見出し画像

臨床予測ルールの外部検証。脊髄損傷者の屋外歩行自立を予測

📖 文献情報 と 抄録和訳

脊髄損傷1年後の屋外歩行予測:レトロスペクティブ、多施設による外部検証研究

📕Draganich, Christina, et al. "Predicting outdoor walking 1 year after spinal cord injury: a retrospective, multisite external validation study." Journal of neurologic physical therapy (2023): 10-1097. https://doi.org/10.1097/NPT.0000000000000428
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

[背景・目的] 脊髄損傷(spinal cord injury, SCI)後の将来の屋外歩行能力を予測することは、地域社会への参加や社会参加と関連するため重要である。脊髄損傷から1年後の屋外歩行能力を予測するための臨床予測ルール(clinical prediction rule, CPR)が導出された。このCPRは有望ではあるが、臨床的価値を確立するために必要な検証は行われていない。本研究の目的は、多施設データセットを用いてCPRを外部的に検証することである。

[方法] 本研究は、12施設から得られた米国SCIモデルシステムのデータをレトロスペクティブに解析したものである。ASIAのL3運動スコア、L5運動スコア、S1感覚スコアを予測変数とした(発症〜31日以内のデータ測定)。

📕前向き研究でこのCPRが開発した研究
Jean, Stephanie, et al. "Early clinical prediction of independent outdoor functional walking capacity in a prospective cohort of traumatic spinal cord injury patients." American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation 100.11 (2021): 1034-1041. >>> doi.

データセットはテストデータとトレーニングデータに分割された。テストデータセットは、予測性能の不偏推定を行うためのホールドアウトデータセットとして使用された。トレーニングデータセットは、"leave-one-site-out "クロスバリデーションの枠組みを通して、最適なCPR閾値を決定するために使用された。主要アウトカムは、SCI後1年の自己報告による屋外歩行能力であった。

[結果] 合計3721人の参加者のデータが含まれた。最適なCPR閾値(CPR≧33閾値)を用いることで、高いクロスバリデーション精度と予測性能で1年後の屋外歩行を予測することができた。

データセット全体では、受信者操作特性曲線下面積は0.900(95%信頼区間:0.890-0.910;P<0.0001)であった。

[結論] 屋外歩行CPRは外的に検証されている。今後の研究では、このCPRを実施するための臨床転帰および費用便益影響分析を行うべきである。今回の結果は、理学療法士がこの3変数CPRを将来の屋外歩行能力の予測に使用できることを支持するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これまで、2つのCPRを文献抄読してきた。

それぞれ、とても有用なCPRである。
だが、とても大きな欠点がある。
それは、『外部検証』されていないことである。

外部検証の必要性に関しては、近年僕が所属する研究グループから出版された論文の序章に詳しい。

✅ 臨床予測ルールにおける外部検証の必要性と現状
・2015年に診断予測研究のガイドラインとして Trans-parent Reporting of a multivariable prediction model for Individual Prognosis or Diagnosis(以下, TRIPOD) statementが作成された(📕Moons, 2023 >>> doi.)。
・そのなかで CPRを臨床で使用するためにはモデルの開発 (内的検証を含む), 外的検証,臨床インパクトの評価の順で進めることが推奨されている。
・外的検証とは,開発に用いられていない別のデータでCPR が役立つか検証することであり, 開発データを取得したセッティングで時期をずらして行う時間的検証や開発データを取得したセッティングとは異なる場所で行う地理的検証などがある。
しかし,既存のCPR のほとんどは開発研究で止まっているのが現状である。

📕宮田. "⼤腿⾻近位部⾻折患者の退院時歩⾏⾃⽴に関する臨床予測モデルの外的検証." 運動器理学療法学 (2023): 202228. >>> doi.

そして実際、同研究グループにおいて行った、大腿骨近位部骨折患者のCPR(CPM)のシステマティックレビューの中で、既存のCPR研究において『外部検証』されているモデルは圧倒的に少なかった。
今回の研究は、脊髄損傷者の歩行自立を予測するCPRの外部検証を行い、このCPRの有用性を補強した。

このCPR自体も大変参考になる。
だが、それ以上に外部検証の方法や示し方を学んだ。
これから開発する予定のCPRは、外的検証、臨床インパクトの評価へと歩みを進めたいと思っている。

⬇︎ 𝕏での投稿✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集