Tokyo 2020🇯🇵 Injury & Illness
📖 文献情報 と 抄録和訳
新種目、COVID-19、暑さ:2020年夏季東京オリンピックにおけるスポーツ傷害・疾病について
[背景・目的] 2021 年 7 月 23 日から 8 月 8 日までの東京夏季オリンピック大会期間中に負った傷病の発生率を明らかにすること。
[方法] (1)すべての国内オリンピック委員会(NOC)医療チームからの報告により、(2)東京2020医療スタッフによるポリクリニックおよび医療会場での日々のアスリートの傷害(injury)と疾病(illness)の件数を記録した。
[結果] 206のNOCから合計11 315人のアスリート(女性5423人、48%、男性5892人、52%)が傷病の発生について前向きにフォローアップされた。NOCおよび東京2020の医療スタッフから、17日間の期間中に1035件の傷害と438件の疾病が報告され、これは選手100人あたり9.1件の傷害と3.9件の疾病に相当する。合計すると、9%の選手が少なくとも1つの傷害をし、4%の選手が少なくとも1つの疾病にかかっていた。
■ 外傷の発生率
①ボクシング(27%)
①BMXレース(27%)
③BMXフリースタイル(22%)
④スケートボード(21%)
⑤空手(19%)
⑥ハンドボール(18%)
BMXフリースタイルやスケートボードなどの新種目では高く、ダイビング、ロードバイク、ボート、マラソン、射撃は1〜2%であり最も低いものであった。
■ 疾病の発生率
・調査期間中、COVID-19は18名の選手が罹患し、全罹患者の4%、全選手の0.16%を占めた。
・労作性熱中症は78名の選手が罹患し(全罹患者の18%、全選手の0.7%)、大半(88%)はスポーツの損失を生じなかった。
・種目別では、マラソンとアーティスティックスイミングの発病率が最も高く(ともに8%)、次いでスケートボードと空手(ともに7%)であった。
[結論] 大会期間中、9%の選手が傷害を、4%の選手が疾病を負った。傷害の発生率は過去の大会とほぼ同じであったが、疾病の発生率は低くなっている。これは、COVID-19対策が充実しており、COVID-19をはじめとする呼吸器感染症の感染が効果的に減少したことが大きな要因であると思われる。暑さと湿度は、アスリート、サポートチーム、主催者に困難をもたらしましたが、多くの冷却と水分補給戦略によって、労作による熱中症は軽減された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
この論文の結論は、全Tokyo 2020スタッフに読んでほしい(スタッフとして参加したぼくの友人達にも)。
開催まで、開催中、開催後、なんと困難の多かった大会だろうと思う。
その中で、前回大会と比較しても優れた疾病率を、鋭意努力により成し遂げた。
あなた方は、日本の誇りです。
この結果を見て、「まだまだ傷害率や疾病率が高いし、課題が多い・・・、はぁ。」と感じることもできるだろう、またそう感じる人もいるだろう。
それは、『ネガティブ本能』による強調も加わっているかもしれない。
ネガティブ本能とは、「世界はどんどん悪くなっている」というとんでもない勘違いであると、FACTFULLNESSという本の中で述べられている(📗 >>> amazon.)。
その本の中では、実際に世界が良くなってきていることを示す32分野の発展を例示しながら、過剰なネガティブ本能に警鐘を鳴らしている。
僕たちは赤信号に焦燥感を感じやすく、
青信号に幸福感を感じにくい生き物なのだ。
たがらこそ、その仕組みを知って、意識的に生長や成功に光をあてなければ、ついぞ幸福感は得られないだろう。
今回の論文は、Tokyo 2020の成功した分野に光を当ててくれた。
関連スタッフの皆様、心よりお疲れ様でした。
つぎは、ぼくも「その1人」としてこういう論文を読みたい。
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