI)、0.24-0.78;I2=22%。
・短期群では有意差が観察された(SMD、0.41; 95% CI、0.11-0.70、I 2 =0%)
・さらに、長期群でも有意差が観察された (SMD、1.00; 95% CI、0.35 ~ 1.64; I 2 =52%)。
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■歩行
・SMD、0.39;95%CI、0.01-0.76;I2=66%。
・短期群では有意差が観察された (SMD、0.53; 95% CI、0.12 ~ 0.93; I 2 =67%)。
・しかしながら、長期群では有意差は観察されなかった。
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[結論] リハビリテーションの専門家は、THA後の患者のバランスと歩行を改善するために、運動療法をリハビリテーションプログラムに含めることを推奨している。今後、より多くの研究や、各運動療法の効果の大きさを分析するネットワークメタ解析など、さらなる研究が必要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
人工関節全置換術は、関節炎を患う股関節の治療法に革命をもたらし、同世代の整形外科手術の中で最も成功した手術のひとつと考えられている(📕Knight, 2011 >>> doi.)。
人工股関節全置換術 (THA)は,the orthopaedic operation of the century と評されるように,20世紀で最も成功した整形外科手術で,
1960 年代から高齢股関節症患者の生活の質を劇的に向上させた(📕菅野, 2023 >>> doi.)。
THAは、とても予後の良い手術方法の1つだ。
低い死亡リスク、良い機能予後。
その予後の良さから、術後リハビリテーションについては、以下のようなことも議論になる程だ。
近年、THA 術後リハビリテーション治療の必要性の有無が議論になること をしばしば経験する
(📕岡安, 2023 >>> doi.)
だからこそなのか・・・。
実は、THA患者を対象とした術後リハビリテーション、運動療法の効果についてのエビデンスは少ない。
今回の抄読研究は、貴重な運動療法の効果を示したSRMAとなった。
そのアウトカムとしても、バランス機能、歩行能力という理学療法士としてはとても興味のある領域。
その結果は、バランス、歩行ともに効果的である、というものだった。
THAの予後は放っておいても良いだろう。
だが、運動療法をすることで、その回復をより加速させることができる。
その主張の後ろ盾となるエビデンスに出会えた。
これは嬉しい。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
📕THA後の運動療法の効果
— 理学療法士_海津陽一 Ph.D. (@copellist) April 28, 2024
・11研究を包含
・運動療法のバランスと歩行に対する効果
対照, 多介入と比較し運動療法は
🔹バランス↑(SMD 0.51), 短期, 長期とも効果+
🔹歩行能力↑(SMD 0.39), 短期のみ効果+
THA後の運動療法はバランス, 歩行能力向上に効果的です😲#人工股関節置換術 #バランス #歩行 pic.twitter.com/TtIHQc3NSD
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