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サーモグラフィーによる創傷評価


📖 文献情報 と 抄録和訳

創傷評価におけるサーモグラフィーの役割:スコーピングレビュー

📕Fridberg, Marie, et al. "The role of thermography in assessment of wounds. A scoping review." Injury (2024): 111833. https://doi.org/10.1016/j.injury.2024.111833
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[背景・目的] 肉眼による創傷の評価は、評価者間および評価者内の信頼性が低く、炎症と感染症を区別することが困難である。サーモグラフィーは、創傷部位の皮膚表面温度パターンを収集し、温度を虹色に色分けした図として即座に視覚化する、使いやすい定量的画像技術である。本スコーピングレビューの目的は、外科的または外傷性の創傷を持つヒトおよび動物の炎症の兆候を評価するためにサーモグラフィーがどのように使用されてきたかに関する既存の証拠をマッピングし、要約することである。

[方法] ジョアンナ・ブリッグス研究所の方法論に従っている。検索されたデータベースはPubMed、Embase、CINAHL、Cochrane Libraryである。

[結果] 3798件のソースが特定され、2666件はタイトルと要約でスクリーニングされ、99件は全文でスクリーニングされ、19件の研究がレビューに含まれた。文献は多様であり、さまざまな科学分野に由来していることが分かった。サーモグラフィーは、外科的傷口における炎症や感染の検出や予測に使用されてきた。視覚的な外観に基づく評価システムは、サーモグラフィーで検出された温度パターンと相関関係があった。一般的な傾向として、サーモグラフィーは、炎症を起こしている創傷の温度が、基準となる部位または手術前の同じ皮膚部位よりも高いことを検出する。外科的創傷では、治癒を促す自然な生理学的炎症により、手術後1~2週間で温度が上昇する。2週間後には創傷部位の温度が徐々に安定して低下し、1~3か月かけてベースラインに戻る。手術創の治癒段階で二次的な温度上昇が起こった場合、感染症が発生している可能性が高い。

■ サーモグラフィーによる創傷評価:臨床例

📕Simman, Richard, et al. "Use of Multimodal Long-Wave Infrared Thermography Devices in Clinical Practice." Eplasty 23 (2023). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10350871/

■ 温度測定方法の割合

■ サーモグラフィーによる創傷評価:研究報告状況

・基準領域(63%):研究の多くは、傷の温度測定時に基準領域(健常な部位)を設定して比較している。これは、炎症による温度上昇を確認するために必要な手法とされる。
・信頼性(11%):測定方法の信頼性や再現性について言及している研究は少ない。これは、異なる環境条件や計測手法により結果がばらつくためと考えられる。
・放射率設定(16%):カメラの放射率設定を記載している研究は少数にとどまっている。放射率は熱画像の正確な温度計測に重要だが、多くの研究で適切な設定が省略されている。
・順応時間(37%):衣類や包帯の除去後、測定前に順応時間を設けている研究が約4割存在する。順応時間は皮膚表面温度が安定するまでの待機時間を指し、測定の正確性に関与する。
・技術的・機器的要因(68%):使用した赤外線カメラの仕様(製造元、解像度、感度など)についての情報を提供している研究は約7割存在する。
・環境要因(78%):環境温度や照明条件などの外部要因を考慮した研究が多い。これらの要因は、赤外線サーモグラフィーの結果に影響を与えるため、重要な要素とされている。
・個体要因(47%):患者の特性(年齢、性別、基礎疾患など)を考慮した研究は約半数であった。特に肥満患者では温度変化に差異が生じる可能性があるとされる。

[結論] 最新の携帯型サーモグラフィカメラは、臨床医が手術創の温度パターンを迅速に定量化し、炎症と感染症を区別する上で有望なツールとなる可能性がある。しかし、技術として手術創の感染サーモグラフィ監視を支持する確固たる証拠は存在しない。

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『炎症の四大兆候を答えよ』

学生のときに、しっかりと覚えた。
炎症の4大兆候とは、以下の4つを指す。

・発赤(Rubor)
・熱感(Calor)
・腫脹(Tumor)
・疼痛(Dolor)

これらは古くから炎症の代表的な兆候として挙げられていて、機能障害(Functio laesa)を加えた5兆候として説明されることもある。
臨床において、熱感はこの中でも特に重要視される兆候ではないだろうか。
触診して、「まだ熱いですね」などの結果をフィードバックする機会は多い。
だが、よく考えたら、このプロセスは非定量的であり、非見える化であった。

今回の抄読したレビュー研究では、熱感を「サーモグラフィーで測る」という革新的な評価方法に関するものだった。
これならば、単なる触診と比較して、定量的にすることもでき、見える化して患者さんと共有することもできる。
このインフォームドコンセントが重要視される時代、記録に残さなければならない時代、デジタル機器が充実している時代にフィットした評価方法であるように感じた。
あとは費用面、労力面など現実性との兼ね合いである。
ここは、徐々に勉強していってみようと思う。
『道具の効果的な使用』、これは近年におけるキーワードのように感じている。

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