サーモグラフィーによる創傷評価
📖 文献情報 と 抄録和訳
創傷評価におけるサーモグラフィーの役割:スコーピングレビュー
[背景・目的] 肉眼による創傷の評価は、評価者間および評価者内の信頼性が低く、炎症と感染症を区別することが困難である。サーモグラフィーは、創傷部位の皮膚表面温度パターンを収集し、温度を虹色に色分けした図として即座に視覚化する、使いやすい定量的画像技術である。本スコーピングレビューの目的は、外科的または外傷性の創傷を持つヒトおよび動物の炎症の兆候を評価するためにサーモグラフィーがどのように使用されてきたかに関する既存の証拠をマッピングし、要約することである。
[方法] ジョアンナ・ブリッグス研究所の方法論に従っている。検索されたデータベースはPubMed、Embase、CINAHL、Cochrane Libraryである。
[結果] 3798件のソースが特定され、2666件はタイトルと要約でスクリーニングされ、99件は全文でスクリーニングされ、19件の研究がレビューに含まれた。文献は多様であり、さまざまな科学分野に由来していることが分かった。サーモグラフィーは、外科的傷口における炎症や感染の検出や予測に使用されてきた。視覚的な外観に基づく評価システムは、サーモグラフィーで検出された温度パターンと相関関係があった。一般的な傾向として、サーモグラフィーは、炎症を起こしている創傷の温度が、基準となる部位または手術前の同じ皮膚部位よりも高いことを検出する。外科的創傷では、治癒を促す自然な生理学的炎症により、手術後1~2週間で温度が上昇する。2週間後には創傷部位の温度が徐々に安定して低下し、1~3か月かけてベースラインに戻る。手術創の治癒段階で二次的な温度上昇が起こった場合、感染症が発生している可能性が高い。
■ サーモグラフィーによる創傷評価:臨床例
■ 温度測定方法の割合
■ サーモグラフィーによる創傷評価:研究報告状況
[結論] 最新の携帯型サーモグラフィカメラは、臨床医が手術創の温度パターンを迅速に定量化し、炎症と感染症を区別する上で有望なツールとなる可能性がある。しかし、技術として手術創の感染サーモグラフィ監視を支持する確固たる証拠は存在しない。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
学生のときに、しっかりと覚えた。
炎症の4大兆候とは、以下の4つを指す。
これらは古くから炎症の代表的な兆候として挙げられていて、機能障害(Functio laesa)を加えた5兆候として説明されることもある。
臨床において、熱感はこの中でも特に重要視される兆候ではないだろうか。
触診して、「まだ熱いですね」などの結果をフィードバックする機会は多い。
だが、よく考えたら、このプロセスは非定量的であり、非見える化であった。
今回の抄読したレビュー研究では、熱感を「サーモグラフィーで測る」という革新的な評価方法に関するものだった。
これならば、単なる触診と比較して、定量的にすることもでき、見える化して患者さんと共有することもできる。
このインフォームドコンセントが重要視される時代、記録に残さなければならない時代、デジタル機器が充実している時代にフィットした評価方法であるように感じた。
あとは費用面、労力面など現実性との兼ね合いである。
ここは、徐々に勉強していってみようと思う。
『道具の効果的な使用』、これは近年におけるキーワードのように感じている。
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