難聴者の歩行, バランス
📖 文献情報 と 抄録和訳
加齢性難聴高齢者の歩行とバランス:症例とマッチさせた対照者の横断的研究
[背景・目的] 難聴(hearing loss, HL)は高齢者に多くみられる。加齢に伴う難聴と歩行や平衡感覚との間には関連性があり、高齢者の機能低下や転倒リスクの上昇につながることが示唆されている。研究課題高齢者において、HLは身体能力、歩行変動、姿勢動揺と関連するか、また、めまいが加わるとHLのバランスへの影響が緩和されるか?
[方法] この横断研究では、100名の高齢者(年齢70歳以上、女性60%)を、加齢に伴うHLの有無で2群に分けて検討した。身体機能とバランスは、SPPB(Short Physical Performance Battery)、フォースプラットフォームで測定した姿勢動揺(posturography)、身体装着型センサーで測定した歩行時のバランス(gait variability)で評価した。身体機能と平衡感覚をアウトカムとし、HLを二値被曝(>30dB)として、変数間の関係を調べるために重回帰を用いた。すべての分析において、さらに自己申告によるめまいによって関連性が変化するかどうかを検証した。
[結果] HL、年齢、性別、学歴、糖尿病、心血管疾患を用いた重回帰分析により、SPPBの低下とHLとの間に有意な関連があることが明らかになった。
また、年齢、性別、学歴、糖尿病、心血管疾患を調整した後、重回帰分析を行ったところ、HLは目を開いた状態でも閉じた状態でも固い表面での姿勢動揺の増加と関連することが示された。
また、年齢、性別、学歴、糖尿病、心血管疾患を調整した後、HLと二重課題歩行における全方向の歩行変動増加との間に有意な関連が認められた。
さらに、HLとSPPBとの関連は、めまいのない人に比べ、めまいのある人で有意に強いことがわかった。また、めまいはHLと他のSPPBサブスコアとの関連を変化させたが、姿勢動揺や歩行変動という他のアウトカムについては変化させなかった。
[結論] 本研究において、加齢に伴うHLは、SPPB、姿勢動揺、歩行変動で測定される身体能力の悪化と関連していた。この関係は、転倒や障害のリスクを予防するために、HL患者の身体能力を評価することの重要性を示している。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
以前の文献抄読において、年代別感覚障害者の割合を学んだ。
それによれば、71-79歳で51%、80歳以上で74%とかなりの割合の方が加齢性難聴であった。
そんな加齢性難聴だが、今回の抄読研究の結果、運動パフォーマンスや姿勢動揺、二重課題時の歩幅変動との関連を認めた。
聴覚が低下することは、運動やバランスに大きな影響を及ぼすらしい。
ただ、コミュニケーションの障害になる、という話ではなく、運動と関連するという意味合いにおいて、難聴の有無はしっかりと情報収集しておきたい。
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